メタボリックシンドロームの診断基準は、2005年に日本内科学会をはじめとする8つの医学系学会が合同で策定した基準が、2025年現在でも使用されています 。
参考)メタボリックシンドロームの診断基準 
診断の必須項目として、ウエスト周囲径が男性で85cm以上、女性で90cm以上であることが求められます 。この基準値は、内臓脂肪面積100cm²に相当する値として設定されており、CT検査による内臓脂肪量測定が最も正確な評価方法とされています 。
参考)2025年はメタボリックシンドローム診断基準策定20年。 【…
選択項目として、以下の3つの危険因子のうち2項目以上が基準値を超えている場合にメタボリックシンドロームと診断されます :
参考)メタボの診断基準と予防・改善のための食事と運動のポイントを解…
2025年はメタボリックシンドローム診断基準策定から20年の節目の年となり、その重要性が改めて注目されています 。
参考)2025年はメタボリックシンドローム診断基準策定20年。 【…
メタボリックシンドロームの診断において、腹囲測定は内臓脂肪蓄積の指標として最も重要な項目です。正確な測定のためには、おなかに力を入れず息を吐ききったタイミングで、へその周囲を水平に測定することが推奨されています 。
参考)メタボと判定される腹囲とは?正しい測り方やその他の診断基準も…
内臓脂肪面積の正確な測定には、CT検査が最も有効とされています。CT装置でへその周りの断面像を撮影し、専用ソフトウェアで解析することで、内臓脂肪面積を計算します 。この検査では「内臓脂肪は赤色」「皮下脂肪は青色」で表示され、検査時間は約3分程度と短時間で実施可能です 。
参考)内臓脂肪面積測定 
血液検査項目については、空腹時血糖値、HbA1c、中性脂肪、HDLコレステロール、血圧測定が必要となります。特に血糖値については、空腹時血糖100mg/dL以上またはHbA1c 5.6%以上(NGSP値)を基準とする特定保健指導と、空腹時血糖110mg/dL以上を基準とするメタボリックシンドローム診断では若干基準が異なることに注意が必要です 。
参考)https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12401000-Hokenkyoku-Soumuka/0000099071.pdf
メタボリックシンドロームと診断された患者では、心血管疾患の発症リスクが著しく増大することが複数の疫学研究で明らかになっています。端野・壮瞥町研究では、メタボリックシンドローム群は非メタボリックシンドローム群と比較して、男性で1.9倍、女性で2.31倍の心血管疾患発症リスクを示しました 。
参考)https://www.jcc.gr.jp/journal/backnumber/bk_jjc/pdf/J053-1.pdf
メタボリックシンドロームにおける心血管リスクの増大は、単一の危険因子による影響ではなく、複数の代謝異常が相互に作用することで生じる相乗効果によるものです 。糖尿病の発症リスクは3~5倍、心疾患のリスクは2~3倍に跳ね上がるという報告もあり、早期の診断と介入の重要性が強調されています 。
参考)メタボリックシンドローム 
動脈硬化の進行により、心筋梗塞や脳梗塞といった重篤な心血管イベントの発症率も非メタボリックシンドローム群と比較して非常に高くなることが、Botnia Studyなどの大規模コホート研究で確認されています 。このため、メタボリックシンドロームの診断は、単なる肥満の判定ではなく、将来の心血管病予防を目的とした重要な医学的評価として位置づけられています 。
参考)メディアワークショップ 
特定健康診査(メタボ健診)は、メタボリックシンドロームのリスク評価を目的として40~74歳の保険加入者を対象に実施されています 。特定健康診査の診断基準とメタボリックシンドロームの診断基準には若干の違いがあり、血糖値の基準値設定などで差異が見られます 。
参考)堺市国民健康保険特定健康診査・特定保健指導 堺市
特定保健指導では、内臓脂肪型肥満の判定として、腹囲が男性85cm以上・女性90cm以上の「内臓脂肪型肥満A」と、腹囲が基準値未満でもBMI25以上の「内臓脂肪型肥満B」の2つのカテゴリーに分類されます 。
参考)健診後の保健指導・健康相談 
追加リスクとして、血糖(空腹時血糖100mg/dL以上またはHbA1c 5.6%以上)、脂質(中性脂肪150mg/dL以上またはHDLコレステロール40mg/dL未満)、血圧(収縮期130mmHg以上または拡張期85mmHg以上)、喫煙歴(他のリスクが1つでもある場合)がカウントされ、リスク数に応じて「動機付け支援」と「積極的支援」の2つのタイプの保健指導が提供されます 。
参考)特定保健指導の詳細
メタボリックシンドロームの治療における根本的なアプローチは、蓄積した内臓脂肪の減少を目標とした生活習慣の包括的な改善です。治療の3本柱として、食事療法、運動療法、行動変容が挙げられ、これらを組み合わせた総合的な介入が推奨されています 。
参考)メタボリックシンドロームの治療
食事療法では、適正なエネルギー摂取量の設定が基本となり、脂肪摂取を総エネルギーの25%以下に制限し、単純糖質と塩分・アルコールの制限、食物繊維と抗酸化物質の積極的な摂取が重要です 。特に日本の伝統的な食事パターンである米飯、魚、野菜、大豆を意識した食事が、メタボリックシンドローム治療に有効とされています 。
参考)メタボリックシンドロームの治療法
運動療法については、ややきつめの有酸素運動を1回30~60分、週2~5回実施することが基本方針となります 。「ややきつめ」の運動強度は、汗をかくが会話ができる程度で、全力の40~60%程度に相当します。ウォーキング、ジョギング、サイクリングなどの有酸素運動に加えて、日常生活での「意識していない運動」として、立位作業の増加や階段利用も推奨されています 。
体重減少の目標は月1~2kgの緩やかなペースが適切で、1年後にも体重減少が維持されていることが重要です 。食事療法と運動療法は異なる機序で代謝改善に寄与するため、両者を組み合わせた治療アプローチが最も効果的とされています 。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspfsm/61/1/61_1_37/_pdf