パルモディア(ペマフィブラート)は、重篤な肝障害を有する患者に対して絶対禁忌とされています。特にChild-Pugh分類B又はCの肝硬変患者、胆道閉塞のある患者では、肝障害の悪化リスクが極めて高くなります。
肝機能が低下している患者では、パルモディアの血漿中濃度が上昇するおそれがあり、これにより副作用のリスクが増大します。肝臓での代謝能力が低下しているため、薬物の蓄積が起こりやすくなるのです。
Child-Pugh分類Aの軽度肝硬変患者においても、慎重投与が必要とされており、必要に応じて減量を考慮する必要があります。肝機能検査値の異常変動が現れる可能性があるため、定期的な監視が不可欠です。
胆石を有する患者に対するパルモディアの投与は禁忌とされています。これは、フィブラート系薬剤の使用により胆石形成が促進される可能性があるためです。
胆石形成のメカニズムとして、フィブラート系薬剤がコレステロール胆汁酸の分泌を増加させ、胆汁中のコレステロール濃度を上昇させることが知られています。既に胆石を有する患者では、この作用により症状の悪化や胆石の増大が起こる可能性があります。
胆石の有無については、投与前に必ず超音波検査やCT検査による確認が必要です。特に高脂血症患者では胆石の合併率が高いため、慎重なスクリーニングが求められます。
妊婦又は妊娠している可能性のある女性に対するパルモディアの投与は禁忌です。これは胎児への影響が懸念されるためで、妊娠可能年齢の女性には投与前に妊娠検査の実施が推奨されます。
授乳婦に対しては、授乳を中止することが望ましいとされています。動物実験(ラット)において乳汁中への移行が確認されており、乳児への影響が懸念されるためです。
妊娠を希望する女性患者では、パルモディア以外の治療選択肢を検討する必要があります。スタチン系薬剤も妊娠中は禁忌のため、食事療法や運動療法を中心とした非薬物療法が重要になります。
2022年に重要な改訂が行われ、従来禁忌とされていた「血清クレアチニン値が2.5mg/dL以上又はクレアチニンクリアランスが40mL/min未満の腎機能障害患者」への禁忌が削除されました。
この改訂は、高度腎機能障害患者を対象としたPALT02試験の結果に基づいています。試験では、高度腎機能障害患者でのペマフィブラートの曝露量が、腎機能障害の程度がより軽い患者と比較して高くないことが確認されました。
現在の基準では、eGFRが30mL/min/1.73m²未満の腎機能障害患者に対して慎重投与が推奨されています。横紋筋融解症のリスクがあるため、定期的な腎機能検査とCK値の監視が必要です。
パルモディアには重要な併用禁忌薬剤が存在し、特にシクロスポリンとリファンピシンとの併用は絶対禁忌です。これらの薬剤との併用により、パルモディアの血中濃度が著しく上昇し、重篤な副作用のリスクが高まります。
シクロスポリンとの併用では、血中濃度が通常の2~3倍まで上昇することが報告されています。これにより重篤な腎機能障害や肝機能障害を引き起こすリスクが15-20%まで上昇します。
リファンピシンは肝薬物代謝酵素を誘導する作用があり、パルモディアの代謝に影響を与えます。併用により予期しない血中濃度の変動が起こる可能性があるため、絶対に避けなければなりません。
その他のフィブラート系薬剤との併用も注意が必要で、横紋筋融解症の発症率が単独使用時の0.1%から0.5%まで上昇することが確認されています。
パルモディアの適正使用には、これらの禁忌疾患と併用禁忌薬剤の理解が不可欠です。患者の安全を確保するため、投与前の十分な評価と継続的な監視が求められます。
厚生労働省による使用上の注意改訂について詳細な情報
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001010378.pdf
PMDA による禁忌改訂の詳細資料
https://www.pmda.go.jp/files/000248356.pdf