チオプリン製剤一覧と使用方法副作用解説

チオプリン製剤の種類一覧から使用方法、副作用までを詳しく解説。NUDT15遺伝子多型検査により重篤な副作用を予防する最新情報とは?

チオプリン製剤一覧

チオプリン製剤の種類と特徴
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アザチオプリン(AZA)

イムラン®・アザニン®として処方される代表的なチオプリン製剤

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6-メルカプトプリン(6-MP)

ロイケリン®として処方される粉薬タイプの製剤

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代謝メカニズム

AZAは体内で6-MPに変換され、最終的に活性代謝物として作用

チオプリン製剤の種類と商品名一覧

現在日本で使用されているチオプリン製剤は、**アザチオプリン(AZA)6-メルカプトプリン(6-MP)**の2種類に大別されます。
参考)https://www.tmd.ac.jp/grad/gast/medical/ibd_uccare.html

 

アザチオプリン系製剤:

  • イムラン®錠50mg(サンドファーマ)
  • アザニン®錠50mg

6-メルカプトプリン系製剤:

  • ロイケリン®散(粉薬)

これらの製剤は、AZAが体内でグルタチオンの存在下に非酵素的に代謝され、約90%が6-MPに変換されるという関係性を持っています。つまり、AZAは6-MPのプロドラッグとして機能し、最終的に同じ活性代謝物として作用します。
参考)https://www.pfizerpro.jp/medicine/xeljanz/disease/treatment/medicine-immunomodulatory

 

錠剤のAZA製剤は服用の利便性に優れる一方、粉薬の6-MP製剤は使用量の微調節が可能という特徴があります。また、一方の製剤で副作用が出現しても、もう一方で効果が得られる場合があることが知られています。

チオプリン製剤の効果と治療適応症

チオプリン製剤は、免疫調節薬として複数の疾患において重要な役割を果たしています。
参考)https://sumii-clinic.org/679/

 

主な治療適応症:

特に炎症性腸疾患(IBD)において、チオプリン製剤はステロイド依存例の治療に最も有用とされています。ステロイドによる寛解導入を繰り返す患者や、ステロイドを減量できない患者において、寛解維持効果を発揮します。
また、5-ASA製剤が副作用のため使用できない症例や、タクロリムスで寛解導入後の維持療法としても使用され、生物学的製剤の二次無効を予防する目的でも併用されています。
チオプリン製剤の作用機序は、免疫細胞のDNA合成やリンパ球の増殖を阻害することで細胞傷害作用を発揮し、抗体産生を抑制することにあります。

チオプリン製剤の使用方法と投与量調節

チオプリン製剤の使用において、個人差人種差を考慮した慎重な投与量調節が極めて重要です。
参考)https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=3422

 

初回投与開始量:

  • アザチオプリン:25mg/日から開始
  • 6-メルカプトプリン:10~15mg程度から開始

チオプリン製剤の代謝に関わるthiopurine S-methyltransferase(TPMT)活性は個人差が著しく、同時服用薬の影響も受けやすいため、少量から開始し副作用の有無を確認しながら増量することが安全です。
効果発現までには数ヶ月を要するという特徴があり、長期的な視点での治療計画が必要です。副作用が認められた場合でも、一時的な中止と減量による再投与が可能な場合が多く、きめ細かい用量調節により継続可能なケースが多数報告されています。
製剤の使い分けについては、IBDに対して保険適用があるAZAを第一選択とし、他剤でアレルギーを示した症例や低体重患者では少量投与が可能な6-MPを選択するという方針が推奨されています。

チオプリン製剤の重篤な副作用と対策

チオプリン製剤の使用において最も注意すべきは、日本人を含む東アジア人特有の重篤な副作用です。
参考)https://www.amed.go.jp/news/release_20180413-01.html

 

主要な重篤副作用:

  • 重度の白血球減少症(致死的感染症のリスク)
  • 全身脱毛症
  • 骨髄抑制(再生不良性貧血、汎血球減少)
  • 肝機能障害

これらの副作用の中でも、白血球減少症は生命に重大な影響を与え、発見や治療が遅れると死亡に至る可能性があります。
参考)https://www.hosp.tohoku.ac.jp/release/news/13834.html

 

その他の副作用:

副作用は大きく2つのタイプに分類されます。用量依存性副作用(脱毛、骨髄抑制、肝機能障害)と特異体質性副作用です。特に用量依存性副作用は、適切な用量調節により予防・軽減が可能です。
妊娠に関しては、チオプリン製剤治療群と無治療群で先天性異常の発症頻度に差は認められていないものの、慎重な対応が必要です。

チオプリン製剤副作用予測のためのNUDT15遺伝子多型検査

NUDT15遺伝子多型検査は、チオプリン製剤による重篤な副作用を事前に予測する画期的な検査法として2018年に保険適用されました。
参考)https://primary-care.sysmex.co.jp/speed-search/detail.php?pk=1328

 

検査の意義:
NUDT15は、チオプリン製剤の活性型分子の代謝に関与する酵素の一つです。139番目のアミノ酸がシステインに変化する遺伝子多型(NUDT15 R139C)を有する患者では、酵素活性が著しく低下し、薬効が過剰になることで重篤な副作用が発現します。
参考)https://data.medience.co.jp/guide/guide-08170006.html

 

日本人における頻度:

検査結果に基づく治療方針:

この検査により、従来予測困難であった早期の重度白血球減少症や全身脱毛症のリスクを事前に評価できるようになり、安全性が大幅に向上しました。現在では、チオプリン製剤を初めて開始する際の必須検査として位置づけられています。
医療従事者にとって、この遺伝子多型検査の活用は、個別化医療の実践において極めて重要な意味を持ちます。検査結果を適切に解釈し、患者の遺伝的背景に応じた安全な薬物療法を提供することが、現代のチオプリン製剤使用における標準的な医療となっています。

 

チオプリン製剤は安価で有用な薬剤である一方、適切な事前評価と継続的なモニタリングが不可欠です。NUDT15遺伝子多型検査の普及により、これまで以上に安全で効果的な治療が可能となり、多くの患者にとって貴重な治療選択肢として位置づけられています。