高校生のニキビが治らない最大の要因は、思春期特有の皮脂分泌異常にあります。この時期の皮脂腺は成長ホルモンや男性ホルモン(アンドロゲン)の影響により、通常の2-3倍の皮脂を分泌します。
皮脂分泌異常の4つのパターン。
特に注目すべきは、皮脂に含まれるスクアレンという成分が酸化することで、過酸化脂質となり炎症を悪化させる点です。この酸化プロセスは紫外線やストレスにより加速されるため、単純な皮脂除去だけでは根本的な解決になりません。
毛穴の角化異常(ハイパーケラトーシス)は、ニキビが治らない重要な病理学的要因です。正常な皮膚では古い角質が自然に剥がれ落ちますが、思春期には角質の生成と脱落のバランスが崩れます。
毛穴角化異常の特徴。
さらに、毛穴内でのCutibacterium acnes(旧名:Propionibacterium acnes)の異常増殖が炎症を慢性化させます。この細菌は嫌気性環境を好むため、角栓で閉塞した毛穴内で急激に増殖し、炎症性サイトカインを放出します。
最新研究では、アクネ菌がバイオフィルムを形成することが判明しており、これが治療抵抗性の一因となっています。バイオフィルム内の細菌は抗菌薬に対する耐性が1000倍以上高くなることが知られています。
多くの高校生が実践している「一日に何度も洗顔する」「強くゴシゴシ洗う」という方法は、実際にはニキビを悪化させる危険な習慣です。
間違った洗顔習慣の問題点。
正しい洗顔法の科学的根拠。
特に重要なのは、洗顔後の保湿です。高校生の多くは「オイリー肌だから保湿は不要」と誤解していますが、実際には適切な保湿により皮脂分泌が正常化されます。セラミドやヒアルロン酸を含む保湿剤の使用が推奨されます。
近年の研究で、ストレスとニキビの関係が科学的に証明されています。ストレスホルモンであるアドレナリンとノルアドレナリンの代謝産物が、すべてのニキビ患者の病巣部で検出されることが判明しました。
ストレスがニキビに与える影響。
睡眠不足も重要な悪化要因です。成長ホルモンは主に深い睡眠中(徐波睡眠)に分泌されるため、睡眠不足により分泌パターンが乱れ、皮脂腺への影響が持続します。理想的な睡眠時間は7-8時間です。
食事については、高GI食品(白米、パン、お菓子)の摂取がインスリン様成長因子-1(IGF-1)を増加させ、皮脂分泌を促進することが知られています。また、乳製品に含まれるホルモン様物質もニキビを悪化させる可能性があります。
皮膚科での専門治療は、市販薬では得られない根本的な改善をもたらします。日本皮膚科学会のニキビ治療ガイドラインに基づく標準治療を理解することが重要です。
外用治療の第一選択。
重度の場合の全身療法。
意外な治療選択肢として、低用量抗生物質の長期投与があります。これは抗菌作用ではなく、抗炎症作用を目的とした治療法で、従来の短期集中治療とは異なるアプローチです。
治療開始時期の重要性も近年注目されています。ニキビ跡が残らない患者は平均16歳で受診を開始しているのに対し、跡が残った患者は20歳頃の受診開始というデータがあります。早期治療開始が長期的な美容面での予後を大きく左右します。
皮膚科治療を受ける際の注意点として、治療開始から改善まで通常6-8週間を要することを理解しておく必要があります。また、一時的な悪化(レチノイド皮膚炎など)が起こる場合もありますが、これは正常な治療反応である場合が多いです。
定期的なフォローアップにより治療効果の評価と副作用のモニタリングを行い、個々の患者に最適化された治療計画を立てることが、治らないニキビの根本的解決につながります。
虎の門病院皮膚科でのニキビ治療に関する専門情報
https://shingakunet.com/journal/trend/20200117000015/