アゾール系抗真菌薬は、真菌細胞膜の重要な構成成分であるエルゴステロールの生合成を阻害することで抗真菌作用を発揮します。具体的には、エルゴステロール合成経路におけるラノステロールの14α位脱メチル化反応に関与するシトクロムP450酵素(CYP51)と結合し、この酵素の活性を阻害することで真菌の増殖を抑制します 。[1][2][3]
エルゴステロールは人間の細胞膜にはほとんど存在せず、真菌特有の膜構成成分であるため、アゾール系薬は選択的に真菌に作用します。エルゴステロール合成が阻害されると、真菌の細胞膜が不安定になり、膜透過性の変化により細胞死に至ります 。
参考)ミコナゾール(MCZ)(フロリード) href="https://kobe-kishida-clinic.com/respiratory-system/respiratory-medicine/miconazole/" target="_blank">https://kobe-kishida-clinic.com/respiratory-system/respiratory-medicine/miconazole/amp;#8211; 呼吸器…
最新の研究では、同じエルゴステロール合成経路を阻害するテルビナフィン、フルコナゾール、アモロルフィンでも、阻害する段階が異なることで蓄積される中間産物が変わり、真菌に対する形態学的影響が異なることが明らかになっています 。
参考)同一経路で働く抗真菌剤の異なる作用―抗真菌剤の新しい用途開発…
イミダゾール系抗真菌薬は、脂溶性のイミダゾール環を持つ化合物群で、ミコナゾール以外は水に難溶性のため主に外用薬として使用されます。代表的な薬剤には以下のようなものがあります :[6][2]
これらの薬剤は表在性真菌(白癬)や口腔、咽頭、膣カンジダ症の治療において、クリーム、トローチ、膣錠などの多様な剤形で提供されています 。
参考)イミダゾール系抗真菌薬 − 歯科辞書
アゾール系抗真菌薬の重要な特徴として、シトクロムP450(CYP)酵素系への阻害作用があります。これらの薬物は真菌のCYP51を阻害する一方で、ヒトのCYP酵素にも影響を与えるため、多くの薬物相互作用を引き起こします 。[9][10][1]
特に注目すべき相互作用には以下があります。
イミダゾール環を有するシメチジンは多くのCYP分子種を非特異的に阻害するのに対し、後に開発されたファモチジンやラニチジンでは、イミダゾール環がチアゾール環やフラン環に置換されており、CYP阻害作用はほとんど消失しています 。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/faruawpsj/50/7/50_654/_pdf
近年、従来のイミダゾール系抗真菌薬の問題点を克服した新しい化合物の開発が活発に行われています。特に注目されるのは光学活性を利用した薬剤設計で、ルリコナゾールはその代表例です 。[12]
ルリコナゾールの特徴。
最新の研究では、アゾール耐性を示すAspergillus fumigatus株に対しても、ルリコナゾールとラノコナゾールが有効性を示すことが報告されており、既存のアゾール系薬に耐性を示す菌株への新たな治療選択肢として期待されています 。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5075107/
アゾール系抗真菌薬の長期使用により、真菌側の耐性獲得が臨床上の重要な問題となっています。特にCandida glabrataやCandida kruseiなどの菌種では、アゾール系薬に対する自然耐性や獲得耐性が観察されています 。[15][9]
耐性機序として以下が知られています。
このような耐性問題に対する対策として、新しい作用機序を持つ抗真菌薬の開発が進められています。特に、エルゴステロール合成以外の経路を標的とする薬剤や、真菌細胞壁合成を阻害するキャンディン系薬剤との併用療法が注目されています 。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/130/1/130_1_45/_pdf
また、ERG25を標的とした新規抗真菌薬やイソロイシルtRNA合成酵素阻害薬のイコファンギペンなど、既存薬との交差耐性を示さない新しい作用機序の薬剤開発も活発に行われています 。
参考)ERG25を標的とした抗真菌薬