骨粗鬆症治療薬は、その作用機序によって大きく4つのカテゴリーに分類されます。それぞれの薬剤が骨代謝のどの部分に作用するかを理解することで、治療方針の理解が深まります。
骨は常に古い骨が壊される「骨吸収」と新しい骨が作られる「骨形成」のバランスによって維持されています。加齢や閉経などにより、このバランスが崩れると骨粗鬆症が生じます。各種治療薬は、このバランスを正常化させることで骨密度を維持・増加させ、骨折リスクを低減します。
特に注目すべきは、治療薬を選択する際には患者さんの骨代謝状態を評価することが重要です。骨代謝マーカー検査を定期的に行い、骨吸収と骨形成のどちらの異常が主体であるかを見極めることで、より効果的な治療薬の選択が可能になります。
骨吸収抑制剤は、骨粗鬆症治療薬の中でも最も広く使用されているカテゴリーであり、多様な種類があります。それぞれの特徴と効果的な使用方法を詳しく見ていきましょう。
① ビスホスホネート系製剤
ビスホスホネート系製剤は骨粗鬆症治療の第一選択薬として広く使用されています。
最新の研究では、ゾレドロン酸による治療が他の骨吸収抑制剤と比較して死亡率低下により大きく貢献する可能性が示されています。台湾における大規模研究では、骨折後の患者においてゾレドロン酸治療が最も死亡率を低下させる傾向が確認されました。
② RANKL阻害剤(デノスマブ)
デノスマブはビスホスホネート系製剤と同様に強力な骨吸収抑制作用を持ちますが、作用機序が異なります。
③ SERM(選択的エストロゲン受容体モジュレーター)
SERMは閉経後の女性に対して骨に対してはエストロゲン様作用を示し、一方で乳房や子宮には抗エストロゲン作用を示す薬剤です。
④ カルシトニン製剤
カルシトニン製剤は現在、骨密度を上げる目的よりも骨粗鬆症による疼痛緩和の目的で使用されることが多くなっています。
それぞれの骨吸収抑制剤の使い分けは、患者の年齢、骨折リスク、併存疾患、薬剤コンプライアンス、副作用プロファイルなどを考慮して行います。特に高齢者や多剤服用中の患者では、服薬管理の容易さを考慮して注射製剤が選択されることも多いです。
骨形成促進剤は、骨密度を積極的に増加させることができる強力な骨粗鬆症治療薬です。特に既存骨折がある、または骨折リスクが高い重度の骨粗鬆症患者に適しています。最新の治療オプションと効果について解説します。
① テリパラチド製剤
テリパラチドは副甲状腺ホルモン(PTH)をベースにした製剤で、間欠的に投与することで骨形成を促進します。
② ロモソズマブ
ロモソズマブは、2019年に日本で承認された比較的新しい骨粗鬆症治療薬で、骨形成促進と骨吸収抑制の両方の作用を持つユニークな製剤です。