ポララミン(d-クロルフェニラミンマレイン酸塩)は、第一世代抗ヒスタミン薬として広く使用されていますが、緑内障患者には重要な禁忌事項があります。
特に注意が必要なのは閉塞隅角緑内障の患者です。ポララミンの抗コリン作用により、以下のメカニズムで症状が悪化します。
2019年の厚生労働省による添付文書改訂では、従来の「緑内障」から「閉塞隅角緑内障」に限定され、開放隅角緑内障は慎重投与に変更されました。これは緑内障のタイプによってリスクが異なることが明確化されたためです。
開放隅角緑内障の患者では、抗コリン作用による眼圧上昇のリスクはあるものの、適切な管理下であれば使用可能な場合があります。しかし、眼科医との連携が不可欠です。
前立腺肥大症は、ポララミンの重要な禁忌疾患の一つです。この禁忌の理由は、ポララミンの抗コリン作用が膀胱機能に与える影響にあります。
抗コリン作用による膀胱への影響:
前立腺肥大症患者では、既に尿道が狭窄している状態にあります。そこにポララミンの抗コリン作用が加わることで、以下のような重篤な症状が発現する可能性があります。
薬局でのヒヤリ・ハット事例では、PL配合顆粒(プロメタジンメチレンジサリチル酸塩含有)を前立腺肥大症患者に処方した事例が報告されており、同様の抗コリン作用を持つポララミンでも十分な注意が必要です。
患者からの聞き取りや薬歴確認により、前立腺肥大症の既往を把握することが重要です。特に高齢男性では、症状があっても診断を受けていない潜在的な前立腺肥大症患者も存在するため、排尿状況の確認が推奨されます。
ポララミンの成分であるd-クロルフェニラミンマレイン酸塩や類似化合物に対する過敏症の既往歴がある患者は、絶対禁忌です。
重篤な副作用として報告されているもの:
第一世代抗ヒスタミン薬の特徴として、血液脳関門を通過しやすいため、中枢神経系への影響が強く現れます。これにより以下の副作用が高頻度で発現します。
抗コリン作用による副作用も特徴的です。
これらの副作用は、特に高齢者で顕著に現れる傾向があります。高齢者では生理機能の低下により、薬物の代謝・排泄が遅延し、副作用が遷延化しやすいためです。
妊娠・授乳期におけるポララミンの使用は、特別な配慮が必要な領域です。低出生体重児・新生児には禁忌とされていますが、妊娠中の使用については複雑な判断が求められます。
妊娠中の使用に関する考慮点:
妊娠中のアレルギー疾患治療において、ポララミンは選択肢の一つとして考慮されることがあります。これは、新しい薬剤よりも長期間の使用実績があり、催奇形性に関するデータが蓄積されているためです。
授乳期における注意点:
授乳中の女性では、クロルフェニラミンが母乳中に移行しやすく、乳児に眠気などの副作用を引き起こす可能性があります。そのため、授乳期間中は他の選択肢を優先することが一般的です。
ポララミンは多くの薬剤との相互作用が報告されており、併用時には十分な注意が必要です。
主要な併用注意薬剤:
中枢神経抑制剤との併用:
MAO阻害剤との併用:
抗コリン作用を有する薬剤:
特に注意が必要なのは、複数の抗コリン作用を持つ薬剤の併用です。高齢者では、抗コリン負荷(Anticholinergic Burden)の概念が重要視されており、複数の抗コリン薬の併用により認知機能低下や転倒リスクが増加することが知られています。
**アルコールとの併用は絶対禁止**です。アルコールとポララミンの併用により、以下のような危険な症状が現れる可能性があります。
薬剤師による服薬指導では、これらの相互作用について患者に十分説明し、併用薬の確認を徹底することが重要です。特に、市販薬や健康食品との併用についても注意深く確認する必要があります。
医療従事者向けの抗コリン作用を有する薬剤の禁忌に関する詳細情報
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000519058.pdf
前立腺肥大症患者における禁忌薬の包括的リスト
https://asayaku.or.jp/apa/work/data/pb_1508-1509_3.pdf