ヨクイニンは、ハトムギの皮を除いた種子から作られる生薬で、医療現場では尋常性疣贅(ウイルス性イボ)と青年性扁平疣贅に対する治療薬として保険適用が認められています。その効果は単にイボ治療に留まらず、肌荒れ改善、デトックス作用、生活習慣病予防など多岐にわたることが確認されています。
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ヨクイニンの代表的な薬効として、免疫活性化によるウイルス撃退作用、皮膚の新陳代謝促進作用、体内の余分な水分を排出する作用が挙げられます。特に、体内のある種の免疫細胞を増やす効果は確実性が高く、ヒト自身に備わっている免疫機能を後押しする働きが認められています。
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成分面では、抗炎症作用のある「コイキソール」、抗腫瘍作用のある「コイクセノリド」、脂肪代謝を促進する「9-ヒドロキシ-オクタデカン酸」などの特徴的な成分を含有しており、これらの相乗効果により美肌効果や抗肥満効果が期待されています。また、カルシウムや鉄分、ビタミンB1、ビタミンB2といった体に必要な栄養素も豊富に含んでいます。
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ヨクイニンは、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染により生じるウイルス性イボに対して特に効果を発揮します。尋常性疣贅診療ガイドライン2019では、液体窒素凍結療法が効果不良の場合や小児治療において、推奨度Bとして位置付けられています。
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全国規模の市販後調査では、627例中236例で疣贅消失、511例で改善以上の結果が得られており、特に年齢別の有効率では乳幼児71%、学童74%、青年57%、成人20%と、若年層での有効率が高いことが示されています。この結果から、小児のイボ治療において特に有用性が高いことが確認されています。
治療期間については、個人差があるものの、3か月程度を目安とした効果判定が推奨されています。ヨクイニンの内服療法は効果が出るまでに時間を要しますが、液体窒素凍結療法で起きる痛みや水ぶくれ、色素沈着などの副作用がないため、特に小児患者に多く選択される治療法となっています。
ただし、首にできる脂漏性角化症(老人性疣贅)などの非ウイルス性イボには効果が期待できないため、適応の判断が重要です。実際の医療現場では、ウイルス性イボに処方されるものの、長期間服用しても変化がない症例も多く、医師の間では「試しに処方する」という消極的な位置づけになっているのが実情です。
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ヨクイニンの肌荒れ改善効果は、主にターンオーバー促進作用と抗炎症作用によるものです。正常な肌は約28日周期で生まれ変わりますが、このターンオーバーが低下すると古い角質が肌表面に蓄積し、肌荒れやイボの原因となります。
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ヨクイニンは肌の水分代謝を促進し、余分な老廃物の排出をスムーズにすることで、肌への水分と栄養の循環を促し、衰えたターンオーバーを正常に整えます。また、含有成分のコイクセラノイドには肌のターンオーバーを促す作用があることが確認されています。
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抗炎症作用については、古くから化膿している部分の膿を排出しやすくしたり、炎症を抑えたりする効果が知られており、ニキビや熱を持った皮膚炎の治療に用いられてきた歴史があります。研究ではヨクイニンエキス剤に乾燥性の肌荒れ改善やアトピー性皮膚炎の改善効果があることも報告されています。
毛穴の詰まりに対しても、ターンオーバー促進作用により毛穴に溜まった皮脂を体外に排出する働きを助け、皮膚表面の古い角質層が適切に剥がれ落ちることで、毛穴の詰まりを解消する効果が期待されています。これらの複合的な作用により、肌質の根本的な改善が可能となります。
参考)https://www.kracie.co.jp/ph/yokuinin/yokuinin02.html
ヨクイニンは優れた利尿作用を有し、体内の水分バランスを整える重要な働きを担っています。この水分代謝促進作用により、体内に蓄積した老廃物を効率的に排出し、デトックス効果を発揮します。
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具体的には、腎臓の働きを改善してむくみの解消に寄与するほか、水分代謝の正常化により肌のターンオーバーも促進されます。また、ヨクイニンに豊富に含まれる食物繊維が大腸のぜん動運動を促進することで、便通の改善も期待できるため、腸内環境からのデトックス効果も得られます。
この水分代謝改善効果は、単純な利尿作用とは異なり、体に必要な水分は保持しながら余分な水分のみを排出する調整機能を持っています。そのため、長期服用でも脱水のリスクが少なく、安全性が高い特徴があります。
さらに、水分代謝の正常化は血液循環の改善にもつながり、栄養素の運搬や老廃物の回収がスムーズに行われるようになります。これにより、肌への栄養供給が改善され、内側からの美肌効果も期待できるのです。
ヨクイニンに含まれる9-ヒドロキシ-オクタデカン酸という成分には、脂肪の代謝を促進する作用があることが研究で確認されており、肥満予防効果が期待されています。この成分は脂肪細胞での脂肪分解を促進し、エネルギー消費を高める働きがあります。
また、多糖類のコイキサンには血糖値を下げる働きがあることが研究報告されており、これら2つの作用の相乗効果により、生活習慣病の予防や改善に役立つと考えられています。特に糖尿病や肥満症といったメタボリックシンドロームの要素に対して、補完的な治療効果が期待されています。
現代の食生活では過剰なカロリー摂取や糖質の摂り過ぎが問題となっていますが、ヨクイニンの代謝促進作用はこれらの問題に対して自然な改善効果をもたらします。ただし、これらの効果は補助的なものであり、適切な食事管理や運動療法と組み合わせることで、より効果的な生活習慣病予防が可能となります。
興味深いことに、古来からヨクイニンは「薏苡仁湯」などの漢方処方において、湿熱症候群(現代でいう代謝異常に相当)の治療に用いられてきた歴史があり、現代科学がその効果メカニズムを解明しつつあります。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/d623f19b3a56408360e2cfb64dd0d5fd43a5bbb5
ヨクイニンは比較的安全性が高い生薬とされていますが、いくつかの副作用や注意点があります。主な副作用として、発疹、発赤、かゆみ、じんましんなどの皮膚症状のほか、胃部不快感、下痢などの消化器症状が報告されています。
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特に胃腸の弱い方では、空腹時の服用により胃部不快感や下痢を起こす場合があるため、食後の服用が推奨されています。また、アレルギー体質の方では皮膚症状が現れる可能性があり、症状が出現した場合は直ちに服用を中止し、医師に相談する必要があります。
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妊娠中や授乳中の使用については、安全性に関する十分なデータが不足しているため、医師との相談が必要です。また、他の医薬品との相互作用についても完全には解明されていないため、複数の薬剤を服用している場合は事前に医師や薬剤師に相談することが重要です。
服用に際しては、成人で1日18錠または3~6gを2~3回に分けて内服し、小児の場合は成人の半量が標準的な用量とされています。効果が現れるまでに時間を要するため、最低でも3か月程度の継続服用が必要ですが、6か月以上服用しても効果が認められない場合は、他の治療法への変更を検討することが推奨されています。