グロブリン製剤は「どれを使っても同じ」と思うと、思わぬ適応外投与になります。

グロブリン製剤を一覧で整理すると、まず「投与経路」によって大きく4つのカテゴリーに分かれます。この分類を把握せずに処方・調剤を行うと、投与経路の誤りや適応外使用につながるため、最初に確認しておく必要があります。
① 筋注用免疫グロブリン製剤は、免疫グロブリン(IgG)をほぼそのまま製剤化した最も歴史の古いタイプです。代表的な製品として「グロブリン筋注1500mg/10mL「JB」」「ガンマグロブリン筋注「タケダ」」などがあります。筋肉注射のため局所疼痛が生じやすく、大量投与が不可能で速効性にも欠けるという制約があります。現在は主に麻疹(はしか)やA型肝炎の発症予防など、限られた場面での使用に留まっています。
② 静注用免疫グロブリン製剤(IVIG)は、現在最も多く使用されているカテゴリーです。凝集体を除去または補体活性化を抑える処理を加えることで、静脈注射を可能にしています。製剤の処理法は製品ごとに異なり、代表的なものを以下にまとめます。
| 製品名 | 製造販売元 | 処理法 | 濃度 |
|--------|------------|--------|------|
| 献血ヴェノグロブリンIH 5%・10%静注 | 日本血液製剤機構 | ポリエチレングリコール処理 | 5%/10% |
| 献血グロベニン-I静注用 | 武田薬品 | ポリエチレングリコール処理 | 5% |
| 献血ベニロン-I静注用 | KMバイオロジクス | 乾燥スルホ化処理 | 5% |
| 献血ポリグロビンN 10%静注 | 日本血液製剤機構 | pH4処理(酸性) | 10% |
| ピリヴィジェン10%点滴静注 | CSLベーリング | pH4処理(酸性) | 10% |
処理法の違いによって、配合変化の可否も異なります。たとえば献血ヴェノグロブリンIHはNa含有量が非常に低く(約0.1 mEq/L)ヘパリン製剤との配合変化があり単独投与が基本です。一方、献血グロベニン-Iや献血ベニロン-Iは154〜171 mEq/LのNaを含みヘパリンとの配合が可能なケースもあります(メーカー回答)。つまり銘柄によって混注の可否が異なるということです。
③ 皮下注用免疫グロブリン製剤(SCIG)は、比較的新しい投与形態です。代表製品は「ハイゼントラ20%皮下注」(CSLベーリング)で、徐々に皮下から吸収されるため血中グロブリン値が安定し、急激な濃度上昇に起因する全身副作用が少ない点が特長です。在宅自己投与が可能で、患者のQOL向上に直結します。
④ 特殊免疫(高度免疫)グロブリン製剤は、特定の抗体を高濃度に含む製剤です。抗体価の高い献血者から採取した血漿を原料とする点が通常製剤と異なります。現在、医療現場で使用されている特殊免疫グロブリン製剤は3種類が中心です。
基本分類が原則です。この4区分を整理するだけで、現場での製剤選択の精度は大きく上がります。
参考:グロブリン製剤の分類・種類について(日本血液製剤協会)
http://www.ketsukyo.or.jp/plasma/globulin/glo_05.html
静注用グロブリン製剤は「どの銘柄も同じ疾患に使える」と思いがちです。しかし実際には、製品ごとに保険適応として承認されている疾患が異なります。これは意外ですね。
すべての静注用IVIG製剤が共通して保険適応を持つのは、「無または低ガンマグロブリン血症」と「重症感染症における抗生物質との併用」の2疾患のみです。それ以外の疾患については、製品によって承認の有無が異なります。
愛媛大学医学部附属病院薬剤部が公開している院内フォーミュラリー資料(2020年改訂版)をもとに、主要な適応症の対応をまとめると以下の通りです。
| 疾患 | ヴェノグロブリンIH | グロベニン-I | ベニロン-I | ポリグロビンN | ピリヴィジェン |
|------|:-----------------:|:-----------:|:---------:|:------------:|:-------------:|
| ITP(特発性血小板減少性紫斑病) | ✅ | ✅ | ✅ | ✅ | ✅ |
| 川崎病急性期 | ✅ | ✅ | ✅ | ✅ | ✅ |
