アシクロビルの投与において最も重要なのが禁忌事項の確認です。本剤の成分あるいはバラシクロビル塩酸塩に対して過敏症の既往歴がある患者には絶対に投与してはいけません。
特に注意が必要な患者群として以下が挙げられます。
投与前には必ず患者の既往歴、現在の腎機能、併用薬剤を詳細に確認し、リスク評価を行うことが重要です。
アシクロビルは単純ヘルペスウイルス(HSV-1、HSV-2)および水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)に対して高い選択性を持つ抗ウイルス薬です。
作用機序の詳細。
アシクロビルがウイルス感染細胞内に入ると、ウイルス性チミジンキナーゼによって一リン酸化され、さらに細胞性キナーゼによってアシクロビル三リン酸(ACV-TP)に変換されます。ACV-TPは正常基質であるdGTPと競合してウイルスDNAポリメラーゼによりウイルスDNAの3'末端に取り込まれ、DNA鎖の伸長を停止させてウイルス複製を阻害します。
主な適応症。
性器ヘルペスの再発抑制では、セックスパートナーへの感染抑制効果も認められており、患者のQOL向上だけでなく感染拡大防止にも貢献します。
アシクロビルの副作用は多岐にわたり、投与量や患者の状態によって発現頻度が変わります。
主要な副作用。
特に重篤な副作用として、意識障害、見当識障害、幻覚、興奮などの精神神経症状があり、これらは特に高齢者や腎機能低下患者で発現しやすいため注意が必要です。
重要な相互作用。
これらの薬剤との併用時は、特に腎機能低下の可能性がある患者では慎重な投与が求められます。
アシクロビルの過量投与は重篤な合併症を引き起こす可能性があり、迅速で適切な対応が求められます。
過量投与時の症状。
対処法。
過量投与が疑われる場合は、症状の有無に関わらず早期に血液透析を検討することが重要です。特に腎機能低下患者では、通常量でも過量投与状態になりやすいため、定期的な血中濃度測定も考慮すべきです。
アシクロビル治療において見落とされがちですが、腎機能の継続的なモニタリングは治療成功と患者安全の鍵となります。
腎機能モニタリングの重要性。
アシクロビルの活性代謝物は主に腎臓のOAT1、MATE1、MATE2-Kを介して排泄されます。腎機能が低下すると薬物の蓄積が起こり、治療域を超えた血中濃度により副作用リスクが高まります。
モニタリング頻度の目安。
用量調整の実践的アプローチ。
クレアチニンクリアランス値に基づいた用量調整を行い、30mL/min以下では投与間隔の延長または用量減量を検討します。また、血液透析患者では透析日の透析後投与が基本となります。
腎機能の変化を早期に察知し、適切な用量調整を行うことで、アシクロビルの治療効果を最大限に引き出しながら副作用を最小限に抑えることが可能となります。
参考:日本医薬品医療機器総合機構(PMDA)による医薬品添付文書情報
https://www.pmda.go.jp/