ギプス固定における看護ルーの看護ケア

ギプス固定を受ける患者への看護師の役割や観察ポイント、合併症予防を中心とした看護ケアについて、循環障害や神経麻痺などの見極め方法を含めて詳しく解説しています。安全な固定期間を過ごすための看護のコツとは何でしょうか?

ギプス固定における看護ルー

ギプス固定時の看護ポイント
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循環障害の観察

皮膚色、温度、腫脹の定期的なチェック

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合併症の早期発見

神経麻痺、圧迫創、廃用症候群の予防

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患者教育とケア

日常生活指導と安全な過ごし方の支援

ギプス固定の循環障害と看護観察

ギプス固定による循環障害は、固定後24時間以内に最も発生しやすい重要な合併症です 。看護師は皮膚温、色調、腫脹の有無、爪甲色の変化、毛細血管環流の有無、動脈拍動、疼痛(締め付けられるような痛み)の観察を継続的に行う必要があります 。特に下腿骨骨折や小児の上腕骨顆上骨折では循環障害が頻発するため、より注意深い観察が求められます 。
参考)ギプス固定の介助 - ナースハッピーライフ

 

プレッシャー反応(爪を圧迫して除圧後に色が戻るかどうか)の確認や、ギプスから出ている手指や足趾の皮膚温や色調の変化、動きの低下を定期的にチェックすることが重要です 。手指の屈曲傾向や他動伸展時の疼痛、増悪する疼痛がある場合は、フォルクマン拘縮の可能性を疑い、直ちに医師への報告が必要となります 。
参考)骨折に対する外固定法について

 

循環障害が認められた場合の処置として、ギプスや綿包帯に割を入れて固定を緩める方法や、ギプスカットによる減圧処置が行われます 。看護師は患者の症状を早期に発見し、適切なタイミングで医師に報告することで、重篤な後遺症を予防する役割を担っています。
参考)https://www.umin.ac.jp/kagoshima/jgopher/10/N1016.txt

 

ギプス固定時の神経麻痺予防と看護

ギプス固定による神経麻痺は、橈骨神経、正中神経、尺骨神経、腓骨神経、脛骨神経に特に発生しやすい合併症です 。看護師は疼痛、しびれ、知覚鈍麻、ギプス装着部位より末梢の運動障害の有無を継続的に観察する必要があります。
上肢のギプス固定後の神経障害の見極めとして、手指の運動が弱く知覚鈍麻がある場合の部位別評価が重要です。母指側の症状は橈骨神経麻痺、小指側は尺骨神経麻痺、中指付近は正中神経麻痺を示唆します 。下肢では第1趾の運動が弱く足背の知覚鈍麻があれば腓骨神経麻痺が疑われます。
神経麻痺の症状が観察された場合、ただちに圧迫を除去する必要があります 。放散痛やしびれ、知覚障害、手指・足趾の運動障害といった初期症状を見逃さないよう、定期的かつ系統的な観察を行うことが看護師の重要な役割となります 。
参考)https://gakken-mesh.jp/files/contents/1113.pdf

 

ギプス固定における皮膚障害と圧迫創の看護

ギプス固定による皮膚障害は、踵骨部、腓骨小頭、仙骨部、内踵部、外踵部、大転子部などの骨突出部位に好発します 。看護師は疼痛、掻痒感、発熱、白血球数の増加の有無を観察し、水疱や壊死の発生を早期に発見する必要があります。
圧迫による褥瘡や水疱、ギプス内の創傷が疑われる場合には、開窓(局所の観察や処置を目的としたギプスの一部除去)が検討されます 。ギプスの縁で皮膚がこすれて赤くなり痛む場合や、中でギプスが当たる場合には、低刺激のローションやクリームで改善することもあります 。
参考)ギプス固定中の過ごし方 -骨折ネット-

 

創汚染の観察も重要で、ギプス汚染の範囲、感染徴候の有無、ギプス周辺の異臭などをチェックします 。出血や滲出液が多いとギプスの上まで出てくることがあるため、ギプス表面の状態変化も注意深く観察する必要があります。患者には症状があれば遠慮なく相談するよう指導することが重要です 。

ギプス固定の種類と看護師の理解

ギプス固定には様々な種類があり、看護師は各固定法の特徴を理解して適切なケアを提供する必要があります。長上肢ギプスは上腕部から手部まで、短上肢ギプスは前腕部から手部までの固定に使用され 、長下肢ギプスは大腿部から足部まで、短下肢ギプスは膝下から足部までの固定に用いられます 。
参考)https://www.taharaseikei-ube.com/600.html

 

ギプスシーネは患部の半分程度しか固定されないため通気性に優れ、着脱が可能という特徴があります 。比較的短期間の固定や腫れがひどい骨折の初期治療、手先や足先などの単純な骨折、捻挫などの靱帯損傷に使用されます 。プラスチックやグラスファイバーなどの素材で作られた副子を患部に当て、包帯やバンドで固定する方法です 。
参考)ギプスシーネ

 

体幹ギプス装着時には特有の合併症として、悪心、嘔吐、腹部膨満、腹痛などの症状を呈するキャスト症候群(急性胃拡張)の発生に注意が必要です 。体幹ギプスの前弯が強いと上腸管動脈の循環障害を起こすことがあるため、看護師は患者の消化器症状を注意深く観察する必要があります。

ギプス固定患者の生活指導と看護師の役割

外来におけるギプス固定患者への看護支援では、初回固定患者に対する合併症予防教育が重要な位置を占めています 。看護師は10分程度の短時間で実施することが多いですが、初めてギプス固定を受ける患者には年齢や意思決定力、同伴者の有無などを考慮した個別性のある指導が必要です 。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsmn/13/0/13_61/_pdf/-char/ja

 

ギプス固定中の日常生活での注意点として、痛みがだんだん強くなる場合、腫れなどのためにギプスがきつい場合、ギプスが当たる場所があり辛い場合、手足の末梢が冷たくなったり紫色になったり感覚が鈍くなった場合、指などが動かせなくなった場合には、診療所・病院に連絡するよう指導します 。
看護師は患者の安全な在宅生活を支援するため、活動制限に応じた生活指導も不可欠です 。入浴や洗髪の援助方法、ギプス固定部位を濡らさない工夫、患肢の挙上方法、日常生活動作の代替手段について具体的に指導することで、患者の自立した生活を支援する役割を担っています。筋萎縮や関節拘縮の予防のため、患側・健側ともに関節可動域の維持や筋力低下の予防についても指導が重要です 。