1ヶ月以上続く喉の痛みの慢性化には複数のメカニズムが関与します。急性上咽頭炎から慢性上咽頭炎への移行過程では、ウイルス感染後の免疫機能異常により上咽頭に持続的な炎症とうっ血が残存します。
慢性炎症の主な原因。
特に注目すべきは、新型コロナウイルス後遺症としての慢性上咽頭炎です。ウイルス感染後の免疫異常により、長期間にわたって上咽頭の炎症が持続することが報告されています。
慢性扁桃炎は急性扁桃炎を反復することで発症し、1年に複数回の急性増悪を繰り返すのが特徴です。慢性扁桃炎では扁桃陰窩に細菌の定着が起こり、免疫機能の低下時に急性症状を呈します。
診断における重要なポイント。
慢性扁桃炎における細菌の病原性は複雑で、溶血性連鎖球菌以外にも嫌気性菌やグラム陰性菌が関与することが多く、培養検査だけでは原因菌の特定が困難な場合があります。
治療選択では保存的治療の限界を見極め、手術適応を適切に判断することが重要です。扁桃摘出術の適応基準として、年間7回以上の急性扁桃炎、連続3年間で年5回以上、連続2年間で年3回以上の発症が挙げられます。
逆流性食道炎による喉の症状は咽喉頭逆流症(LPR:Laryngopharyngeal Reflux)として知られ、胃酸が食道を逆流して咽喉頭に達することで炎症を引き起こします。
LPRの特徴的症状。
診断には24時間pHモニタリングが有用ですが、臨床的にはプロトンポンプ阻害薬(PPI)の治療的試験投与による症状改善を確認する方法が実用的です。
治療における注意点として、LPRはGERD(胃食道逆流症)と比較して治療抵抗性が高く、より長期間の酸分泌抑制療法が必要となります。また、生活習慣の改善(就寝前3時間の食事制限、頭部挙上での睡眠など)が薬物療法と同様に重要です。
1ヶ月以上続く喉の痛みにおいて、悪性腫瘍の除外は最も重要な診断プロセスです。喉頭癌、下咽頭癌、中咽頭癌の初期症状として、持続的な喉の痛みが唯一の症状として現れることがあります。
悪性腫瘍を示唆する危険信号(Red flags)。
診断には喉頭内視鏡検査が必須で、疑わしい病変に対しては組織生検を躊躇なく実施する必要があります。特に50歳以上の男性で喫煙歴がある場合、悪性疾患のリスクは著明に上昇します。
早期発見のための検査手順。
1ヶ月以上続く喉の痛みに対する治療アプローチは、原因疾患の正確な診断に基づいた個別化医療が基本となります。医療従事者は段階的診断アルゴリズムを用いて効率的な診療を行う必要があります。
初期対応における重要事項。
慢性上咽頭炎に対する治療では、上咽頭擦過療法(EAT:Epipharyngeal Abrasive Therapy)が特異的治療として注目されています。塩化亜鉛溶液を用いた上咽頭の直接的な消炎処置により、症状の改善が期待できます。
薬物療法の選択基準。
ネブライザー治療は患部への直接的薬剤投与が可能で、経口薬との併用により治療効果の向上が期待できます。使用薬剤として、ベタメタゾン、リン酸クロルフェニラミン、塩化リゾチームの組み合わせが一般的です。
慢性咽頭炎・喉頭炎の長期管理では、症状の軽快・増悪を繰り返す特徴を患者に説明し、生活習慣の改善指導を継続的に行うことが重要です。禁煙・禁酒の徹底、適切な室内湿度の維持(50-60%)、マスク着用による粉塵対策などが基本的な予防策となります。
医療従事者向けの診療ガイドラインでは、1ヶ月以上続く喉の症状に対して悪性疾患の除外を最優先とし、良性疾患と診断された場合でも定期的な経過観察を継続することが推奨されています。
慢性上咽頭炎に対する詳細な診断基準と治療法について
https://nagatomo-ent.jp/epipharyngitis
慢性咽頭炎・喉頭炎の病態と治療選択について
https://www.kusano-jibika.com/illness/80
喉の痛みに対する鑑別診断と治療アルゴリズム
https://www.kawamura-jibika.com/throat-hurts/