ソルアセトF輸液の添付文書には、明確な副作用として「大量・急速投与による障害」が記載されています。具体的には以下の3つの副作用が「頻度不明」として挙げられています。
これらの副作用は、本剤の使用成績調査等による副作用発現頻度が明確になる調査が実施されていないため、文献等を参考にした情報として記載されています。
重要な点として、これらの副作用は観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うことが明記されています。
添付文書には、以下の患者群に対して慎重投与が必要と記載されています。
慎重投与対象患者
投与方法と制限
通常、成人1回500mL〜1000mLを点滴静注し、投与速度は1時間当たり10mL/kg体重以下とすることが定められています。この投与速度制限は、副作用の発現を防ぐために極めて重要です。
高齢者への配慮
一般に高齢者では生理機能が低下しているため、投与速度をより緩徐にし、減量するなどの注意が必要です。
ソルアセトF輸液は酢酸リンゲル液として、以下の特徴的な組成を持ちます。
電解質組成(500mL中)
副作用発現の機序
酢酸は肝臓で代謝後に緩衝液として作用しますが、大量投与時には以下の機序で副作用が発現します。
🔬 脳浮腫の発現機序: 急速な血液希釈により血漿浸透圧が低下し、脳血管関門を通じて脳組織内に水分が移行することで発症します。
🫁 肺水腫の発現機序: 循環血液量の急激な増加により左心房圧が上昇し、肺毛細血管から肺胞内への水分漏出が生じます。
🩸 配合変化の注意: カルシウムを含有するため、クエン酸加血液と混合すると凝血を起こすおそれがあり、リン酸イオン及び炭酸イオンと沈殿を生じる可能性があります。
副作用の早期発見と適切な対応のために、以下のモニタリングが不可欠です。
必須モニタリング項目
緊急時対応プロトコル
脳浮腫が疑われる場合は直ちに投与を中止し、利尿剤投与や高浸透圧薬(マンニトール等)の使用を検討します。肺水腫の場合は酸素投与、利尿剤投与、必要に応じて人工呼吸管理を行います。
臨床現場での実践例
がん化学療法の際の水分補給として使用される場合、シスプラチンなどの腎毒性薬剤との併用時には特に慎重な管理が必要です。2時間かけて500mLを投与し、尿量確保を目的として使用されることが多いですが、腎機能障害の予防効果と副作用リスクのバランスを常に考慮する必要があります。
医療従事者として把握すべき副作用報告体制と責務について説明します。
副作用報告の重要性
ソルアセトF輸液は使用成績調査等の副作用発現頻度が明確となる調査を実施していないため、実臨床での副作用情報収集が極めて重要です。医療従事者は以下の責務を負います。
報告対象となる副作用
報告先と方法
📞 製造販売元: テルモ株式会社コールセンター(0120-12-8195)
🏥 PMDA: 医薬品医療機器総合機構への副作用報告システム
📊 院内: 医薬品安全管理責任者への報告と安全性検討委員会での検討
文書化と記録保持
副作用発現時には以下の情報を詳細に記録する必要があります。
医薬品の安全性向上には、医療現場からの正確で迅速な情報提供が不可欠であり、医療従事者一人ひとりの意識と行動が患者安全につながります。