アジレクト(一般名:ラサギリンメシル酸塩)は2018年に日本で発売されたMAO-B阻害薬で、従来のエフピーと比較していくつかの特徴的な違いがあります。
参考)https://passmed.co.jp/di/archives/685
主な特徴:
参考)https://www.shiraihp.or.jp/news/img/img20210812.pdf.pdf
参考)https://sato-nou.com/parkinson-kusuri/
薬価情報:
標準量での1日薬価は953円で、ジェネリック医薬品のないため高額な薬剤に分類されます。これはセレギリンジェネリック(約300円)の約3倍のコストとなります。
参考)https://amanuma-naika.jp/blog/mao-b%E9%98%BB%E5%AE%B3%E8%96%AC%EF%BC%88%E3%82%A8%E3%83%95%E3%83%94%E3%83%BC%E3%80%81%E3%82%A2%E3%82%B8%E3%83%AC%E3%82%AF%E3%83%88%E3%81%AA%E3%81%A9%EF%BC%89%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6
エクフィナ(一般名:サフィナミドメシル酸塩)は2019年に発売された最も新しいMAO-B阻害薬で、他の同系薬とは異なる特徴的な作用機序を持ちます。
独特な薬理学的特徴:
参考)https://nomuneu.jp/201911273094/
臨床的メリット:
薬価はアジレクトとほぼ同等の930円となっています。
アジレクト使用時には、他のMAO阻害薬との相互作用に特に注意が必要です。
参考)https://rikunabi-yakuzaishi.jp/contents/hiyari/203/
重要な併用禁忌:
臨床での処方ミス事例:
実際の医療現場では、MAO阻害薬の切り替え時に14日間の休薬が認識されておらず、併用禁忌状態になった事例が報告されています。薬剤師による疑義照会が重要な安全対策となります。
エクフィナは他のMAO-B阻害薬と異なる特性から、特定の患者群に対してより適している可能性があります。
適応を検討すべき患者:
🔸 ジスキネジアが問題となっている患者
🔸 疼痛症状を合併している患者
🔸 不眠症状のない患者
切り替えプロトコル:
他のMAO阻害薬からエクフィナに切り替える際は、アジレクトと同様に14日間の休薬期間が必要です。この期間中はパーキンソン症状の悪化が予想されるため、患者・家族への十分な説明と症状モニタリングが重要となります。
参考)https://faq-medical.eisai.jp/faq/show/11095?category_id=853amp;site_domain=faq
MAO-B阻害薬の選択において、効果と薬剤費のバランスは重要な検討事項です。
薬価比較分析:
薬剤名 | 1日薬価 | ジェネリック | 年間薬剤費 |
---|---|---|---|
セレギリン(エフピー) | 約300円 | 有 | 約109,500円 |
アジレクト | 953円 | 無 | 約347,845円 |
エクフィナ | 930円 | 無 | 約339,450円 |
コスト効果の検討:
処方選択の実態:
多くの医師が効果に明確な差がないにも関わらず高価な新薬を処方する傾向があり、これは新薬への期待バイアスや製薬企業のプロモーション活動の影響とされています。
パーキンソン病治療における薬剤選択は、症状改善効果のみならず、患者の経済状況、併存症、ライフスタイルを総合的に考慮した個別化医療のアプローチが重要です。特に、ジスキネジアや疼痛といった特定の症状を有する患者では、エクフィナの特殊な作用機序が有効である可能性があり、薬価差を考慮してもメリットがある場合があります。一方で、標準的な症状の患者では、コスト効果の観点からセレギリンジェネリックの使用も十分に検討に値すると考えられます。