診断時には既に透析導入となる症例が半数を超えます。
関連)https://www.ncvc.go.jp/hospital/section/ld/hypertension/detail11-2/

抗GBM抗体が陽性となる疾患の正式名称は「抗糸球体基底膜抗体病(抗GBM病)」です。この病名は抗GBM抗体が病因となる血管炎の総称として使われています。
関連)https://www.vas-mhlw.org/kaisetsu-iryo/3-2-3/
日本では、肺出血と急速進行性糸球体腎炎(RPGN)の両方が生じた場合を「グッドパスチャー症候群(Goodpasture syndrome)」と呼び、腎炎のみの場合は「抗GBM抗体型腎炎」と区別することが一般的です。つまり、同じ抗GBM抗体が原因でも、肺病変の有無で病名が変わります。
関連)https://www.shouman.jp/disease/details/02_02_012/
この疾患は1919年にGoodpastureによって初めて報告されたため、その名がつきました。グッドパスチャー症候群では肺と腎臓の両方に重篤な症状が現れますが、約10~20%は腎炎のみ、約10%は肺疾患のみが単独で発生することもあります。病変の組み合わせによって呼び方が異なる点を理解しておくことが重要です。
抗GBM抗体は糸球体基底膜(GBM)の構成成分であるⅣ型コラーゲンα3鎖のNC1ドメインを主な抗原として認識します。この自己抗体が産生されることで、腎臓の糸球体と肺胞の基底膜が攻撃を受けます。
関連)https://kobe-kishida-clinic.com/respiratory-system/respiratory-disease/goodpasture-syndrome/
肺にはGBMと共通する抗原が存在するため、抗GBM抗体病は肺と腎の両方に病変を生じる可能性があります。具体的には、腎臓では壊死性半月体形成性糸球体腎炎が起こり、肺では肺胞出血が生じます。これらの病変は自己免疫異常により本来外敵から身を守るはずの免疫システムが自分自身の組織を攻撃してしまう状態です。
関連)https://www.vas-mhlw.org/kaisetsu-iryo/3-2-3/
病態の進行は非常に急速かつ重篤であるため、早期の抗GBM抗体の除去が重要です。遺伝的素因として特定のHLA型との関連も報告されており、これらが自己免疫反応の誘発に寄与している可能性があります。発症メカニズムの完全な解明には至っていませんが、環境要因と遺伝的背景の相互作用が考えられています。
関連)https://www.apheresis-jp.org/download?file_id=226099
抗GBM腎炎の確定診断には以下の要件が必要です。血尿(多くは顕微鏡的血尿、稀に肉眼的血尿)、蛋白尿、円柱尿などの腎炎性尿所見を認めること、血清抗GBM抗体が陽性であること、腎生検で糸球体係蹄壁に沿った線状の免疫グロブリンの沈着と壊死性半月体形成性糸球体腎炎を認めることのうち、1つ目と2つ目、または1つ目と3つ目を満たす場合に診断されます。
関連)https://www.vas-mhlw.org/kaisetsu-iryo/3-2-3/
血液検査では抗GBM抗体の測定が中核となります。検査方法は化学発光酵素免疫測定法(CLEIA)や蛍光酵素免疫測定法(FEIA)が用いられ、診断または治療方針の決定を目的として保険適用で実施できます。
関連)https://primary-care.sysmex.co.jp/speed-search/detail.php?pk=390
腎生検は確定診断に必須です。これにより糸球体基底膜に沿った特徴的な線状の免疫グロブリン沈着パターンを確認できます。原因不明の腎機能障害や好酸球増多を認めた場合には血管炎も疑い、MPO-ANCA、PR3-ANCAなどの測定も併せて行います。これらの検査を迅速に実施することで、他の急速進行性腎炎との鑑別が可能になります。
関連)https://www.miyake-naika.or.jp/18_sougou/sougou_kekkanen.html
抗GBM抗体病では、ほぼ全例で血尿が認められます。肉眼的血尿を自覚することもありますが、多くは顕微鏡的血尿です。腎症状としては急速進行性糸球体腎炎(RPGN)を呈し、数週間から数か月で急速に腎不全へ移行します。
関連)https://dl.ndl.go.jp/view/prepareDownload?itemId=info%3Andljp%2Fpid%2F10557412&contentNo=1
肺症状を伴うグッドパスチャー症候群では、呼吸困難、咳嗽、疲労、喀血が主な症状です。肺胞出血は生命予後に関わる重篤な症状であり、早期の治療介入が欠かせません。全身症状として、発熱、体重減少、倦怠感、関節痛、筋肉痛などの非特異的な症状も出現します。
関連)https://kobe-kishida-clinic.com/respiratory-system/respiratory-disease/goodpasture-syndrome/
発症前には上気道感染などの先行感染が認められることがあります。発症すると全身倦怠感や微熱、食欲不振、さらに短期間での体重減少などが現れますが、これらは他の疾患でもみられるため、頸椎疾患や腰椎疾患などと誤診されやすい点に注意が必要です。診断時にはすでに腎不全が進行していることが多く、透析導入になる症例も少なくありません。
関連)https://dl.ndl.go.jp/view/prepareDownload?itemId=info%3Andljp%2Fpid%2F10557412&contentNo=1
治療の中心は血漿交換療法(PE)、副腎皮質ステロイド薬、免疫抑制薬(シクロフォスファミド)の併用です。抗GBM抗体が直接的な病因物質であるため、血漿交換による抗体の除去が有効であり、生命予後改善と腎予後改善の両面から推奨されます。
関連)https://www.apheresis-jp.org/143275.html
非透析依存の腎障害や肺胞出血においては、血漿交換を極力早期に開始することが重要です。肺胞出血を伴う場合には生命の危険を伴うため、早期に治療を開始する必要があります。治療開始時の腎機能や透析依存の有無が予後を大きく左右するため、迅速な診断と治療介入が求められます。
関連)https://www.apheresis-jp.org/143275.html
近年の報告では、新規治療法として抗CD20キメラ化モノクローナル抗体の有効性が示されつつあります。propensity score matchingを用いた解析では、開始6カ月後で90%超の寛解が得られ、生命予後、腎予後、再発のいずれも従来標準治療より優れていたとされています。ただし、グッドパスチャー症候群の6カ月生存率は66.7%という報告もあり、生命予後は必ずしも良好ではありません。急激な経過をたどることが多く、不可逆的な臓器障害をきたさないためには早期診断・早期治療が極めて重要です。
関連)https://www.aichi-med-u.ac.jp/hospital/pages/antigbm_jin.html
参考リンク(厚生労働省 難病情報センターによる抗GBM病の詳細な解説)。
抗糸球体基底膜抗体病(抗GBM病)
参考リンク(日本アフェレシス学会による血漿交換療法の適応と実施方法)。
腎疾患領域:抗GBM型RPGN
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