テオフィリンの絶対禁忌として最も重要なのは、本剤または他のキサンチン系薬剤に対する重篤な副作用の既往歴がある患者です。キサンチン系薬剤には、テオフィリン以外にもアミノフィリン、ジプロフィリン、カフェインなどが含まれており、これらの薬剤でアレルギー反応や重篤な副作用を経験した患者には投与してはいけません。
過敏症の症状には以下のようなものがあります。
また、12時間以内にアデノシン(アデノスキャン)を使用する患者も絶対禁忌です。これは、テオフィリンがアデノシン受容体に拮抗するため、アデノシンによる冠血流速度の増加及び冠血管抵抗の減少を抑制し、虚血診断に影響を及ぼす可能性があるためです。
てんかんの患者や痙攣の既往歴がある患者では、テオフィリンは慎重投与となります。テオフィリンによる痙攣発現のメカニズムは複数考えられており、主にアデノシン受容体の拮抗作用が関与しています。
痙攣発現の機序。
特に注意が必要な患者群。
テオフィリンによる痙攣は、必ずしも血中濃度の上昇だけでなく、多くの危険因子が関与していることが報告されています。
うっ血性心不全の患者では、テオフィリンクリアランスが低下し、血中濃度が上昇するリスクがあります。これは心不全による肝血流量の減少が主な原因です。
心不全患者での注意点。
テオフィリンは心筋や血管平滑筋に直接作用して心血管系の副作用を引き起こすことがあります。
重篤な不整脈のある患者では、テオフィリンが不整脈を誘発または悪化させる可能性があるため、特に慎重な投与が必要です。
急性腎炎の患者では、テオフィリンが腎臓に対する負荷を高め、尿蛋白が増加するおそれがあります。これは、テオフィリンの利尿作用と腎血流に対する影響が関与していると考えられています。
腎機能障害患者での考慮事項。
興味深いことに、テオフィリンには腎保護作用に関する研究報告もあります。グリセロール誘発急性腎不全に対するテオフィリンの保護作用について、ヘムオキシゲナーゼとグルタチオンによる調節機序が報告されており、腎疾患におけるテオフィリンの役割は複雑であることが示されています。
テオフィリンの治療上有効な血清中濃度は5~20μg/mLですが、20μg/mLを超えると中毒症状が現れやすくなります。禁忌疾患を有する患者では、より厳格な血中濃度管理が必要です。
薬物相互作用による血中濃度変動。
血中濃度上昇を引き起こす薬剤。
血中濃度低下を引き起こす薬剤。
特に注目すべきは、メキシレチンとの相互作用です。併用により血清中テオフィリンレベルが27.3μg/mLの中毒域に達し、悪心、嘔吐、頻脈を起こした症例が報告されています。この場合、テオフィリン投与量を25%減量することで副作用が完全に消失し、7日後には正常レベル(18.8μg/mL)に回復しました。
喫煙・禁煙の影響。
喫煙により肝薬物代謝酵素が誘導され、テオフィリンクリアランスが上昇します。逆に禁煙により血中濃度が上昇するため、禁煙時には減量が必要です。
TDMの重要性について、薬物相互作用による副作用の早期発見と処置において、治療薬物モニタリングが極めて有効であることが臨床研究で示されています。
テオフィリンの安全な使用のためには、患者の病態、併用薬、生活習慣(喫煙状況)を総合的に評価し、定期的な血中濃度測定を実施することが不可欠です。特に禁忌疾患や慎重投与対象の患者では、より頻回なモニタリングと適切な用量調整が求められます。