食道狭窄原因と症状診断治療法解説

食道狭窄の原因について詳しく解説します。先天性から後天性、神経性まで様々な原因を分類し、症状や診断方法、治療法も含めて医療従事者向けに詳細にまとめました。どのような要因が食道の狭窄を引き起こすのでしょうか?

食道狭窄原因

食道狭窄の主要原因分類
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先天性食道狭窄

胎児期の発育過程で食道形成に異常が生じる疾患

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後天性食道狭窄

炎症、腫瘍、外傷などにより発症する最も頻度の高い病態

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神経性食道狭窄

心理的ストレスが原因で起こる機能的な狭窄症状

食道狭窄先天性原因の詳細

先天性食道狭窄症は2万5千人から5万人に1人程度の割合で発症する非常に稀な疾患です。胎児の発育過程で食道の形成に異常が生じることで発症し、主に3つのタイプに分類されます。
気管原基迷入型が最も多く、全体の約50%を占めています。胎児の分化段階で食道内に気管の軟骨が入り込んでしまうことが原因で、食道壁に気管の軟骨が入り込み内腔の狭窄を引き起こします。
筋線維性狭窄は食道を形成する筋肉の一部が必要以上に厚くなってしまうタイプです。正常な食道の筋層とは異なる構造を持つため、食物の通過が困難になります。
膜様狭窄は3つの中では最も発症数が少ないタイプで、食道内に余分な粘膜の膜ができてしまう状態です。薄い膜状の構造物が食道内腔を部分的に閉塞することで症状を引き起こします。
これらの先天性狭窄は生後早期から嚥下困難や哺乳不良などの症状を呈することが多く、早期診断と適切な治療が重要となります。

 

食道狭窄後天性炎症原因の機序

後天性食道狭窄の中で最も頻度が高いのは炎症性の原因によるものです。特に逆流性食道炎による狭窄は臨床的に非常に重要な病態です。
逆流性食道炎による狭窄機序では、胃酸が食道に逆流することで食道の粘膜に炎症や傷が生じます。慢性的な胃酸の逆流により食道の内側の組織に継続的な損傷が加わると、その治癒過程で瘢痕組織が形成されます。この瘢痕組織の収縮により食道内腔が狭窄を呈するようになります。
食道炎の種類と狭窄リスクとして、逆流性食道炎以外にも様々な原因による食道炎が狭窄の原因となります。薬剤性食道炎では、鎮痛薬などが食道内に長時間残存することで局所的な炎症を引き起こし、重症例では瘢痕による狭窄を生じることがあります。
感染性食道炎では、カビやウイルス感染により食道粘膜に深い潰瘍が形成され、その治癒過程で瘢痕性狭窄を来すことがあります。免疫力が低下した患者では特に重症化しやすく、狭窄のリスクも高くなります。

 

好酸球性食道炎は近年注目されている疾患で、慢性的な食道の炎症を引き起こし、食道の狭窄や閉塞を生じることが報告されています。アレルギー性の機序により食道壁の肥厚や線維化が進行し、結果として狭窄を呈します。

食道狭窄悪性腫瘍原因の特徴

悪性腫瘍による食道狭窄は頻度の高い原因の一つで、特に進行癌において顕著な症状を呈します。食道がんは食道粘膜にがんの塊ができることで食道の内腔が狭くなり、食道狭窄を引き起こします。
食道癌による狭窄の画像所見では、造影検査で全周もしくは一部が境界明瞭な狭窄として描出されます。不整な潰瘍や狭窄部の辺縁不整を認め、狭窄の両端には周堤を伴うこともあります。これらは潰瘍限局型(2型)や潰瘍浸潤型(3型)の進行癌の特徴的な所見です。
腫瘍の進行と狭窄の関係において、早期癌では狭窄症状は稀ですが、進行癌では腫瘍の増大に伴い食道内腔の狭小化が進行します。中部食道に発生した癌では特に狭窄症状が出現しやすいとされています。
治療後の狭窄も重要な問題で、内視鏡治療や放射線治療後に粘膜に瘢痕が残ったり、外科手術後に食道をつなぎ合わせた吻合部に狭窄が生じることがあります。これらの治療後狭窄は良性であることが多いですが、再発リスクも考慮した長期的な管理が必要となります。
他臓器からの圧排による狭窄では、甲状腺病変やリンパ節腫大によって食道が外側から圧迫される状態です。原発性の食道疾患ではないため、原因となる疾患の治療により狭窄の改善が期待できます。

食道狭窄機能性原因の病態

機能性の食道狭窄として最も重要なのは食道アカラシアです。この疾患では食道平滑筋と下部食道括約筋(LES)の運動を支配する迷走神経に異常が生じ、食道の蠕動運動とLESの弛緩不全が引き起こされます。
食道アカラシアの病態生理では、下部食道括約筋の弛緩不全により食物の胃内への通過が阻害され、食道下部の機能的狭窄を呈します。神経節細胞の変性や炎症により正常な蠕動運動が失われ、食道内圧の上昇と拡張を来します。
食道裂孔ヘルニアと狭窄では、横隔膜の食道裂孔に胃の一部が入り込むことでLESの機能異常が生じやすくなります。これにより逆流性食道炎となって食道狭窄を引き起こすことがあります。重度の症例では食道裂孔部に胃がすっぽりと入り込み、それ自体が通過障害の原因となることもあります。
神経変性疾患との関連では、迷走神経の機能異常により食道の運動機能が障害される疾患群があります。パーキンソン病や多系統萎縮症などの神経変性疾患では、食道の蠕動運動異常により機能的な狭窄症状を呈することがあります。

食道狭窄外因性特殊原因の病態

外因性の食道狭窄原因には、腐食性物質による化学的損傷や医原性の要因があります。これらは比較的稀な原因ですが、重篤な狭窄を来すことが多く、医療従事者として認識しておくべき重要な病態です。

 

腐食性食道炎による狭窄では、酸・アルカリなどの腐食性物質を誤飲または自殺企図により摂取した場合に生じます。強酸や強アルカリは食道粘膜に深達性の化学熱傷を引き起こし、急性期を過ぎると広範囲な瘢痕形成により高度な狭窄を来します。
アルカリ性物質による損傷は酸性物質よりも深達性が強く、より重篤な狭窄を引き起こす傾向があります。受傷後数週間から数ヶ月で瘢痕性狭窄が進行するため、早期からの適切な管理が重要です。

 

医原性狭窄では、内視鏡検査や治療に伴う食道損傷が原因となることがあります。内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)後の狭窄は、切除範囲が広範囲に及んだ場合に高率に発生します。また、放射線治療後の組織の線維化により遅発性の狭窄を来すこともあります。
薬剤性食道狭窄の代表例として、アレンドロン酸ナトリウムなどのビスホスホネート系薬剤による良性食道狭窄が報告されています。これらの薬剤が食道内に停滞することで局所的な炎症を引き起こし、その後の治癒過程で狭窄を来すことがあります。
異物による狭窄では、魚骨や義歯などの異物が食道に嵌頓し、摘出時の損傷や長期間の圧迫により狭窄を来すことがあります。特に既存の食道狭窄がある患者では、異物嵌頓のリスクが高く、さらなる狭窄の増悪要因となることもあります。
外部からの圧迫による狭窄として、縦隔腫瘍、大動脈瘤、左房拡大などにより食道が外側から圧迫されることがあります。これらは器質的な食道病変ではないため、原因疾患の治療により症状の改善が期待できますが、診断には詳細な画像検査が必要です。