腓骨神経麻痺における最も特徴的な症状は、足首と足指を上に反らせる背屈運動ができなくなることです。この運動障害により、足首が下がったままになる下垂足(drop foot)が出現します。下垂足は重力に逆らえず足首から下が垂れ下がった状態となり、歩行時に足を引きずるような姿勢を強いられます。
参考)href="https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/peroneal_nerve_palsy.html" target="_blank">https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/peroneal_nerve_palsy.htmlamp;#x300C;href="https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/peroneal_nerve_palsy.html" target="_blank">https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/peroneal_nerve_palsy.htmlamp;#x8153;href="https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/peroneal_nerve_palsy.html" target="_blank">https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/peroneal_nerve_palsy.htmlamp;#x9AA8;href="https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/peroneal_nerve_palsy.html" target="_blank">https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/peroneal_nerve_palsy.htmlamp;#x795…
総腓骨神経は膝関節の後方で坐骨神経から分岐し、腓骨頭の後ろを巻きつくように走行するため、この部位での神経の移動性が乏しく、外部からの圧迫により容易に麻痺が生じる解剖学的特徴があります。麻痺が生じると前脛骨筋や長趾伸筋など腓骨神経が支配する筋肉群の機能が障害され、つま先を上げる動作が困難になります。
参考)腓骨神経麻痺
歩行時には足が地面に引っかかりやすくなり、つまずきや転倒のリスクが著しく増加します。また、足をパタパタと着地させるような特徴的な歩き方(鶏歩)を呈することもあり、これは足首の制御が失われた結果、足全体を持ち上げて歩かざるを得ないためです。
参考)腓骨神経麻痺(腓骨神経の圧迫・損傷による足の障害)について-…
腓骨神経麻痺では運動障害だけでなく、下腿の外側から足背、さらに第5趾を除いた足趾背側にかけて感覚が障害されます。この感覚障害の特徴として、しびれ感や触った感じが鈍くなる感覚鈍麻が認められます。
参考)腓骨神経麻痺 - イノルト整形外科
特に足の甲から親指・第2趾にかけての領域で顕著な感覚異常が現れ、ピリピリとした異常感覚を訴える患者も少なくありません。この感覚障害は足の甲から始まり、徐々に強くなる傾向があります。第5趾が除外されるのは、この部分が腓腹神経という別の末梢神経によって支配されているためです。
参考)https://midori-hp.or.jp/rehabilitation-blog/web20230322
感覚検査では筆などを使用して腓骨神経支配領域の感覚やしびれの有無を確認し、触覚や痛覚がどの程度保たれているかを評価します。腓骨頭部を叩いた際に腓骨神経の支配領域にしびれや痛みが誘発されるティネルサイン陽性も、診断上重要な所見となります。
参考)腓骨神経麻痺とは|原因や症状・治し方・予防法について解説│看…
腓骨神経麻痺の原因で最も多いのは、腓骨頭部(膝外側)への外部からの圧迫です。下肢の牽引などで仰向けに寝た姿勢が長時間続いたり、ギプス固定をしている際に腓骨頭部が後方から圧迫されると麻痺が発生します。
参考)腓骨神経麻痺の理解と対策:原因、症状、治療法まで詳しく 腓骨…
長時間の座位や不適切な姿勢による神経の圧迫も原因となり、特に足を組んだ状態を長時間維持することで神経が圧迫され、神経障害性の麻痺(neurapraxia)を引き起こすことが報告されています。その他の原因として、ガングリオンなどの腫瘤、腫瘍、開放創や挫傷、腓骨頭骨折やその他の膝の外傷も挙げられます。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11883195/
