テレメディシン遠隔医療の現状と課題分析

テレメディシンを活用した遠隔医療の現状とメリット、そして医療従事者が直面している課題について詳しく解説。医療DXの推進により変革する医療現場の実態とは?

テレメディシン遠隔医療の現状と課題

テレメディシン遠隔医療の現状と課題
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遠隔医療システムの普及

ICT技術を活用し医師が遠隔地の患者に診療を提供

💡
医療格差解消への貢献

へき地や離島での医療アクセス改善効果

⚖️
法規制と課題対応

医師法20条への対応と適切な運用体制の確立

テレメディシンの定義と概要

テレメディシンとは、医師がインターネット技術を利用して遠隔地にいる患者に対して診療を行うサービスです。具体的には、ビデオ通話やチャット機能を通じて診察、処方箋の発行、治療計画の立案などが行われています。
参考)https://md.reserva.be/dx-knowledge/telemedicine/

 

テレメディシンは国際的に使用される用語で、患者に臨床医療サービスを提供するための通信技術の使用を指します。これには医師や専門家などの医療専門家による患者の遠隔診断、相談、治療、監視が含まれ、医療の臨床面に焦点を当てています。
参考)https://telemedical.jp/focus/difference-between-telemedicine-and-telehealth.html

 

テレメディシンより広義の概念として「テレヘルス」があり、これは電子技術と通信技術を使用する幅広い医療サービスと活動を含む用語です。テレヘルスには遠隔患者モニタリング、健康教育、医療提供者間の管理会議など、必ずしも直接の臨床ケアを含まない医療提供のその他のさまざまな側面も含まれています。
本邦では、厚生労働省がICTを活用した健康増進、医療に関する行為全般を遠隔医療と定義し、遠隔医療のうち医師-患者間でICTを通じて、患者の診察および診断をおこない、診断の伝達や処方等の診療行為をリアルタイムにおこなうことをオンライン診療と定義しています。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjmi/92/3/92_331/_pdf/-char/ja

 

テレメディシンのメリットと医療格差解消効果

テレメディシンの最も大きなメリットは、医師が不足している地域に医療を提供できる点です。これにより、患者は通院にかかる時間や負担を大幅に軽減できます。特に高齢者や慢性疾患を抱える患者は、遠隔での受診によって医師からの定期的なフォローアップを安心して受け続けられるため、長期的な健康管理が可能になります。
感染症予防効果 📦
テレメディシンは感染症予防に非常に効果的です。対面での診察が不要なため、病院内での飛沫感染や空気感染など、二次感染のリスクを抑えることができます。これにより、免疫力が低い高齢者や持病を持つ患者も安心して診察を受けることが可能です。
医療費削減と効率性向上 💰
遠隔医療は不要な医療費や時間を節約する効果があります。患者が通院や入院する必要がなく、医師も診療のために時間や交通費をかける必要がないため、効率的な医療提供が実現できます。
参考)https://cmc-japan.co.jp/blog/telemedicine-software-explained/

 

病院側にとっても、従来の対面での診療における受付から診察、会計までの事務プロセスに要する時間とリソースが軽減され、業務が効率化されるメリットがあります。これにより、医療スタッフがより多くの時間を患者対応や医療業務に集中できるようになります。
参考)https://www.mirait-one.com/miraiz/5g/column094.html

 

継続的医療の提供 🔄
引っ越しや海外移住を行った患者も、引き続き居住地でかかりつけ医による診療を受けられます。テレメディシンは地理的な障壁を超え、より多くの患者に適切な医療を提供するための有効な手段として機能しています。
在宅モニタリングでは、慢性疾患や高リスクの患者に対して在宅モニタリングデバイスを使用し、生体データを収集して医療プロバイダーにリアルタイムで送信することができます。これにより、医師は患者の状態をリモートでモニタリングし、早期の問題を検出しやすくなります。
参考)https://telemedical.jp/focus/what-is-telehealth.html

 

テレメディシンの課題と技術的制約

テレメディシンには患者側と病院側でさまざまなメリットがある反面、対応できる症状には限りがあるなど課題もいくつか残っています。遠隔診療では聴診や触診などの身体的な診察ができないという根本的な制約があります。
ITリテラシーと技術的難易度 💻
遠隔医療の課題の1つに、医療従事者と患者双方のITリテラシーと技術的な難しさがあります。遠隔医療では、オンライン診療のためにパソコンやスマートフォンなどの通信機器が必要で、アプリケーションの立ち上げやボリューム調整などの操作も実施できなければいけません。
参考)https://oncall.fastdoctor.jp/media/column/telemedicine-issues/

 

技術に不慣れな患者や医師は、遠隔医療のためのシステムを操作するのに苦労する可能性があります。医療機関側は、使いやすいシステムを導入する、遠隔医療に必要なシステムのレクチャーや勉強会を実施するなどして、円滑に遠隔医療が実施できるような体制整備が重要です。
診療の質と緊急時対応 🚨
遠隔医療における診療の質の担保と緊急時対応は重要な課題です。患者の容態が急変した際の処置が難しいという問題もあり、対面診療に比べて得られる情報に制限があることが指摘されています。
運営基盤とビジネスモデル 📊
遠隔医療の継続的な運用のためには運営基盤の確立、収益と負担のサービス(ビジネス)モデルの確立が課題となっています。医師対医師の場合における責任範囲・役割分担の明確化も重要な課題です。
参考)https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/chousa/telemedicine/pdf/080521_2_si2.pdf

