シェーグレン症候群は、涙腺と唾液腺の機能低下を主症状とする自己免疫疾患です。この疾患の診断において、シルマーテストは眼科検査項目として極めて重要な位置を占めています。1999年に厚生省から発表された診断基準では、4項目のうち2項目以上が陽性であれば診断が確定され、その一つがシルマー試験を含む眼科検査です。
参考)http://www.nanyo-eye.com/06section77.html
患者の多くは中高年女性で、目の渇きや口の渇きといった乾燥症状が主訴となります。シルマーテストは、このような症状を客観的に評価する上で不可欠な検査法として位置づけられています。
シルマーテストには複数の検査法があり、それぞれ異なる目的で使用されています。
参考)https://www.ikeda-ganka.com/%E5%8C%BB%E7%99%82%E6%A9%9F%E5%99%A8-%E6%A4%9C%E6%9F%BB/%E3%82%B7%E3%83%AB%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%83%86%E3%82%B9%E3%83%88/
Ⅰ法(基本法)
・涙液貯留量と反射性分泌量を合わせて測定
・10mm以上を正常、5mm以下を異常と判定
・5~10mmはグレーゾーンとして扱われる
Ⅰ法変法(麻酔下測定)
・麻酔薬(ベノキシール)点眼後に測定
・反射性分泌を抑制し、涙液貯留量のみを評価
・患者負担が少なく、多くの医療機関で採用
Ⅱ法(刺激法)
・鼻腔粘膜を綿棒で刺激し、最大反射性分泌量を測定
・10mm以下を異常と判定
・より詳細な涙腺機能評価が可能
シェーグレン症候群の診断では、表面麻酔剤を使用せずにⅠ法で実施し、5mm以下を陽性(分泌量低下)と判定します。この基準は、涙液分泌能の低下を客観的に評価する上で信頼性の高い指標とされています。
参考)https://ss-info.jp/shindantotiryo/
シルマーテストの正確な実施には、適切な手技と環境管理が重要です。
参考)https://ss-info.jp/shindantotiryo/shindantotiryo02.html
検査手技のポイント 📋
・専用の濾紙を使用し、先端を5mm折り曲げる
・下まぶたと眼球の間に挟み込む
・5分間測定し、涙で濡れた長さを計測
・両眼同時に実施するのが一般的
環境管理と注意事項 🌡️
・室温や湿度が結果に影響するため一定に保つ
・エアコンの風が直接当たらない場所で実施
・検査前の点眼薬使用歴を確認
・コンタクトレンズは事前に外す
年齢による基準値の変化 👥
若年者では通常15mm以上の湿潤が見られますが、加齢とともに分泌量は減少します。高齢者の約33%は正常でも5分間で10mmしか湿らないため、年齢を考慮した判定が必要です。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%AB%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%83%86%E3%82%B9%E3%83%88
シェーグレン症候群患者では、5分間の測定で5mm未満という著明な低下を示すことが特徴的です。この所見は、自己免疫による涙腺破壊の程度を反映しており、診断における重要な根拠となります。
シェーグレン症候群の眼科検査では、シルマーテストと併用される他の検査法が診断精度を高めます。
ローズベンガル試験 🔴
・赤い色素を用いて角結膜上皮障害を評価
・乾燥により損傷を受けた部位が染色される
・シェーグレン症候群では高い陽性値を示す
蛍光色素検査(フルオレセイン試験) 💚
・蛍光色素で角結膜の状態を観察
・粘液が付いていない乾燥部位を検出
・細隙灯下での詳細な評価が可能
検査の組み合わせ効果 ⚡
シルマーテスト単独では診断感度に限界があるため、これらの染色検査との組み合わせが不可欠です。シェーグレン症候群では、涙液量の減少(シルマーテスト陽性)に加えて、角結膜上皮の点状損傷(染色試験陽性)が特徴的に観察されます。
この複合的な評価により、単なるドライアイとシェーグレン症候群による重篤な眼乾燥症を鑑別することが可能になります。
シルマーテストは診断だけでなく、治療効果の判定や病状モニタリングにも活用されています。
治療効果の評価指標 📊
・治療前後の涙液分泌量変化を数値化
・ステロイド治療や免疫抑制剤の効果判定
・人工涙液や涙点プラグの治療効果確認
継時的モニタリング ⏰
シェーグレン症候群は進行性疾患のため、定期的なシルマーテスト実施により病状の変化を把握できます。特に以下の点で有用です。
・涙腺機能の経時的変化の評価
・治療法変更のタイミング判断
・合併症発症の早期発見
重症度分類への応用 📈
シルマーテストの結果は、シェーグレン症候群の重症度分類にも使用されます。5mm以下を軽度、3mm以下を中等度、1mm以下を重度として分類することで、適切な治療戦略の選択が可能になります。
近年の研究により、シルマーテストの限界と改良点が明らかになってきています。
検査精度向上の取り組み 🔬
従来のシルマーテストに加え、涙液浸透圧測定や涙液中炎症マーカーの測定が注目されています。これらの新しい指標により、より早期かつ正確な診断が期待されています。
個別化医療への展開 🎯
患者の年齢、性別、併存疾患を考慮した個別化されたシルマーテスト基準値の設定が検討されています。特に高齢者における正常範囲の再検討が重要な課題となっています。
非侵襲的検査法の開発 💡
涙液メニスカス高さの光学的測定や、涙膜動態解析装置など、より患者負担の少ない検査法の開発が進んでいます。これらの技術により、シルマーテストの補完的役割が期待されています。
AI診断支援システム 🤖
画像解析技術を活用したAI診断支援システムの開発により、シルマーテスト結果の客観的評価と診断精度の向上が図られています。
シルマーテストは、シェーグレン症候群診断における基本的かつ重要な検査法として、今後も進歩する医療技術とともに発展していくことが予想されます。医療従事者は、これらの最新知見を踏まえながら、患者一人一人に最適な診断と治療を提供することが求められています。
厚生労働省指定難病情報センターによるシェーグレン症候群の詳細な診断基準と治療指針
シェーグレン症候群情報サイトによる最新の診断方法と治療選択肢の解説