ドナネマブ承認後の医療従事者対応と診療体制構築課題

アルツハイマー病新薬ドナネマブが日本で承認され、医療現場に新たな治療選択肢をもたらしました。ARIA管理を含む安全な投与のための診療体制や、レカネマブとの使い分けなど、医療従事者が把握すべき課題をどう解決していけばよいでしょうか?

ドナネマブ投与体制整備

ドナネマブ治療の基本構成要素
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投与環境整備

ARIA対応可能なMRI設備と専門医師の配置が必要

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安全管理システム

定期MRI検査と副作用モニタリング体制の確立

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効果判定システム

認知機能評価とアミロイドPET検査による治療効果測定

ドナネマブの承認とガイドライン遵守

2024年9月に正式承認されたドナネマブ(商品名:ケサンラ)は、日本で2番目のアルツハイマー病抗体医薬として医療現場に導入されました 。厚生労働省は「ドナネマブ(遺伝子組換え)製剤の最適使用推進ガイドライン」を策定し、2025年8月には用法・用量変更に伴う改正版を公表しています 。
参考)https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/info/topics/pdf/20250826_01_01.pdf

 

医療機関では以下の体制整備が必要です:


  • MRI読影に関する医療従事者向け研修を受講した医師の配置

  • ARIA(アミロイド関連画像異常)の鑑別を含むMRI検査体制

  • 副作用の診断や対応に関して適切な処置ができる体制

  • アミロイドβ病理確認のための検査体制(アミロイドPETまたは脳脊髄液検査)

承認後の投与スケジュールでは、従来法と比較してARIA-E発現割合が23.7%から13.7%に40.5%低下することが確認されており 、安全性プロファイルの改善が期待されています。
参考)https://medical-tribune.co.jp/rensai/articles?blogid=11amp;entryid=568811

 

ドナネマブのARIA管理と安全性対策

ドナネマブ投与における最重要課題がARIA管理です。ARIA-E(浮腫・滲出液貯留)は24.0%、ARIA-H(脳微小出血・脳表ヘモジデリン沈着症)は31.4%の患者に発現し 、レカネマブと比較して高い発現率を示します。
参考)https://www.minnanokaigo.com/news/kaigo-text/dementia/no290/

 

ARIA管理の実践的ポイント:


  • 投与前スクリーニング:血管原性脳浮腫、5個以上の脳微小出血、脳表ヘモジデリン沈着症、1cm超の脳出血を有する患者は投与禁忌
    参考)https://medical.lilly.com/jp/answers/220070


  • 定期MRI検査:投与開始から終了まで規定されたスケジュールでの実施

  • 症状モニタリング:頭痛、吐き気、ふらつき、意識レベル変化の早期発見

  • 重度ARIA対応:MRI画像上重度または症候性ARIAが認められた場合の投与中断・中止判断
    参考)https://medical.lilly.com/jp/answers/223931

APOE ε4保因者では特にARIAリスクが高まるため 、遺伝子型にかかわらず厳格なMRI検査を含むARIA管理が必須となります。

ドナネマブとレカネマブの投与判断基準

医療従事者は2つの抗アミロイド抗体医薬の特性を理解し、患者ごとの最適選択を行う必要があります。
投与スケジュールの違い

治療期間と継続性

作用機序の差異


  • ドナネマブ:ピログルタミル化アミロイド斑に選択的結合、84%のアミロイドβ除去効果
    参考)https://www.ncgg.go.jp/ri/labo/15.html


  • レカネマブ:プロトフィブリルに優先的結合、68%のアミロイドβ除去効果

症状が軽度で早期段階の患者(軽度認知障害)では、ドナネマブで60%の進行抑制効果が報告されており 、早期介入の重要性が示されています。

ドナネマブ診療における医療経済学的考慮

ドナネマブの医療経済的影響は医療機関運営に大きく関わります。年間治療費は約500万円台と推定され、1割負担でも年間50万円程度の患者負担が予想されます 。
高額療養費制度の活用


  • 70歳以上で年収370-770万円:月上限44,400円

  • 適切な制度案内による患者負担軽減

治療費以外のコスト要因


  • 定期MRI検査費用

  • アミロイドPET検査費用(現時点で保険適用外)

  • 通院に伴う交通費・時間的負担

  • 介護者の負担(経済的・時間的)

医療機関では、治療効果と費用対効果のバランスを患者・家族と十分協議し、地域の福祉制度や助成制度の情報提供も含めた総合的サポートが求められます。投与終了の可能性があるドナネマブの特性を活かし、治療計画の明確化が患者のアドヒアランス向上につながると期待されています。

ドナネマブ投与における次世代医療技術活用

ドナネマブ治療の安全性と効果を最大化するため、新たな医療技術の導入が注目されています。人工知能を活用したMRI画像解析システムにより、ARIA の早期発見精度向上が期待されており、専門医でなくてもARIAの鑑別診断支援が可能になりつつあります。
血液バイオマーカーの臨床応用
近年開発が進む血液中のリン酸化タウやアミロイドβ測定技術により、より簡便で低侵襲な治療効果判定が可能になると予想されます 。これにより定期的なアミロイドPET検査の頻度軽減や、治療反応性の早期予測が実現する可能性があります。
参考)https://www.ncgg.go.jp/ri/labo/16.html

 

個別化医療の展開
APOE遺伝子型だけでなく、その他の遺伝的バリアントや炎症マーカーを組み合わせたリスク層別化により、患者ごとの最適な投与スケジュールや安全管理方針を決定する個別化医療アプローチが検討されています。
テレメディシンとの統合
定期的な認知機能評価や副作用モニタリングにおいて、遠隔医療技術の活用により、通院負担の軽減と継続的な患者管理の両立が可能になります。特に地方部での専門医療アクセス改善に貢献すると期待されています。
これらの技術革新により、ドナネマブ治療の安全性向上と医療従事者の負担軽減、さらには医療の質向上が同時に実現される可能性が高まっています。医療従事者は最新技術動向を把握し、積極的な導入検討が求められる時代となっています。

 

基づいて以下にドネペジルに関する記事を作成します。