| CIDP(筋力低下の改善) | ✅ | ✅ | ✅ | ✅ | ✅ |
| CIDP(運動機能低下の進行抑制) | ✅ | ✅ | ✅ | ✅ | ✅ |
| ギラン・バレー症候群 | ✅ | ✅ | ✅ | ✅ | ✅ |
| 多発性筋炎・皮膚筋炎 | ✅ | ✅ | ✅ | ✅ | ✅ |
| 全身型重症筋無力症 | ✅ | ✅ | — | — | — |
| 天疱瘡 | ✅ | ✅ | — | — | — |
| 水疱性類天疱瘡 | ✅ | ✅ | — | — | ✅ |
| スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)・TEN | ✅ | ✅ | — | — | — |
| 抗ドナー抗体陽性腎移植(術前脱感作) | ✅ | ✅ | — | — | — |
| 視神経炎急性期 | ✅ | ✅ | — | — | — |
この一覧から明らかなように、全身型重症筋無力症・天疱瘡・SJS/TENなどでは、献血ヴェノグロブリンIHや献血グロベニン-Iにしか保険適応がない疾患が存在します。献血ベニロン-Iや献血ポリグロビンNでは、これらの疾患に投与しても保険請求が通らない場合があります。院内フォーミュラリーで献血ベニロン-Iのみ採用している施設では、疾患によっては採用外銘柄の取り寄せが必要になります。これは現場に直結する話ですね。
また、CIDP(慢性炎症性脱髄性多発根神経炎)については「筋力低下の改善(導入療法)」と「運動機能低下の進行抑制(維持療法)」が別々の適応として承認されています。維持療法にはハイゼントラ(皮下注製剤)が唯一の選択肢として承認されており、静注用製剤のみの採用施設では対応できない場合があります。製剤ラインナップの確認が必須です。
参考:当院採用のγ-グロブリン製剤一覧(改訂版)/愛媛大学医学部附属病院薬剤部
https://www.hsp.ehime-u.ac.jp/medicine/wp-content/uploads/202003-1DInews.pdf
グロブリン製剤は「添付文書どおりに投与すれば問題ない」という認識は危険です。疾患によって用量・投与日数・投与速度がまったく異なり、同じ患者に同じ薬を使っていても、疾患が変われば投与量が数倍以上変わることがあります。
代表的な適応疾患における用量の違いは以下の通りです(献血ヴェノグロブリンIH添付文書をベースに整理)。
川崎病の2,000 mg/kg体重という単回大量投与は特に注意が必要です。体重20 kgの子どもなら40 gのグロブリン製剤を1日で投与することになります。これは5%製剤800 mLに相当し、容量負荷が大きく、心不全リスクのある患者では特別な注意が求められます。おおむね12〜24時間かけてゆっくり投与することが推奨されています。
投与速度についても注意が欠かせません。初日の投与開始後1時間は0.01 mL/kg/分という低速で始め、副作用がなければ徐々に速度を上げていくことが多くの添付文書で求められています。速度を上げた直後にショックや過敏反応が起こりやすいため、速度変更後は患者観察を強化することが原則です。
ITPでは「投与後7日前後に血小板増加のピーク」があり、その効果は一時的で1ヵ月以内に投与前値に戻ります。つまりITPへの投与は根治目的ではなく、手術・分娩前など「一時的な止血管理」が必要な場面に絞られます。この点を患者や家族に説明しておかないと、「血小板が下がった、また投与してほしい」という無制限な要求につながります。用量設計の理解が条件です。
グロブリン製剤は「安全な製剤」というイメージを持つ医療従事者は少なくありません。しかし添付文書には複数の重大副作用が記載されており、投与前・投与中・投与後にわたる管理が求められます。
リスク① 血栓塞栓症
大量投与によって血液粘稠度が上昇し、脳梗塞・肺塞栓・心筋梗塞などの血栓塞栓症を引き起こすおそれがあります。特に高齢者・肥満・糖尿病・脂質異常症・高血圧のある患者は、もともと血液粘稠度が高くリスクが高まります。投与量と投与速度を必要最小限に抑えることが重要です。腎移植術前脱感作など高用量が必要な場面では、特別な警戒が必要です。
リスク② 急性腎障害(AKI)
