チトクローム オキシダーゼ試験 用 ろ紙の検査法と使用方法

チトクローム オキシダーゼ試験用ろ紙について、細菌検査における役割と正確な使用方法、判定基準を詳しく解説。この試験紙の特徴と実践的な活用法をご存知ですか?

チトクローム オキシダーゼ試験 用 ろ紙による細菌検査法

チトクローム オキシダーゼ試験 用 ろ紙の基本情報
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簡便な細菌鑑別法

細菌が保有するチトクローム・オキシダーゼ酵素を1分以内に検出する迅速試験

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TMPD発色反応

テトラメチルパラフェニレンジアミンによる酸化反応で深青色に変色

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品質管理基準

2~10℃での冷蔵保存で製造後36ヵ月間の使用期限

チトクローム オキシダーゼ試験用ろ紙は、細菌が保有する酵素であるチトクローム・オキシダーゼを簡便かつ迅速に検出する試験紙として、微生物検査において重要な役割を果たしています。この試験は1928年にGordon and MLendによって淋菌の同定のために開発されたものですが、現在では腸内細菌科菌群の検査法として広く活用されています。
参考)https://foodmicrob.com/oxidase-test/

 

チトクローム C オキシダーゼは、細菌の好気的呼吸代謝に必須な酵素であり、クエン酸回路から生じてくる水素エネルギーを伝達する電子伝達系の構成要素として機能しています。この酵素によってチトクローム C が酸化されることで、電子伝達系における水素の運搬が行われ、最終的に水素エネルギーを最終水素受容体である酸素に引き渡す重要な役割を担っています。
オキシダーゼ試験では、発色試薬による判定のため、シトクロームの代わりにTMPD(Tetra-methyl-p-phenylenediamine dihydrochloride)を使用します。TMPDがシトクローム C オキシダーゼによって酸化されることで紫色に変色し、この色変化を判定することで調べた細菌がシトクローム C オキシダーゼ陽性かどうかを確認できます。

チトクローム オキシダーゼ試験用ろ紙の基本的な使用方法

チトクローム オキシダーゼ試験用ろ紙の使用方法は非常にシンプルで、正確な手順を守ることで信頼性の高い結果を得ることができます。
参考)https://clinical-diagnostics.biz.sdc.shimadzu.co.jp/products/05180/

 

基本的な操作手順:

  1. シャーレに試験紙を1枚入れ、滅菌水を少量(試験紙全体が湿る程度)滴下する
  2. 直ちにプラスチックエーゼまたはステック、木製ステックまたは楊枝で固形培地上の集落を取り、湿らせた試験紙に塗布する
  3. 1分以内に塗布部分が深青色を呈すれば陽性、変化しなければ陰性と判定する

判定基準の詳細:

  • 陽性反応:1分以内に塗布部分が深青色を呈する
  • 陰性反応:色の変化が見られない

この試験で使用される試薬は、TMPD(二塩酸テトラメチルパラフェニルジアミン)であり、人工的な電子供与体として機能します。TMPDから電子が引き抜かれて酸化されると、試薬の色が紫色に変化するメカニズムを利用しています。
島津ダイアグノスティクス製のチトクローム・オキシダーゼ試験用ろ紙(製品コード:05180)は、15枚入りパッケージで提供されており、2~10℃での冷蔵保存により製造後36ヵ月間の使用期限を有しています。
参考)https://industrial-diagnostics.biz.sdc.shimadzu.co.jp/products/05180/

 

チトクローム オキシダーゼ試験用ろ紙による品質管理と精度管理

チトクローム オキシダーゼ試験用ろ紙を用いた検査では、正確な結果を得るための品質管理が極めて重要です。特に、偽陽性や偽陰性反応を防ぐための注意点を理解し、適切な精度管理を実施する必要があります。
偽陽性反応を防ぐための重要な注意点:

