血清マグネシウムは通常の生化学検査で測定されないことが多く、重要な所見を見逃すリスクがあります。

低マグネシウム血症の症状は非特異的で、食欲不振、筋力低下、テタニーなど多岐にわたります。神経・筋症状としては、人格変化、抑うつ、せん妄、失語症状、意識障害、痙攣、昏睡といった中枢神経症状に加え、筋力低下、振戦、垂直眼振、テタニー、筋痙攣などが認められます。循環器症状では、QRS開大、T波増高・消失、PR延長、上室性・心室性不整脈などの心電図異常が出現します。
重度の低マグネシウム血症では、痙攣、頻脈、不整脈などの重篤な症状が現れることがあります。特に小児ではけいれん発作がよくみられます。
軽度の低マグネシウム血症では症状が現れにくく、定期的に血清電解質の確認を行わなければ見過ごされる可能性が高いです。つまり積極的に疑うことが基本です。
関連)https://gi-cancer.net/gi/fukusayo/fukusayo_09_1.html
低マグネシウム血症は、低カリウム血症(40-60%)や低カルシウム血症(30%)を併発することが知られています。マグネシウムが欠乏すると尿中へのカリウム排泄が増加し、治療抵抗性の低カリウム血症となることがあります。
関連)https://hospi.sakura.ne.jp/wp/wp-content/themes/generalist/img/medical/jhn-cq-kameda-141126.pdf
これはマグネシウムが皮質集合管でのROMKをブロックしており、低マグネシウム血症ではカリウムの尿細管への排泄が増加するためです。低カルシウム血症も同様に、低マグネシウム血症が原因で難治性となるケースがあります。
関連)https://cir.nii.ac.jp/crid/1520853834390121088
難治性不整脈、低カルシウム血症、低カリウム血症を認める場合は、必ずマグネシウム欠乏を疑う必要があります。電解質補正が効かない時が条件です。
血清マグネシウム値が1.25mg/dL以下でマグネシウム欠乏が疑われます。主な原因には、腎排泄の亢進と腎外性の2つがあります。
関連)https://knowledge.nurse-senka.jp/206937/
腎排泄の亢進では、利尿剤の使用や腎機能低下による尿細管での再吸収の減少が挙げられます。腎外性では、長期的なマグネシウムの摂取不足や、下痢・嘔吐などでの排泄過多が原因となります。
関連)https://knowledge.nurse-senka.jp/206937/
消化管からの喪失、内分泌疾患、薬剤によるものなど多様な原因があります。入院患者、特に重症患者でのマグネシウム欠乏の頻度は少なくありません。
関連)https://www.jmedj.co.jp/blogs/product/product_18939
PPI(プロトンポンプ阻害薬)による低マグネシウム血症は、3ヶ月以上の服用で報告されていますが、大半の症例は1年以上投与後に発症しています。投与期間の中央値は約5.5年(14日から13年とワイドレンジ)です。
関連)https://syuichiao.blogspot.com/2014/06/blog-post.html
PPIによる低マグネシウム血症はclass effectであり、いずれのPPIでも発生しうる点が重要です。腸管でのマグネシウム吸収障害が機序として有力視されており、経口マグネシウム補充のみでは血中マグネシウム濃度は十分に上昇しません。
関連)https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.19020/CD.0000000808
これらの症例の約25%は、マグネシウム補充に加えPPIの服用中止を必要としました。原因薬剤の中止によって数日以内に軽快することが多いです。長期PPI投与中の患者では定期的なマグネシウム測定が必須です。
関連)https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.19020/CD.0000000808
血清マグネシウム濃度は、通常の血液生化学スクリーニングで測定されることは少なく、神経・筋症状、心電図異常などがみられる場合に測定され、判明することが多いです。テタニー、痙攣などの神経・筋症状、QT延長、不整脈などの心電図異常、低カルシウム血症、低カリウム血症の電解質異常がみられる場合に、必ず血清マグネシウム濃度を測定する必要があります。
関連)https://www.jmedj.co.jp/blogs/product/product_18939
重要なのは、血清マグネシウム濃度が正常でもマグネシウム欠乏はありうるという点です。体内のマグネシウムの60-65%が骨に、27%が筋肉内にあり、血中に含まれる量は1%以下であるため、細胞内マグネシウムが欠乏していても血清濃度は正常範囲を示すことがあります。
関連)https://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/105.html
臨床状況からマグネシウム欠乏が疑われる場合は、マグネシウム負荷試験を行うことが推奨されます。夜間などルーチン検査でマグネシウムが測定できない施設もあるため、積極的に疑って検査オーダーを出す姿勢が求められます。これは無料です。
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マグネシウム補充療法は、低マグネシウム血症の程度に応じて行います。硫酸マグネシウム補正液1mEq/mL 20mLを生理食塩液100mLに希釈し60分以上かけて投与する方法が一般的です。
関連)https://gi-cancer.net/gi/fukusayo/fukusayo_09_2.html
マグネシウム濃度が1.0mg/dL未満で不整脈や全身痙攣がある場合は、硫酸マグネシウム1mEq/kgを24時間で補充し、その後3-5日は0.5mEq/kgを持続点滴します。1.0mg/dL以上で無症候性の場合は、原疾患の治療および経口マグネシウム製剤の投与を行います。
関連)https://drgawaso.com/24954381-2/
PPI誘発性の低マグネシウム血症では、PPIの中止が最も確実な治療法です。低マグネシウム血症はPPI中止後4日程度で回復し、PPI再開後4日程度で再発につながる可能性があります。原因薬剤の特定と中止が原則です。
関連)https://syuichiao.blogspot.com/2014/06/blog-post.html
高齢者とオキサリプラチン併用が抗EGFR抗体による低マグネシウム血症のリスク因子であることが報告されており、高齢で不整脈の既往をもつ患者には十分注意する必要があります。利尿薬、アルコール多飲、慢性下痢、低栄養などでもマグネシウム欠乏が起きている可能性があります。
ICU患者では軽度の低マグネシウム血症がしばしば認められ、予後と関連することが示されています。透析患者の低マグネシウム血症も生命予後と関連するため、定期的なモニタリングが重要です。
関連)https://www.jmedj.co.jp/blogs/product/product_18939
厚生労働省では、酸化マグネシウム製剤を長期にわたり投与する場合や意識障害などの症状がある場合は、高マグネシウム血症を疑って血清マグネシウム検査を行うよう通知しています。高齢者では次第に腎機能障害が生じることが少なくないため、血清マグネシウム検査をNa、K、Clなどの電解質検査と同様にルーチン検査に加えることが推奨されます。ルーチン化が条件です。
関連)https://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/105.html
MSDマニュアルの低マグネシウム血症の項目には、一般向けにわかりやすい説明と症状の詳細が記載されています。
低マグネシウム血症の診断と治療に関する最新の知見は日本医事新報の専門記事でも解説されており、治療方針の参考になります。
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