急性腎障害は重大副作用として添付文書に明記されています。投与前に患者が脱水状態にないことを確認することが義務づけられています。腎機能が低下した患者では腎障害リスクが特に高く、投与量・速度を「できるだけ低く」する必要があります。痛いですね。
リスク③ 溶血性貧血
グロブリン製剤に含まれる血液型抗体(特に抗A、抗B抗体)が血球と反応し、溶血性貧血を起こすことがあります。血液型A型・B型・AB型の患者に大量投与する際は特に注意が必要です。投与後に貧血・黄疸・濃褐色尿などの症状が出現した場合は、速やかに溶血の評価を行います。見落とすと遅延型で悪化するため注意が必要です。
なお、グロブリン製剤は血液を原料とする生物由来製品です。製造工程でウイルス不活化・除去処理が施されていますが、未知の感染症伝播リスクがゼロとは言えません。「生物由来製品感染等被害救済制度」の対象であることも、患者への説明に含めるとよいでしょう。
投与中の観察ポイントをまとめると次の通りです。
副作用対応の基本は「早期発見と速度調整」です。投与速度を下げる・いったん中断するだけで多くの副作用は改善します。重篤化させないための観察体制を整えることが第一です。
参考:免疫グロブリン製剤の適正使用のために(帝人ファーマ)
https://medical.teijin-pharma.co.jp/content/dam/teijin-medical-web/sites/ebook/specialty/vek_on08/(帝人ファーマ)免疫グロブリン製剤の適正使用のために
製品間の違いは適応症だけではありません。製剤処理法の違いが、実臨床での投与管理に大きく影響します。この視点は一覧表には載りにくいため、意外と見落とされがちです。
処理法の主な種類は「ポリエチレングリコール(PEG)処理」「乾燥スルホ化処理」「pH4処理(酸処理)」の3系統に分かれます。それぞれの特徴と注意点を以下に整理します。
PEG処理製剤(ヴェノグロブリンIH、グロベニン-I)
これらの製剤はNa含有量が非常に少ないか(ヴェノグロブリン:約0.1 mEq/L)、あるいは多い(グロベニン:154 mEq/L)という極端な差があります。Na制限が必要な患者(心不全・腎不全)では使用製剤のNa量をきちんと考慮する必要があります。ヴェノグロブリンIHはNaが極めて少ないため、Na制限患者に向いています。一方、ヘパリン製剤との配合変化(白濁)があるため、ルートにヘパリンロックを使用している場合は注意が必要です。
乾燥スルホ化処理製剤(ベニロン-I)
ベニロン-IはNa含有量が171 mEq/Lと高めです。凍結乾燥製剤のため溶解操作が必要で、溶解後は速やかに使用する必要があります。グロベニン-Iと同様、5%ブドウ糖液や生理食塩水との配合変化は起きにくいとされていますが、メーカー確認を行うことが推奨されます。単独投与を推奨しているケースもあるため、点滴ルートの取り回しに注意が必要です。
pH4処理製剤(ポリグロビンN、ピリヴィジェン)
pH4の酸性液で処理した製剤です。Na含有量はごく微量(0.04 mEq/L以下)のため、Na制限患者への使用に適しています。ただし他の薬剤との配合変化データが少ないため、原則単剤投与が推奨されています。
これは使えそうです。Na管理が必要な患者へのグロブリン投与では、「Na量の少ない製剤を優先選択」するだけで、Na管理上のトラブルを大幅に減らせます。施設の採用製剤を確認した上で、高Na製剤を避ける選択肢を押さえておくとよいでしょう。
また、薬局・薬剤師視点では「溶解操作の有無」も重要です。凍結乾燥製剤(ベニロン-I)は溶解液が付属していますが、溶解に時間がかかります。緊急投与が必要な川崎病急性期や重症GBSの場面では、液状製剤(ヴェノグロブリンIH)の方が即応性が高くなります。施設のフォーミュラリー管理における「緊急時の対応製剤」として、液状製剤を優先採用している病院もあります。
参考:静注用人免疫グロブリン製剤一覧(日本血液製剤機構・JBスクエア)
https://www.jbpo.or.jp/med/jb_square/ivig/pdf/vng_468.pdf

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