薬剤耐性アクションプランの全体像と効果的対策

薬剤耐性対策アクションプランは2050年の全世界1000万人死亡予測を防ぐ国家戦略です。6つの重点分野による包括的取組で耐性菌拡大を阻止する具体的方針を詳解しています。なぜ今アクションプランが重要とされているのでしょうか?

薬剤耐性アクションプランの戦略構造

薬剤耐性アクションプランの6つの重点分野
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普及啓発・教育

医療従事者と国民への薬剤耐性の理解促進

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動向調査・監視

耐性菌発生状況の継続的な監視体制構築

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感染予防・管理

薬剤耐性微生物の拡大阻止対策

薬剤耐性アクションプランの策定背景と目的

2016年4月に日本初の薬剤耐性対策アクションプランが策定された背景には、世界保健機関(WHO)が2015年5月に採択したグローバル・アクション・プランがあります。WHO加盟各国には2年以内に国家行動計画の策定が求められ、日本も「国際的に脅威となる感染症対策関係閣僚会議」において包括的な取り組みを開始しました。
参考)薬剤耐性(AMR)対策について

 

薬剤耐性(AMR)は、抗菌薬が効かなくなる「サイレントパンデミック」と呼ばれる深刻な問題で、対策を講じなければ2050年には全世界でAMR関連死亡者数が年間1,000万人に達し、がんによる死亡者数を上回ると予測されています。このような緊急事態に対応するため、日本は関係省庁と連携し効果的な対策を推進する方針を打ち出しています。

薬剤耐性対策における6つの重点分野

最新の薬剤耐性対策アクションプラン(2023-2027)では、①普及啓発・教育、②動向調査・監視、③感染予防・管理、④抗微生物剤の適正使用、⑤研究開発・創薬、⑥国際協力の6つの分野で目標設定されています。この構造は、WHOのグローバル・アクション・プランの5つの柱を参考に、日本独自の国際協力分野を加えたワンヘルス・アプローチに基づいています。
参考)薬剤耐性(AMR)対策

 

各分野では具体的な戦略と取り組みが定められており、普及啓発分野では医療関係者への生涯教育研修における感染管理や抗微生物剤の適正使用に関する研修プログラムが重点項目として挙げられています。動向調査・監視分野では薬剤耐性及び抗微生物剤使用量の継続的な監視により、薬剤耐性の変化や拡大の予兆を適確に把握する仕組み作りが進められています。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/ap_gaiyou.pdf

 

抗微生物剤適正使用の推進方法

抗微生物剤の適正使用は、「適切な薬剤」を「必要な場合に限り」「適切な量と期間」使用することを徹底する取り組みです。医療機関では、抗菌薬事前許可制やフィードバックによる介入、アミノグリコシドやバンコマイシンの薬物動態モニタリング、適切な内服抗菌薬使用の促進などが推奨されています。
参考)抗菌薬の適正使用について

 

抗菌薬の適正使用では、病原体を含めた的確な感染症診断を行い、適切なタイミングで最も効果的な抗菌薬を投与することが重要とされています。不適切な使用により薬剤耐性菌が発生すれば、入院期間の延長や医療費の増加、患者予後の悪化を招く可能性があります。

感染予防管理による薬剤耐性拡大阻止

感染予防・管理分野では、適切な感染予防・管理の実践により薬剤耐性微生物の拡大を阻止することを目標としています。薬剤耐性菌がすでに確認されている場合、患者は専用の個室で過ごし、医療従事者や家族がガウンや手袋などを装着する厳重な対応が行われます。
参考)アクションプランとは

 

院内感染対策では、手指衛生の徹底、適切な個人防護具の使用、環境清拭の実施、患者隔離などの標準予防策と接触予防策が基本となります。特に水回りや内視鏡の管理、多剤耐性緑膿菌(MDRP)やカルバペネム耐性腸内細菌目細菌(CRE)などの特定耐性菌への対応が重要視されています。
参考)薬剤耐性(AMR)と感染対策

 

国際協力による薬剤耐性対策の推進

薬剤耐性対策における国際協力は日本のアクションプラン独自の特徴で、国際的視野で多分野と協働し薬剤耐性対策を推進することを目指しています。ASEAN+3諸国との協力メカニズムとして、保健大臣会合、農林大臣会合、環境大臣会合を通じた政策対話と技術協力の強化が進められています。
参考)https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000419546.pdf

 

2025年には「AMR対策の推進に向けて ― 持続可能な政策・資金調達・国際連携」をテーマとした国際対話が開催され、日本、デンマーク、英国の関係者が参加してワンヘルスアプローチの実践事例や低中所得国におけるAMR対策支援について議論が行われました。このような国際協力は、AMRが健康格差や気候変動、食糧安全保障と深く関連する地球規模課題であることを踏まえた包括的アプローチとして位置づけられています。
参考)https://hgpi.org/events/amr-20250626.html