ジュリナプレマリン違い医療従事者向けエストロゲン製剤比較

ジュリナとプレマリンは共にエストロゲン製剤として使用されますが、その成分構成や臨床効果には重要な違いがあります。医療従事者として知っておくべき各製剤の特徴と適応を詳しく解説。どちらを選択すべきでしょうか?

ジュリナプレマリン違いエストロゲン製剤

エストロゲン製剤の基本比較
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ジュリナ(純粋エストラジオール)

卵巣から分泌される天然型エストラジオールそのものの製剤

🐎
プレマリン(結合型エストロゲン)

妊馬尿から抽出した約10種類のエストロゲン様物質の合剤

⚖️
臨床的位置づけ

適応症の範囲と治療効果に明確な差異が存在

ジュリナプレマリン成分構成の本質的違い

ジュリナとプレマリンの最も重要な違いは、その成分構成にあります。ジュリナ(エストラジオール製剤)は純粋な17β-エストラジオールを含有する製剤です。これは卵巣から自然に分泌されるエストラジオールと同じ化学構造を持つ天然型製剤として位置づけられます。
参考)https://www.fuyukilc.or.jp/column/%E5%BD%93%E9%99%A2%E3%81%A7%E3%83%9B%E3%83%AB%E3%83%A2%E3%83%B3%E7%99%82%E6%B3%95%E3%81%AB%E7%94%A8%E3%81%84%E3%82%8B%E4%B8%BB%E3%81%AA%E8%96%AC%E5%89%A4%EF%BC%881%EF%BC%89%EF%BD%9E%E5%8D%B5%E8%83%9E/

 

一方、プレマリン(結合型エストロゲン製剤)は妊馬尿から抽出・精製して得られる製剤で、エストロンやエクイリンなど約10種類のエストロゲン様物質の合剤です。プレマリンは純粋なエストラジオール製剤ではなく、内服中の血中エストラジオール濃度は測定系の影響もあり実際よりも高めの値を示すことが知られています。
参考)https://www.shimodaira-ladies.com/gynecology/menopausaldisorde

 

特筆すべきは、プレマリンが「エストラジオールそのものではなく、エストラジオールに似た作用を持つ複合製剤」である点です。医療従事者にとって、これらの本質的違いを理解することは適切な薬剤選択の基盤となります。
参考)https://ameblo.jp/po4ku3chi2/entry-12843648421.html

 

臨床データ比較

ジュリナプレマリン適応症範囲の相違

適応症の範囲において、ジュリナとプレマリンには明確な違いが存在します。プレマリンは卵巣機能不全症、機能性子宮出血等の適応があり、若年層への使用における主要な位置づけを持っています。
参考)http://www.jaog.or.jp/wp/wp-content/uploads/2017/01/2015.10.14.pdf

 

プレマリンの主要な適応症。

  • 卵巣機能不全症
  • 機能性子宮出血
  • 更年期障害
  • カウフマン療法での使用

当院でプレマリンを使用する主な治療法として、第2度無月経に対するカウフマン療法があります。具体的には、消退出血7日目頃から「プレマリン1錠/日」を7日間服用し、続けてエストロゲン・プロゲスチン配合剤と併用する方法が用いられています。
一方、ジュリナは主にホルモン補充療法(HRT)として使用されており、更年期障害及び卵巣欠落症状に伴う血管運動神経症状の改善が主たる適応となります。
参考)https://jspe.umin.jp/medical/files/turner_guide.pdf

 

ジュリナプレマリン薬価と処方実態の比較

薬価面での違いは医療経済的観点から重要な検討要素です。ジュリナの薬価は1錠あたり63.70円である一方、プレマリンは12.30円となっており、約5倍の価格差が存在します。
この価格差により、長期間の治療を要する患者においては薬剤費負担が大きく増加することが予想されます。特に、ホルモン補充療法は数年にわたる継続治療が必要な場合が多いため、患者の経済的負担を考慮した薬剤選択が重要となります。

 

処方時の考慮点:

  • 治療期間の長さ
  • 患者の経済的状況
  • 保険適応の範囲
  • 治療効果と費用対効果のバランス

現在の臨床現場では、「大昔は、今のように、エストラジオールの薬がなかったので、プレマリンは、よく使われていました。安価でもある為、使いやすい事もありましたが、現在では、ジュリナなどのE2の薬があります」という変遷が指摘されています。

ジュリナプレマリン肝代謝と血栓リスクの相違

経口エストロゲン製剤として、ジュリナとプレマリンは共に肝臓で代謝を受けますが、その影響の程度には差があります。エストラジオール製剤(ジュリナ)の方が結合型エストロゲン製剤(プレマリン)に比べて脂質代謝や血管炎症マーカーに対する影響が少ないことが報告されています。
臨床的考慮事項:

  • 中性脂肪が高い症例:エストラジオール製剤が望ましい
  • BMI25を超えている場合:エストラジオール製剤が推奨
  • 胆石症併発症例:プレマリンよりもジュリナが望ましい

低用量ピルとの比較において興味深いデータがあります。低用量ピル1錠中の女性ホルモン活性はプレマリンに換算すると6錠に相当し、更年期障害治療でのプレマリン1日1錠使用量と比較すると、HRTで補充するホルモン量は低用量ピル1日量の約1/6程度となります。
参考)https://mirrazatsurukamekai.jp/blog/20211001.html

 

また、血栓塞栓症リスクの観点から、近年の国際ガイドラインでは「効果のある最低量から開始し、必要に応じて増量すべき」とされており、推奨用量としてはCEE(プレマリンなど)では0.3-0.45mg、17β-エストラジオール経口剤では0.5-1.0mgが推奨されています。

ジュリナプレマリン将来的治療戦略における位置づけ

現代の生殖医療と更年期治療において、ジュリナとプレマリンの選択は単なる薬剤変更を超えた治療戦略の転換を意味します。特に、体外受精などの生殖補助医療における内膜準備においては、「妊娠・出産には、卵巣から分泌されるホルモンと同じく、エストラジオールがより良い」とされ、「プレマリンは、移植周期での使用は、主流ではなくなりました」という変化が起きています。
治療領域別の選択指針:

治療領域 プレマリン ジュリナ
思春期治療 ◎主要薬剤 △適応制限あり
カウフマン療法 第一選択 △使用頻度低
更年期HRT ○従来使用 ◎現在推奨
生殖医療 △主流でない ◎推奨薬剤

この選択の背景には、天然型エストラジオールの生物学的優位性があります。卵胞が育って卵巣から分泌されるエストラジオールと同じ化学構造を持つジュリナは、より生理的なホルモン環境の再現が可能となります。
しかし、プレマリンの価値も依然として認められており、「決して、プレマリン自体が悪い訳ではなく、妊娠・出産以外での、何らかの治療の時には、値段も安く、良い薬の1つだと思います」という評価が適切でしょう。
医療従事者として重要なのは、各製剤の特性を理解し、患者の病態、治療目標、経済的状況を総合的に判断した上で、最適な薬剤選択を行うことです。今後も両製剤の適切な使い分けが求められる状況が続くものと考えられます。

 

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