トスフロキサシン小児用細粒の臨床試験において、最も高頻度で発現する副作用は消化器系症状です 。235例を対象とした安全性解析では、副作用発現率は26.4%(62/235)で、主な症状として嘔吐4.3%(10/235)、下痢3.4%(8/235)、軟便2.1%(5/235)が報告されています 。
参考)https://www.chemotherapy.or.jp/journal/jjc/058S2/058S20078.pdf
これらの消化器症状は投与開始後早期に現れることが多く、特に嘔吐は投与翌日から発症する症例も報告されています 。患児の年齢や体重、薬物動態パラメータ(AUCおよびCmax)の上昇に伴い副作用発現率が高くなる傾向が認められており、投与量の調整が重要となります 。
参考)https://www.jspid.jp/wp-content/uploads/pdf/02502/025020145.pdf
医療従事者は処方時に保護者へ消化器症状の出現可能性を十分に説明し、症状が持続する場合には速やかに医療機関へ相談するよう指導する必要があります。軽度の症状であれば投薬継続可能な場合もありますが、重篤な脱水や栄養摂取困難となる場合は投与中止を検討します 。
参考)https://kobe-kishida-clinic.com/respiratory-system/respiratory-medicine/tosufloxacin-tosilate-hydrate/
食事と一緒に服用することで胃腸への刺激を軽減できる可能性があり、服薬指導の際にこの点を保護者に伝えることが推奨されます。また、プロバイオティクスの併用により腸内細菌叢の乱れを防ぐことも検討されます。
トスフロキサシンの最も注意すべき副作用の一つが腎機能障害です 。急性腎障害、間質性腎炎、腎性尿崩症等の重篤な腎障害があらわれることが報告されており、投与中は定期的な腎機能モニタリングが必要です 。
参考)https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00066226
特に小児例では、TFLX結晶による cast nephropathyという特殊な腎障害が発症することがあります 。11歳女児の症例では、TFLX内服中に急性腎障害を呈し、尿沈渣中に緑淡黄褐色調の細い針状結晶が束状またはウニ状に集合したTFLX結晶が確認されました 。
参考)http://congress.jamt.or.jp/j70/pdf/general/0366.pdf
9歳男児の過量投与例では、16.6 mg/kg/日の投与により嘔吐、腹痛、蛋白尿・血尿、軽度腎機能低下、腎腫大をきたしました 。体重30kg前後の小児では血中濃度が上昇しやすいため、投与量には特に注意が必要です 。
腎機能障害の早期発見のため、投与前後での血清クレアチニン値、BUN、尿検査(蛋白、血尿、結晶の有無)の確認が重要です。投与中に腎機能の悪化が認められた場合は直ちに投与を中止し、適切な支持療法を行います。
ニューキノロン系抗菌薬の小児使用における最大の懸念事項は関節・軟骨への影響です 。トスフロキサシンにおいても関節障害が発現するおそれがあるため、使用に際してはリスクとベネフィットの慎重な考慮が必要です 。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00066226.pdf
小児臨床試験では関節痛が2例に認められましたが、いずれも軽度で速やかに回復しました 。投与終了1年後までの調査では、関節関連有害事象の発現率は9.6%(22/230)でしたが、因果関係が不明の1例を除き、全例で本薬剤との因果関係は否定されています 。
関節障害の評価は主要6関節(肩、肘、手首、股関節、膝、足首)の疼痛、腫脹、熱感、可動制限および歩行障害を観察します 。自覚症状を訴えられない小児では、可動制限や打診などの他覚所見により評価を行います 。
投与期間中は保護者に関節の痛みや腫れ、歩行の異常がないか注意深く観察するよう指導し、異常を認めた場合は速やかに医療機関を受診するよう説明します。長期使用を避け、必要最小限の投与期間とすることが重要です。
トスフロキサシンは中枢神経系に影響を与える可能性があり、小児では特に注意が必要です 。代表的な症状として、めまい、頭痛、不眠、稀に痙攣などが報告されていますが、小児臨床試験では痙攣や低血糖は認められませんでした 。
中枢神経系の副作用は高齢者や腎機能障害のある患者でより発現しやすいとされていますが、小児においても腎機能が未熟な場合や脱水状態では注意が必要です 。特に発熱や嘔吐により脱水となりやすい小児感染症では、薬物の血中濃度上昇により中枢神経症状のリスクが高まる可能性があります。
投与中は患児の意識状態、行動の変化、睡眠パターンの異常などを注意深く観察し、保護者にも異常行動や意識レベルの変化について説明しておくことが重要です。症状が現れた場合は投与を中止し、必要に応じて対症療法を行います。
フェンブフェンとの併用は重篤な中枢神経系副作用を引き起こすため厳禁とされており、他の薬剤との相互作用についても十分な確認が必要です 。
トスフロキサシンによる皮膚症状として、発疹、掻痒感、光線過敏症などが報告されています 。重篤な皮膚反応として、中毒性表皮壊死融解症(TEN)や皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)の発現も報告されており、投与開始後は皮膚症状の監視が重要です 。
参考)https://hokuto.app/medicine/G2qhJ9Bz5wg6OIBvPvGT
光線過敏症はニューキノロン系抗菌薬に特徴的な副作用で、日光暴露により皮膚に異常な反応が生じます 。投与中は過度の日光暴露を避け、外出時には日焼け止めや帽子、長袖の服を着用するよう指導します 。
アナフィラキシーやショックなどの重篤なアレルギー反応も報告されており、呼吸困難、浮腫、発赤等の症状に注意が必要です 。投与開始後は特に初回投与時に患児の状態を注意深く観察し、異常を認めた場合は直ちに投与を中止します。
過敏症状が出現した患児では、トスフロキサシンおよび他のニューキノロン系抗菌薬に対するアレルギー歴として記録し、今後の処方時に注可能性があります。軽微な皮膚症状でも放置せず、症状の程度と投与継続の可否を慎重に判断することが重要です。
小児では皮膚症状を正確に訴えることが困難な場合があるため、保護者に皮膚の変化について詳しく説明し、日常的な観察を依頼することが必要です。
トスフロキサシン小児用の詳細な副作用情報 - 医薬品医療機器総合機構
製薬会社が提供する小児用トスフロキサシンの副作用と使用上の注意に関する包括的な情報
小児における間質性腎炎症例報告 - 全日本民医連
実際の症例を通じて学ぶトスフロキサシンによる腎障害の臨床経過と対処法
小児臨床試験安全性データ - 日本化学療法学会
235例を対象とした大規模臨床試験による詳細な安全性解析結果