フォシーガ(ダパグリフロジン)は、SGLT2阻害薬として腎臓の近位尿細管におけるグルコース再吸収を選択的に阻害します。この作用により、血液中から一度ろ過されたグルコース(ブドウ糖)を再び血液中へもどす作用(再吸収)を抑制し、尿糖として排泄することで血糖コントロールを改善する効果があります。
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SGLT2は腎臓の近位尿細管に限定的に存在し、血中のほとんどのグルコースを再吸収する役割を担っています。フォシーガはこのSGLT2の働きを直接抑えることで、「運び屋」の機能をブロックし、余分な糖を尿中に排出させます。
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臨床試験において、フォシーガはHbA1c(過去1〜3か月の平均血糖値を反映)の低下や空腹時血糖値を約20〜30 mg/dL低下させる効果が確認されています。この血糖降下作用は、インスリンの作用に依存しないため、インスリン抵抗性の患者にも有効性を示します。
フォシーガの特徴的な効果として、体重減少作用が注目されています。この効果は、糖分を尿と一緒に体外に排出するメカニズムによって生じます。
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1日あたり約60~80gの糖が排泄され、カロリーに換算すると約240~320kcalに相当します。これは、お茶碗1~1.2杯分のご飯に相当する量であり、毎日これだけのカロリーを体外に出すことで結果として体重減少につながります。
さらに、糖が排泄されることにより血液中の糖分が少なくなると、エネルギー不足を補うために体は蓄えていた脂肪を糖の代わりに使用するようになります。この脂肪燃焼促進効果により、体重減少をサポートします。複数の研究を比較検討した結果では、フォシーガ(5mgまたは10mg/日)の体重減少効果は中程度(3.2〜5%)と報告されています。
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フォシーガは糖尿病治療薬としての枠を超え、慢性心不全に対する治療薬としても効果を発揮します。心不全による入院や心血管系の病気による死亡のリスクを約20〜30%減らすとされています。
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代表的な臨床試験であるDAPA-HF試験(2019年)では、ダパグリフロジンが心不全のある患者(HFrEF:収縮力が低下した心不全)に対し、心血管死および心不全による入院を有意に減少させることが証明されました。また、EMPEROR-Reduced試験(2020年)では、エンパグリフロジンが糖尿病の有無にかかわらず、HFrEFの予後改善に貢献することが示されています。
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さらにDELIVER試験(2022年)では、糖尿病の有無に関わらず、ダパグリフロジンのHFpEF(駆出率が保たれた心不全)に対する有効性が認められました。心不全への効果は、グルコース及びナトリウムの再吸収抑制に基づく浸透圧利尿作用により容量過剰性心負荷を軽減し、うっ血を改善することによるものと考えられています。
参考)https://kirishima-mc.jp/data/wp-content/uploads/2023/04/2dd594e508473d707af82d55c9bf73da.pdf
フォシーガは腎臓を守る作用があることが近年の研究で明らかになっています。SGLT2阻害薬には、血糖をおさえるだけでなく腎臓を守る作用があり、糖尿病・高血圧・肥満などで腎臓にかかる圧力を減らすことで腎臓の負担を減らします。
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腎保護効果のメカニズムは、輸入細動脈の拡張を改善することにあります。糸球体への血液の過剰な流入を抑えることで糸球体内圧を低下させ、腎臓の浄水場としての負担を軽減します。これは、浄水場に流れ込んでくるゴミの量を減らし、浄水場の負担を軽減するような効果といえます。
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最近の研究では、SGLT2阻害薬は糖尿病の有無にかかわらず、慢性腎臓病の進行を抑制する効果があることが報告されています。冠動脈疾患を持つ2型糖尿病患者を対象とした研究では、腎機能の指標となる血清クレアチニン値の低下や造影剤による急性腎障害の発症リスクの低下が認められています。
フォシーガの主な副作用として、性器感染(腟カンジダ症など)、尿路感染(膀胱炎など)、体液量減少(脱水)、便秘、口渇、頻尿、尿量増加、陰部のかゆみなどが報告されています。これらの副作用は、フォシーガの作用機序である尿糖排泄増加に関連して発生します。
参考)副作用
重大な副作用として注意すべきは、低血糖、性器・尿路の感染症、脱水、ケトアシドーシスがあります。特にケトアシドーシスは、血液中のケトン体と呼ばれる物質が異常に増加することで起こり、血液が酸性に傾き、意識障害などを引き起こす可能性があります。
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脱水症状については、フォシーガによって尿の量が増え、体から水分が失われやすくなるため、疲れやすい、めざいがする、食欲がないなどの症状が現れる場合があります。これらの副作用を予防するため、服用中はこまめな水分補給を心がけることが重要です。
禁忌事項として、本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者、重症ケトーシス、糖尿病性昏睡又は前昏睡の患者、重症感染症、手術前後、重篤な外傷のある患者には投与してはいけません。
参考)https://med.sawai.co.jp/pdf/attach01.pdf