シェーグレン症候群における環状紅斑(再発性遠心性環状紅斑)は、この疾患に特異性の高い皮疹として重要な診断の手がかりとなります 。環状紅斑は顔面、上肢、背部に好発し、約9-20%の患者に出現するとされています 。写真診断においては、紅斑が中央が抜けた輪の形をなすという特徴的な外観が重要な診断根拠となります 。
参考)https://www.ryumachi-jp.com/medical-staff/disease_drug/jakunenseisjogren/
🔍 臨床的特徴
環状紅斑の写真診断では、境界のはっきりした円形や楕円形の紅斑で、辺縁に向かって赤みが強くなり、中心部は退色している特徴が観察されます 。一般的な環状紅斑は1日あたり2-3mmの速度でゆっくりと成長し、直径10cm以上に達することもあります 。
参考)紅斑症
シェーグレン症候群の環状紅斑は、抗SS-A抗体および抗SS-B抗体との密接な関連性を有していることが特徴的です 。これらの自己抗体は環状紅斑の発症機序に重要な役割を果たしており、診断における重要なバイオマーカーとなります。
参考)抗SS-A抗体・抗SS-B抗体陽性環状紅斑—臨床的・組織学的…
抗SS-A/抗SS-B抗体陽性の環状紅斑症例では、全例で抗SS-A抗体陽性、約半数で抗SS-B抗体陽性を示すことが報告されています 。皮疹部位は四肢および背部を中心に認められ、鱗屑を伴わない軽度浸潤を有する環状紅斑の形態を呈します。
💡 抗体との関連性
興味深いことに、環状紅斑の消褪前後で抗SS-A/Ro抗体および抗SS-B/La抗体の抗体価の低下が認められることが報告されており、皮疹の活動性と自己抗体レベルの相関が示唆されています 。この現象は、環状紅斑の病態機序における自己免疫反応の重要性を裏付ける重要な所見です。
参考)Sjögren症候群に伴う環状紅斑と抗SS-A/Ro及び抗S…
シェーグレン症候群に伴う環状紅斑の病理組織学的検査は、正確な診断のために不可欠な検査方法です 。皮膚生検により得られる組織の顕微鏡的観察で、特徴的な所見が確認できます 。
参考)患者向け説明資料
病理組織学的所見。
環状紅斑の診断には、麻酔下で赤色部分の皮膚を5-8mm程度採取する皮膚生検が実施されます 。この組織検査により、他の環状を呈する皮疹との鑑別が可能となり、シェーグレン症候群の確定診断に寄与します。
🔬 診断プロセス
皮膚生検に加えて、血液検査による自己抗体(抗SS-A抗体、抗SS-B抗体など)の検出や、症状と検査結果によっては超音波検査やCT検査などの追加検査が実施されることがあります 。これらの総合的な検査結果により、シェーグレン症候群に伴う環状紅斑の診断が確定されます。
参考)https://medicalnote.jp/diseases/%E7%92%B0%E7%8A%B6%E7%B4%85%E6%96%91
シェーグレン症候群の環状紅斑は、他の膠原病や皮膚疾患との鑑別診断が重要となります 。特に亜急性皮膚エリテマトーデス(SCLE)との鑑別は臨床的に困難を要することが多く、抗SS-A抗体単独陽性または抗SS-A/抗SS-B抗体陽性を示す症例で問題となります。
参考)紅斑
主要な鑑別疾患。
新生児エリテマトーデスは、シェーグレン症候群や全身性エリテマトーデスの母親から経胎盤的に移行した母親由来の自己抗体により生じ、顔面や体幹に環状紅斑が出現し、生後6か月程度で自然消失します 。
⚕️ 鑑別のポイント
シェーグレン症候群の環状紅斑は、50歳代の女性に好発し、顔面を中心に出現することが多いという疫学的特徴があります 。また、乾燥症状(ドライアイ、ドライマウス)の併存や唾液腺・涙腺の機能低下所見が診断の重要な手がかりとなります。
シェーグレン症候群に伴う環状紅斑の治療は、基礎疾患であるシェーグレン症候群の治療と皮疹に対する対症療法を組み合わせて行われます 。環状紅斑に対しては、主にステロイドの外用療法が第一選択となり、症状に応じて全身療法が検討されます。
参考)環状紅斑を主訴としたシェーグレン症候群の1例 (臨床皮膚科 …
治療選択肢。
抗核抗体(抗SS-B抗体)陽性例では、少量のステロイド内服が有効であることが報告されており、皮疹の改善とともに抗体価の低下も期待できます 。
🏥 通院管理
治療開始後の通院は、最初の1か月間は1-2週間に1回、その後は検査結果と症状により1か月に1回程度の経過観察が一般的です 。治療しても症状を繰り返す場合は、しばらく定期的な経過観察が必要となり、長期的な管理が重要となります。環状紅斑の多くは数週間から数か月で自然に消失しますが、基礎疾患の適切な管理により再発予防が可能です。