  • 試験紙を湿らせる際に水道水を使用しない(鉄分による偽陽性を防ぐため)
  • ニクロム線製エーゼを使用しない(ニクロム線自身の酸化力による偽陽性を防ぐため)
  • 血液寒天培地上のコロニーでは検査を実施しない(血中の鉄分による偽陽性を防ぐため)

偽陰性反応を防ぐための配慮:

  • 糖を含む培地上のコロニーでの検査は偽陰性になる可能性があるため注意が必要
  • 判定は必ず10秒以内に実施し、それ以上の時間を経過させない

標準的な精度管理用試験菌株:
島津ダイアグノスティクス製品の精度管理には以下の標準菌株が推奨されています:

試験菌株 期待される性状
Pseudomonas aeruginosa +(陽性)
Vibrio parahaemolyticus +(陽性)
Aeromonas spp. +(陽性)
Salmonella Choleraesuis -(陰性)
Escherichia coli -(陰性)

初心者の検査担当者は、オキシダーゼ陽性のシュードモナスやビブリオなどを陽性コントロールとし、オキシダーゼ陰性の大腸菌を陰性コントロールとして同時に判定を行うことで、判定ミスを減らすことができます。
この反応はTMPDの酸化反応であるため、長期間放置すると空気中の酸素により自然に酸化反応が進行します。そのため、実験の判定時間は10秒できっちりと観察し、それ以上時間をかけると陰性の菌もうっすらと紫色に変化し、判定を誤る可能性があります。

チトクローム オキシダーゼ試験用ろ紙の適用範囲と臨床的意義

チトクローム オキシダーゼ試験用ろ紙は、特に腸内細菌科菌群の鑑別において重要な役割を果たし、食品衛生検査や臨床検査の分野で幅広く活用されています。この試験の臨床的意義を理解することは、適切な細菌同定を行う上で不可欠です。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jamt/70/4/70_21-32/_html/-char/en

 

主要な適用分野:

オキシダーゼ試験は、グラム陰性桿菌の鑑別において特に有用であり、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)の細菌は一般的にオキシダーゼ陰性を示すという特徴があります。一方、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)やビブリオ属菌などの非発酵グラム陰性桿菌の多くはオキシダーゼ陽性を示します。
サルモネラ属菌検査における標準的適用:
国立医薬品食品衛生研究所のサルモネラ属菌標準試験法(NIHSJ-01:2019)においても、チトクロームオキシダーゼ試験用ろ紙を用いたオキシダーゼ試験が標準的な鑑別試験として位置づけられています。菌を試験紙に塗布して1分間以内に深青色になれば陽性と判定する手順が明記されており、食品安全管理における重要な検査項目となっています。
参考)https://www.nihs.go.jp/fhm/mmef/pdf/protocol/NIHSJ-01_2019.pdf

 

市販製品の特徴:
現在市販されているチトクローム・オキシダーゼ試験用ろ紙は、島津ダイアグノスティクス製(製品コード:05180、JANコード:4987302051809)が代表的で、15枚入りで希望納入価格は1,000円程度となっています。製品サイズはW9cm×H2cm×D2cmとコンパクトで、実験室での保管にも適しています。
参考)https://as-kitchen.as-1.co.jp/shop/g/g65-9404-55/

 

使用前にすでに青色を呈している試験紙は使用できないため、開封前の品質確認が重要です。また、2~10℃での適切な冷蔵保存により、製造後36ヵ月間の長期保存が可能であり、検査室における効率的な在庫管理を実現しています。

チトクローム オキシダーゼ試験用ろ紙の保存方法と品質維持

チトクローム オキシダーゼ試験用ろ紙の品質を維持し、正確な検査結果を得るためには、適切な保存方法と取り扱いが重要です。試薬の安定性や保存条件を理解することで、検査の信頼性を長期間にわたって確保できます。
標準的な保存条件:

  • 保存温度:2~10℃の冷蔵保存
  • 使用期限:製造後36ヵ月間
  • 保存環境:冷暗所での保管が推奨
  • 包装形態:15枚入りパッケージでの密封保存