 

テレメディシンの法規制と医師法20条への対応

医師法20条は、医師に対して患者を自ら診察しない治療や処方を禁止しています。しかし、離島やへき地の遠隔地への医療提供の必要性から、対面診療に代替しうる程度の患者の心身の状態に関する有用な情報が得られる場合の遠隔診療は医師法第20条等に抵触しないことが明確化されています。
オンライン診療の法制化に向けた動き ⚖️
2024年10月30日に開催された社会保障審議会・医療部会では、医療法に「オンライン診療」を実施・受診する場などの規定を明示し、適切なオンライン診療を推進する環境を整える議論が開始されました。
参考)https://gemmed.ghc-j.com/?p=63552

 

具体的には、以下の規定を医療法に位置付けることが提案されています:

  • 「オンライン診療を行う医療機関」を医療法上明確化
  • 「特定オンライン診療受診施設」を医療法上明確化

オンライン診療について「情報通信機器を活用して、医師・歯科医師が、遠隔の地にある患者の状態を視覚・聴覚により即時に認識した上で、当該患者に対し行う診断・診療」と定義し、このオンライン診療を行う医療機関に都道府県への届け出を義務付ける方向性が示されています。
プライバシーとセキュリティ対策 🔒
法規制とプライバシー問題も重要な課題です。遠隔医療では、患者は離れた場所にいるため、比較的簡単に盗んだ医療的身分を使って治療を受けることができることが問題となっています。
参考)https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000193831_1.pdf

 

患者データを保護するために、堅牢な暗号化と認証手法の導入、定期的なセキュリティ監査や脆弱性評価などの対応策が必要です。
参考)https://cmc-japan.co.jp/blog/major-challenges-in-telemedicine-and-how-to-overcome-them/

 

研修義務と体制整備 📚
オンライン診療を実施する医師は厚生労働省の研修を受講する必要があるため、医療機関は医師への適切な研修機会の提供を忘れないよう注意が必要です。また、患者には家族や訪問看護師、介護士などの力を借りて、遠隔医療実施前に必要機器の操作方法をレクチャーすることが推奨されています。

テレメディシンの独自応用例と8Kスーパーハイビジョン活用

テレメディシンの革新的な応用として、8Kスーパーハイビジョン技術を活用した遠隔医療の実証が注目されています。この技術により、従来の遠隔医療では困難だった高精細な画像情報の共有が可能となり、より正確な診断支援が実現されています。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/7c607f9f10d67c1d7012ef82e71fc02fe71bba6c

 

多対多対応型モバイルテレメディシン 🚑
移動中の救急車内から、傷病者のリアルタイムな12誘導心電図、脈拍、血圧、酸素飽和度などの生体情報をライブ画像とともに送信する多対多対応型モバイルテレメディシン遠隔医療システムが開発されています。これにより、救急現場での迅速な診断と治療方針の決定が可能となっています。
参考)https://www.soumu.go.jp/main_content/000256448.pdf

 

リモート聴診デバイスの開発 🔊
最近では、リモートで聴診が行えるデジタル聴診デバイスなどの開発が進んでおり、今後はより広い範囲でテレメディシンが適用されると予想されています。シェアメディカルのデジタル聴診デバイスを活用したPHCの遠隔医療システムなど、具体的な製品化も進んでいます。
テレリハビリテーション 🏃‍♀️
リモートで理学療法やリハビリテーションセッションを提供することが可能です。患者は自宅で指示に従い、専門家からリモートでガイダンスを受けることができるため、継続的なリハビリテーションの実施が促進されています。
遠隔手術および手術サポート 🏥
遠隔手術において、外科医はロボット手術を行う際にリアルタイムで手術室の操作を監視し、手術を支援することがあります。これにより、専門的な手術スキルを持つ医師が遠隔地域に手術支援を提供できるようになっています。
食事管理とヘルスケアアプリの連携 🍎
生活習慣病における食事管理とヘルスケアアプリの活用や、画像認識を用いた食事の記録・解析ツール「FoodLog」など、テレメディシンと健康管理アプリケーションの統合も進んでいます。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/436cfae6df59ba708b99cbe129912cf7914b13e3

 

AIとビッグデータの活用 🤖
介入支援すべき患者をみつけるAIの研究開発事例や、モバイルヘルスを用いた疾患治療のエビデンスと今後の展望など、AIとビッグデータを活用したテレメディシンの高度化も注目されています。これらの技術により、より個別化された医療提供が可能となっています。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/a62ccf265fc17e9492718f9925d214d5de6d5e6d

 

国家戦略においても「医療アクセスの改善や個別化医療のためのテレメディシンやAI診断支援」がAIの活用が期待される分野として挙げられており、今後さらなる技術革新と普及が期待されています。
参考)https://www.amed.go.jp/content/000123585.pdf