バイオシミラー一覧と承認薬の適応疾患

日本で承認されているバイオシミラーの一覧から効果的な治療選択肢まで詳しく解説。医療費削減効果や品質管理、適応疾患の詳細とともに、バイオシミラー導入のメリットや課題も紹介。医療従事者が知っておくべき最新情報とは?

バイオシミラー一覧と承認薬の概要

バイオシミラーの基本概要
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承認済みバイオシミラー

日本では22成分36製品が承認され、がんや自己免疫疾患の治療に活用

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薬価削減効果

先行品の約70%の薬価設定により年間最大1,000億円の医療費削減効果

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治療対象疾患

関節リウマチ、がん、糖尿病、成長ホルモン分泌不全症など幅広い疾患に対応

バイオシミラー承認一覧と主要成分

日本で承認されているバイオシミラーは2025年9月時点で22成分が承認されており、先行バイオ医薬品の特許満了後に開発された高品質な治療薬として医療現場で活用されています 。承認されたバイオシミラーには、ソマトロピン(成長ホルモン)、エポエチンアルファ(腎性貧血治療薬)、フィルグラスチム(好中球減少症治療薬)などの基本的な製品から、インフリキシマブアダリムマブなどの関節リウマチ治療薬、さらにはリツキシマブやトラスツズマブといった抗がん剤まで幅広い領域をカバーしています 。
参考)https://www.jpmedri.co.jp/service/service_001/contents_005/

 

最新の承認製品として、2025年9月にゴリムマブBS皮下注50mgシリンジ「F」とトシリズマブBS点滴静注80mg「CT」が新たに承認され、関節リウマチ治療の選択肢がさらに拡大しました 。これらのバイオシミラーは先行バイオ医薬品と同等・同質の品質、安全性、有効性を有することが厳格な審査により確認されており、製造販売業者による独自の製造技術と品質管理システムにより安定供給が実現されています 。
参考)https://www.biosimilar.jp/pdf/biosimilar_list.pdf

 

欧米と比較すると、日本の承認品目数は36製品と相対的に少なく、欧州では106製品、米国では49製品のバイオシミラーが承認されている状況です 。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11144985/

 

バイオシミラー薬価制度と医療費削減効果

バイオシミラーの薬価は先行バイオ医薬品の70%に設定されることが原則となっており、この価格設定により患者の医療費負担軽減と医療保険制度の持続可能性向上に大きく貢献しています 。厚生労働省の統計によると、バイオシミラー全体の置換率は2020年度で29.5%(数量ベース)に達し、年間最大1,000億円を超える医療費削減効果が推定されています 。
参考)バイオシミラー市場の成長の可能性!ジェネリック医療品との違い…

 

しかし、日本では独特な薬価制度により、承認後に急速な薬価下落が発生する傾向があり、これがバイオシミラー企業の日本市場からの撤退要因となっています 。ドイツや英国と比較して、ベバシズマブのバイオシミラーでは日本だけが急激な薬価下落を経験しており、フィルグラスチムのバイオシミラーでは既に海外3社が日本から撤退している状況です 。
参考)バイオシミラーも消えていく - 武藤正樹のWebサイト

 

国際的な研究では、アダリムマブ、インフリキシマブ、トラスツズマブなど57か国・地域における分析で、バイオシミラー導入により先行品の価格が有意に下落することが確認されています 。
参考)301 Moved Permanently

 

バイオシミラー適応疾患と作用機序の詳細

バイオシミラーが適用される主要疾患は、関節リウマチ、各種がん、糖尿病、腎性貧血、成長ホルモン分泌不全症、乾癬、炎症性腸疾患など多岐にわたります 。関節リウマチ領域では、TNF-α阻害薬であるアダリムマブ、エタネルセプト、インフリキシマブのバイオシミラーが承認されており、関節の構造的損傷防止を含む包括的な治療効果を発揮します 。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001214918.pdf

 

抗体医薬品の作用機序としては、中和活性(標的分子の機能抑制)、細胞傷害活性(ADCC、CDC)、アゴニスト活性(受容体活性化)、免疫チェックポイント阻害などの多様なメカニズムにより治療効果を発現します 。リツキシマブはCD20陽性B細胞を標的とし、非ホジキンリンパ腫や慢性リンパ性白血病に対して細胞傷害活性により効果を示し、トラスツズマブはHER2陽性乳がん・胃がんに対してHER2受容体を介したシグナル伝達阻害により抗腫瘍効果を発揮します 。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/001437918.pdf

 

ただし、バイオシミラーは先行品の再審査期間や特許満了していない適応症については取得できないため、先行品と完全に同一の適応症を持たない場合があることに注意が必要です 。

バイオシミラー品質管理と臨床試験の特異性

バイオシミラーの開発では、新有効成分含有医薬品に準ずる最大20種類の申請資料が求められ、低分子ジェネリック医薬品の4種類と比較して大幅に厳格な評価が実施されます 。品質特性解析では、構造決定、物理化学的性質、生物活性、不純物等の詳細な比較検討に加え、製造方法の独自確立と恒常性・頑健性の実証が必要です 。
参考)バイオシミラーはどのように承認申請されるの?

 

臨床試験においては、先行バイオ医薬品との有効性差異を最も検出しやすい疾患集団での同等性試験が実施され、薬物動態試験や毒性試験を含む包括的な非臨床試験データの提出が求められます 。中国における12のランダム化比較試験(5,717例)のメタ解析では、アダリムマブ、インフリキシマブ、トシリズマブのバイオシミラーが先行品と統計学的有意差のない同等の有効性を示すことが確認されています 。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11652503/

 

バイオシミラーの承認後には、構築した品質管理戦略に基づく独自のライフサイクルマネジメントが重要であり、製法変更時の同等性・同質性評価や品質リスクマネジメントの継続的実施が求められます 。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/rsmp/8/1/8_27/_pdf/-char/ja

 

バイオシミラー導入による医療アクセス改善効果

バイオシミラー導入による最も重要な効果は、高額なバイオ医薬品への患者アクセス改善です。米国では2024年時点で49のバイオシミラーが承認され、2022年までに236億ドルの医療費削減を実現し、2023年にはアダリムマブバイオシミラー競争により追加で65億ドルの削減効果が報告されています 。
欧州医薬品庁(EMA)と欧州医薬品庁長官会議(HMA)の共同声明では、EU承認バイオシミラーの先行品および他のバイオシミラーとの相互互換性が科学的根拠に基づいて確認され、医療従事者と患者の理解促進により生物学的製剤へのアクセス向上が図られています 。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9614114/

 

しかし、日本では一般生活者のバイオシミラー認知度が19.1%、関節リウマチ患者で34%、糖尿病患者で26.5%と低く、医師からのバイオシミラー推奨を受けた患者も関節リウマチで26.1%、糖尿病で14.6%に留まっているのが現状です 。一方で、医師からの推奨がある場合には69.9%の患者が使用意欲を示しており、適切な情報提供と教育による普及促進の重要性が示されています 。