稀な症例としては、膝窩部に形成されたガングリオン嚢胞による総腓骨神経と脛骨神経の両方の麻痺や、fabella(種子骨の一種)による圧迫性神経障害も報告されています。fabellaは一般人口の最大30%に認められる正常な解剖学的変異ですが、これが総腓骨神経を圧迫することで麻痺を引き起こす可能性があります。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10600867/
腓骨神経麻痺の診断では、まず問診・視診を行い、下垂足の有無を目視で確認します。問診では症状の発症時期と経過、具体的な症状内容、日常生活への影響、既往歴や生活習慣について聴取します。視診では歩行の様子、足首の動き、歩行パターン、足の変形や腫れの有無、皮膚の色や状態を観察します。
参考)総腓骨神経麻痺
筋力検査では前脛骨筋や足趾伸筋の筋力を徒手で測定し、足首の背屈力や足の外転力を0から5までの6段階で評価します。感覚検査では筆などを使用して下腿外側から第5趾を除く足趾の感覚の有無やしびれを確認します。
確定診断には神経伝導速度検査が重要で、膝の外側で神経の電気が流れるスピードが遅くなっていることを確認します。筋電図検査では総腓骨神経が支配している筋肉にしっかり電気刺激が伝わっているかを調べ、他の疾患が隠れていないかを確認します。
参考)腓骨神経麻痺の病態と治療についての解説 - 大阪京橋駅すぐ大…
超音波検査やMRI検査では圧迫の原因となる皮下腫瘍やガングリオンの有無を認めることができ、腰部椎間板ヘルニアや坐骨神経障害との鑑別診断にも有用です。X線検査は骨折などの骨性病変の除外に用いられます。
腓骨神経麻痺は下垂足を呈する代表的疾患ですが、L5神経根症との鑑別が臨床上重要です。両者は支配する筋肉や感覚障害の範囲にかなりのオーバーラップがあり、鑑別が困難なケースも存在します。
参考)コラム
鑑別のポイントとして、腰椎変性疾患では腰下肢痛の合併が多いのに対し、腓骨神経障害では認めないこと、腓骨神経障害では腓骨神経支配筋以外の麻痺を認めないことが挙げられます。また、腓骨神経麻痺ではティネルサイン(神経傷害部を叩くとその支配領域に疼痛が放散する)が陽性となることが診断の助けになります。
下肢の末梢神経絞扼性障害は誤診されやすく、腰神経叢障害、神経根障害、筋腱疾患と誤認されることが多いため、包括的な診断アプローチが必要です。臨床トライアド(運動、感覚、疼痛の評価を統合した構造化アプローチ)を用いることで、末梢神経圧迫症候群の診断精度を向上させることができます。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11971183/
一時的な圧迫による腓骨神経麻痺であれば、数ヶ月程度で症状が改善する場合が多く、保存的療法が第一選択となります。保存療法には圧迫の回避・除去、局所の安静、薬物療法、運動療法が含まれます。
具体的には、神経圧迫の除去を目的とした姿勢指導、パッド使用、生活動作の見直しを行い、足首を持ち上げる装具(短下肢装具、足関節背屈装具)を使用して歩行を補助します。理学療法では筋力維持、神経滑走訓練、歩行訓練を実施し、薬物療法としてビタミンB12製剤の内服や末梢循環改善薬の投与が行われることもあります。
圧迫が明らかで改善が乏しい場合や神経損傷がある場合は、手術療法が検討されます。手術には神経剥離術・減圧術があり、腫瘍やガングリオンが原因の場合に特に有効です。慢性例では神経移行術や腱移行術を検討することもあります。
治療期間は麻痺の程度によって異なり、軽度では2週間から3ヶ月、中等度では3ヶ月から6ヶ月、重度では6ヶ月から1年以上を要します。軽度の腓骨神経麻痺は数週間程度で自然回復することが多い一方、重度では数ヶ月から数年の治療が必要で、後遺症が残ることもあります。
参考)腓骨神経麻痺が治るまでどのくらいかかる?後遺障害も解説|交通…
腓骨神経麻痺の予後は比較的良好で、治療を受けた患者のほとんどで神経機能の完全回復がみられます。特に軽症例では数週間での自然回復が期待でき、適切な治療介入により機能改善が見込まれます。
参考)腓骨神経麻痺は治るまでにどのくらいかかりますか? |腓骨神経…
しかし、適切な治療が行われなかったり、重度の神経損傷があった場合には、後遺症として残る可能性があります。代表的な後遺症には、足首が垂れ下がる下垂足や足背の感覚障害があり、これらの症状は日常生活に支障をきたすため、装具の使用が長期的に必要となることがあります。
予後不良のケースでは、足首の背屈力が戻らない、感覚異常が改善されないといった症状が持続し、歩行時の不安定さや長時間の立ち歩きが困難になる可能性があります。重症例では筋萎縮や麻痺の固定化をきたすこともあるため、早期診断と適切な治療開始が予後改善の鍵となります。
回復期間は麻痺の原因や重症度、個人の回復力によって異なるため、患者個別の状態を考慮した治療計画とリハビリテーションプログラムの立案が重要です。神経の回復を促進するためには、継続的な理学療法と定期的な経過観察が不可欠です。

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