テビケイ(ドルテグラビル)の消化器系副作用は、患者の日常生活に大きな影響を与える可能性があります。海外臨床試験によると、1日1回投与では悪心(吐き気)が8%、下痢が6%の頻度で発現しており、1日2回投与の場合は悪心5%、下痢5%となっています。
参考)https://www.acc.jihs.go.jp/general/note/drug/dtg.html
特に治療開始初期に症状が現れやすく、患者によっては食事摂取困難や体重減少につながることもあります。テビケイは食事に関係なく服用できるため、胃腸症状がある場合は食事と一緒に服用することで症状軽減が期待できます。
上腹部痛や鼓腸などの症状も1~2%未満で報告されており、これらの症状が持続する場合は医療従事者への相談が必要です。また、嘔吐は主要な副作用として頭痛、不眠症、めまいと並んで報告されています。
参考)https://www.rad-ar.or.jp/siori/search/result?n=38914
デシコビ(テノホビルアラフェナミド/エムトリシタビン)配合錠の副作用発現頻度は比較的低く、吐き気と下痢がそれぞれ1%程度です。しかし、ゲンボイヤ配合錠(デシコビの有効成分を含む)の臨床試験では、より高い副作用発現率が報告されています。
参考)https://www.acc.jihs.go.jp/general/note/drug/tafftc.html
治療未経験患者を対象とした試験では42.4%に副作用が認められ、主な症状は悪心10.4%、下痢7.3%、頭痛6.1%でした。一方、治療経験のある患者では22.7%の副作用発現率で、下痢2.6%、悪心2.3%と低めでした。
参考)https://www.g-station-plus.com/ta/hiv/descovy/safety
デシコビ単独投与時の海外臨床試験では、333例中31例(9.3%)に副作用が認められ、悪心と下痢がそれぞれ1.2%で最も多い副作用でした。これらの軽微な消化器症状は、多くの場合治療継続可能な程度です。
テビケイの最も注意すべき重篤な副作用が薬剤性過敏症症候群(Drug Hypersensitivity Syndrome: DHSS)です。この症候群は1%未満の頻度で発現しますが、生命に関わる可能性があるため早期発見と対処が重要です。
参考)https://viivexchange.com/content/dam/cf-viiv/viiv-exchange/jp_JP/our-medicines/documents/Tivicay-guidance-for-patient.pdf
初期症状として発疹と発熱が現れ、その後肝機能障害、リンパ節腫脹、好酸球増多などの全身症状に進展します。患者には皮膚が広い範囲で赤くなる、全身性の発疹、発熱、体のだるさ、リンパ節(首、わきの下、股の付け根など)の腫れなどの症状を説明し、これらの症状が現れた場合は直ちに受診するよう指導する必要があります。
参考)https://jp.gsk.com/media/os1isqpu/tivicay-guide_202308.pdf
薬剤性過敏症症候群は遅発性の反応であり、治療開始から数週間後に発現することが多いため、患者には継続的な自己観察の重要性を説明することが大切です。発疹、発熱、さむけ、ふらつき、汗がたくさん出る、意識がうすれるなどの症状があらわれた場合は、すぐに医療機関に連絡するよう指導します。
参考)https://medpeer.jp/drug/d2379
デシコビに含まれるテノホビルアラフェナミド(TAF)は、従来のテノホビルジソプロキシルフマル酸塩(TDF)と比較して腎毒性が軽減されていますが、依然として腎機能障害のリスクがあります。重大な副作用として腎不全又は重度の腎機能障害(1%未満)が報告されており、定期的な腎機能モニタリングが必要です。
クレアチニンクリアランス30ml/min未満では投与中止が推奨されており、治療中は血液検査・尿検査による継続的な評価が不可欠です。腎機能悪化が認められた場合は、デシコビの服用中止を検討する必要があります。
参考)http://www.med.kagawa-u.ac.jp/~yakuzaib/medical/document/yakuyaku2_hiv.pdf
骨密度低下も重要な副作用の一つです。HIV感染症自体やデシコビを含む抗HIV薬の影響で骨障害が生じる可能性があり、骨密度検査などによる定期的な評価が推奨されます。特に高齢者や骨粗鬆症のリスクファクターを持つ患者では、より注意深い観察が必要です。
テビケイとデシコビを併用する際は、薬物相互作用による副作用の増強に注意が必要です。テビケイはミネラル(マグネシウム、アルミニウム、鉄、カルシウム、亜鉛)を含むサプリメントにより効果が減弱する可能性があるため、同時摂取を避ける必要があります。
デシコビはリトナビルやコビシスタットとの併用により血中濃度が変化し、副作用発現リスクが変動する可能性があります。テビケイもCYP3A4阻害薬との相互作用により血中濃度が上昇し、副作用リスクが高まる可能性があります。
併用時には、個々の薬剤の副作用が重複することで症状が増強される場合があります。特に消化器症状(悪心、下痢、頭痛)は両剤で共通して報告されているため、併用により症状が強く現れる可能性を考慮した患者指導が重要です。
慢性B型肝炎を合併している患者では、デシコビ中止後のB型肝炎悪化に特に注意が必要であり、専門医による慎重な管理が求められます。治療中断時には肝機能の厳重な監視と、必要に応じてB型肝炎治療薬の併用を検討することが重要です。
参考)https://www.tokyorinkai.jp/professionals/pdf/hiv.pdf