タルセバ(エルロチニブ)とサイラムザ(ラムシルマブ)の併用療法は、非小細胞肺がんの治療において重要な選択肢の一つですが、特有の副作用プロファイルを示します。
参考)https://www.tobu.saiseikai.or.jp/docs/pdf/regimen/lungcancer/101.pdf
タルセバによる主要な副作用として、皮膚障害が最も特徴的です。にきび様発疹、皮膚乾燥、爪周囲の炎症などが高頻度で発現し、これらは治療開始後数日から数週間以内に現れることが多いです。
参考)https://www.marianna-u.ac.jp/hospital/data/media/marianna-u_hospital/page/departments/pharmaceutical/a01/b1eb6dc5d13415ae45b1c06ee39a9172.pdf
主な皮膚症状:
消化器症状では下痢が最も頻繁に報告され、排便回数の増加や水様便が見られます。重度の下痢は脱水や電解質異常を引き起こす可能性があるため、適切な水分摂取と症状の監視が必要です。
参考)https://www.chikamori.com/department/asset/316_regimen148.pdf
間質性肺疾患は重大な副作用として位置付けられており、咳、発熱、息切れなどの呼吸器症状の出現時には直ちに医療機関への連絡が必要です。この副作用は生命に関わる可能性があり、早期発見と迅速な対応が求められます。
参考)https://www.cheplapharm.jp/jp-media/user_upload/terceva_handbook_01.pdf
サイラムザの投与において最も注意すべき副作用の一つがインフュージョンリアクション(過敏反応)です。この反応は薬剤投与中または投与開始24時間以内に発現することが多く、特に初回投与時のリスクが高いとされています。
インフュージョンリアクションの症状:
このため、サイラムザの投与は初回60分で行い、副作用が認められなければ2回目以降は30分で点滴することが標準的な投与方法となっています。投与中は患者の状態を密に観察し、異常な症状が現れた場合には直ちに投与を中断し、適切な対症療法を実施する必要があります。
血管外漏出も重要な合併症の一つです。針刺入部の皮膚が赤くなる、腫れる、痛みが生じる、熱感を伴うなどの症状が現れた場合、直ちに医療スタッフへの報告が必要です。
参考)https://www.hokushin-hosp.jp/cms/wp-content/uploads/2021/08/2wRAM%EF%BE%80%EF%BE%99%EF%BD%BE%EF%BE%8A%EF%BE%9E%E8%82%BA%E3%81%8C%E3%82%932021%E5%B9%B47%E6%9C%88%E4%BD%9C%E6%88%90.pdf
前投薬として抗ヒスタミン薬や解熱鎮痛薬の投与を検討することで、インフュージョンリアクションのリスクを軽減できる場合があります。
サイラムザは血管新生を阻害する分子標的薬であるため、血管系の重篤な副作用に特に注意が必要です。動脈血栓塞栓症と静脈血栓塞栓症は生命に関わる重大な副作用として位置付けられています。
血栓症の早期発見ポイント:
出血傾向の増加も重要な副作用です。鼻出血は比較的高頻度(47.9%)で報告されており、消化管出血、血痰などのより重篤な出血も発現する可能性があります。患者には小さな外傷でも出血しやすくなることを説明し、怪我の予防と適切な止血処置の指導が必要です。
参考)https://medical.lilly.com/jp/answers/49152
高血圧は併用療法中に発現しやすい副作用の一つです。もともと降圧薬を服用している患者では特に注意が必要で、自宅での血圧測定を推奨し、定期的なモニタリングを行うことが重要です。
消化管穿孔は稀ですが重篤な副作用であり、これまでに経験したことのないような激しい腹痛が出現した場合には、我慢せず直ちに医療機関へ連絡することを患者に指導する必要があります。
タルセバによる皮膚障害は、EGFR阻害薬特有の副作用として高頻度で発現します。この皮膚症状は治療効果との相関が示唆されており、適切な管理により治療継続を可能にする重要な対策となります。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/7ea2aff5525ea23519ea23e65d2203240cd89807
予防的スキンケアの重要性:
皮膚症状の重症度評価には、専用のチェックシートが開発されており、客観的な評価に基づいた治療方針の決定が可能になっています。軽度の発疹に対しては外用薬での対症療法を行い、重度の場合にはタルセバの休薬や減量を検討します。
爪周囲炎は特に患者のQOLを低下させる副作用の一つです。爪の周辺の過度な圧迫を避け、清潔な状態を保つこと、適切な爪切りの方法を指導することが重要です。症状が進行した場合には、細菌感染の合併も考慮し、適切な抗菌薬の投与を検討する必要があります。
手掌・足底発赤知覚不全症候群(手足症候群)では、手足の過度な摩擦や圧迫を避け、クッション性の高い靴や手袋の使用を推奨します。
埼玉県済生会東部病院のタルセバ+サイラムザ療法パンフレット - 患者向け詳細な副作用説明と対策方法
タルセバとサイラムザの併用療法では、消化器系の副作用が複数の機序により発現します。タルセバによる直接的な消化管への影響と、サイラムザによる全身への作用が相まって症状が現れることがあります。
参考)https://www.hokushin-hosp.jp/cms/wp-content/uploads/2022/08/2wRAM%EF%BE%80%EF%BE%99%EF%BD%BE%EF%BE%8A%EF%BE%9ENSCLC.pdf
消化器症状の特徴:
下痢対策では、1日4回以上の下痢や血便の出現時には直ちに医療機関への連絡が必要です。脱水予防のため十分な水分摂取を指導し、必要に応じて経口補水液の使用も推奨します。重症例では止痢剤の使用や一時的な治療中断も検討されます。
食欲不振や悪心・嘔吐に対しては、においの少ない食事、冷たい食べ物、少量頻回摂取を推奨します。治療時期に合わせた制吐剤の適切な使用により、症状の軽減が期待できます。
口内炎の管理では、口腔内の清潔保持が最も重要です。食後の歯磨きやうがいを励行し、刺激の少ない歯磨き粉やマウスウォッシュの使用を推奨します。重度の口内炎では、栄養摂取に影響を与える可能性があるため、栄養士との連携による栄養指導も重要な支持療法となります。
タルセバは食事の影響を受けるため、食事の1時間以上前または食後2時間以降の服用が推奨されています。これにより薬物動態の変動を最小限に抑え、治療効果の安定化を図ることができます。
また、タルセバ治療中の喫煙は薬効を減弱させるため、禁煙指導も重要な管理項目の一つです。
日本イーライリリー サイラムザの主な有害事象データ - 臨床試験における詳細な副作用発現率