品質劣化の指標と対策:
使用前にすでに青色を呈している試験紙は、TMPDが自然酸化により変質している状態であり、正確な判定ができないため使用を避ける必要があります。これは保存条件が不適切であったり、使用期限を超過した場合に起こりやすい現象です。
試験紙の品質維持には、温度管理が特に重要であり、常温での長期保存は試薬の劣化を招く可能性があります。また、湿度の高い環境での保存も品質低下の原因となるため、密封された状態での冷蔵保存が必須です。

 

取り扱い上の注意点:

  • 使用直前まで冷蔵庫での保存を継続する
  • 必要な枚数のみを取り出し、残りは速やかに冷蔵保存に戻す
  • 結露を防ぐため、冷蔵庫から取り出した後は室温に慣らしてから使用する
  • 試験紙を湿らせる際は必ず滅菌水を使用し、水道水は避ける

コスト効率と在庫管理:
チトクローム・オキシダーゼ試験用ろ紙は1個(15枚入り)あたり約1,000円程度の価格設定となっており、36ヵ月という長い使用期限を活かした計画的な在庫管理が可能です。検査頻度に応じて適切な購入数量を決定することで、コスト効率と品質維持の両立を図ることができます。

チトクローム オキシダーゼ試験用ろ紙を用いた最新の検査技術と応用展開

チトクローム オキシダーゼ試験用ろ紙の基本的な使用法に加えて、近年では検査効率の向上や精度向上を目指した技術革新が進んでいます。特に、自動化技術との組み合わせや品質管理システムの高度化により、より信頼性の高い細菌検査が可能となっています。

 

デジタル化による判定精度の向上:
従来の目視による色判定に加えて、デジタル画像解析技術を活用した客観的な判定システムの導入が検討されています。これにより、検査者による判定のばらつきを最小限に抑え、より標準化された結果を得ることが可能となります。特に大量検体を処理する検査室において、この技術の導入効果は高いと考えられています。

 

多項目同時検査システムとの連携:
チトクローム オキシダーゼ試験は、他の生化学的性状試験と組み合わせることで、より包括的な細菌同定が可能です。API(Analytical Profile Index)システムやVITEK(VITEK)システムなどの自動細菌同定装置においても、オキシダーゼ反応は重要な判定項目の一つとして位置づけられています。

 

環境モニタリングへの応用:
食品加工施設や医療施設における環境モニタリングにおいて、チトクローム オキシダーゼ試験用ろ紙は迅速スクリーニング法として活用されています。特に、緑膿菌などの日和見感染菌の早期発見において重要な役割を果たしており、感染制御対策の一環として定期的な環境検査に組み込まれています。

 

分子生物学的手法との併用:
近年では、PCR(Polymerase Chain Reaction)法や次世代シーケンシング技術などの分子生物学的手法の普及により、細菌同定の精度と迅速性が大幅に向上しています。しかし、これらの高度な技術と従来のオキシダーゼ試験を併用することで、コスト効率と精度のバランスを取った検査体制を構築することが可能です。

 

国際標準化への対応:
ISO(International Organization for Standardization)やJIS(Japanese Industrial Standards)などの国際・国内規格において、オキシダーゼ試験は標準的な細菌鑑別法として位置づけられています。食品衛生検査指針(2004)においても参照されているように、公的な検査方法としての地位を確立しており、今後も検査の標準化において重要な役割を果たすと考えられます。
トレーサビリティと品質保証:
現代の検査室管理では、検査結果のトレーサビリティと品質保証が重要視されています。チトクローム オキシダーゼ試験用ろ紙についても、ロット管理や使用記録の徹底により、検査結果の信頼性を担保する体制が求められています。特に、医療機関や食品製造業において、検査データの信頼性は法的責任にも関わる重要な要素となっています。

 

これらの技術革新と標準化の進展により、チトクローム オキシダーゼ試験用ろ紙は今後も微生物検査分野において中核的な役割を担い続けることが期待されます。基本的な原理は変わらないものの、周辺技術の発達により、より効率的で信頼性の高い検査システムの構築が可能となっています。