H2ブロッカー一覧と種類別特徴

H2ブロッカーにはファモチジン、シメチジン、ラニチジンなどの種類があり、それぞれの特徴や作用機序、適応症に違いがあります。胃酸分泌抑制効果や副作用についても異なるため、症状に合わせた選択が重要でしょうか?

H2ブロッカー一覧

H2ブロッカーの基本情報
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作用機序

ヒスタミンH2受容体を拮抗して胃酸分泌を抑制

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治療効果

消化性潰瘍や逆流性食道炎に有効

効果発現

服用後約1時間で効果が現れる

H2ブロッカー(ヒスタミンH2受容体拮抗薬)は、胃壁細胞のヒスタミンH2受容体を競合的に拮抗して胃酸分泌を抑制する薬剤です 。胃潰瘍・十二指腸潰瘍といった消化性潰瘍の治療に用いられ、プロトンポンプ阻害薬(PPI)が登場するまで第一選択薬として広く使用されてきました 。現在でも夜間の胃酸分泌を強力に抑制する特性を活かし、症状や患者の状態に応じて処方されています 。
参考)https://www.pharm.or.jp/words/word00059.html

 

H2ブロッカーの代表的成分一覧

H2ブロッカーには以下の主要成分があり、それぞれ異なる特徴を持ちます :
参考)ヒスタミンH2受容体拮抗薬 - Wikipedia

 

第一世代の代表薬剤

現在主流の薬剤

H2ブロッカーの作用機序と効果の特徴

H2ブロッカーは胃の壁細胞に存在するヒスタミンH2受容体を競合的に阻害することで作用します 。興味深いことに、ヒスタミンだけでなく、ガストリンやアセチルコリンによる胃酸分泌も同時に抑制する効果があります 。
効果発現の特徴

  • 服用後約1時間で効果が現れる迅速性
  • 特に夜間の胃酸分泌を強力に抑制

    参考)https://midori-hp.or.jp/pharmacy-blog/web20220819

     

  • 血中に薬剤があるときにのみ効果を発揮する受容体拮抗薬の特性

プロトンポンプ阻害薬との違い
PPIが胃酸の出口にあたるプロトンポンプを阻害して3つの刺激(ヒスタミン、ガストリン、アセチルコリン)すべてによる酸分泌を抑えるのに対し、H2ブロッカーは主にヒスタミンによる刺激をブロックします 。しかし、実際にはガストリンやアセチルコリンによる分泌も抑制されることが知られています 。
参考)プロトンポンプ阻害薬は、H2ブロッカーとどのように異なります…

 

H2ブロッカーの適応症と治療効果

H2ブロッカーは多様な消化器疾患の治療に使用されます。主な適応症として以下が挙げられます :
保険適用の適応症

  • 胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍
  • 逆流性食道炎(重症例を除く)
  • 急性胃炎、慢性胃炎の急性増悪期における胃粘膜病変の改善
  • 麻酔前投薬

治療効果の実績
ラフチジンを例にとると、胃潰瘍患者で89.8%、十二指腸潰瘍患者で92.3%の全般改善度を示しています 。急性・慢性胃炎の胃粘膜病変に対しても94.0%の全般改善度が報告されており、高い治療効果が確認されています 。
参考)https://med.sawai.co.jp/file/pr1_1445.pdf

 

治療ガイドラインでの位置づけ
消化性潰瘍治療においては、H.pylori除菌治療によらない胃潰瘍治療では、PPIを第一選択薬とし、PPIを使用できない場合にH2RAが選択されます 。これは効果の強さの違いによるものですが、患者の状態や副作用プロファイルを考慮した使い分けが重要です。
参考)https://minds.jcqhc.or.jp/common/summary/pdf/c00140_chapter3.pdf

 

H2ブロッカーの副作用と相互作用の注意点

H2ブロッカーは一般的に副作用が少ない薬剤として知られていますが、成分によって注意すべき点があります 。
一般的な副作用

シメチジン特有の注意点
シメチジンは肝臓の薬物代謝酵素(CYP450)を阻害する作用があるため、他の薬剤との相互作用に特に注意が必要です 。一方、ラニチジンやファモチジンではこのような肝代謝への影響は少ないとされています 。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC1714006/

 

薬物相互作用の具体例

H2ブロッカー一覧における長期使用時の課題と対策

H2ブロッカーの長期使用においては、特有の課題があります 。
耐性(タキフィラキシー)の問題
H2ブロッカーは長期間連用すると徐々に効き目が落ちてしまう耐性が生じやすいという特徴があります 。これはPPIにはあまり見られない現象で、H2ブロッカーの重要な限界点となっています。
長期使用への対策

  • 症状が落ち着いている場合は頓服的に使用する
  • PPIから段階的に切り替える際の一時的な使用にとどめる
  • 必要に応じてPPIへの変更を検討する

腎機能への配慮
ラフチジンを除く多くのH2ブロッカーは腎排泄型の薬剤であるため、腎機能低下患者では用量調整が必要です 。特に高齢者では腎機能の評価と適切な用量設定が重要となります。
最新の安全性情報
ラニチジンについては、製造過程で発がん性物質NDMAの混入が問題となり、現在は販売停止となっています 。一方、シメチジンやファモチジンはNDMAを含有しないため、代替薬として推奨されています 。
参考)Table: ディスペプシアに対する経口薬-MSDマニュアル…