足白癬は、白癬菌が足の皮膚に感染することで発症する皮膚疾患です。日本人の5人に1人が罹患していると推定される最も頻度の高い白癬で、高温多湿の環境を好む白癬菌の特性により、梅雨から夏場にかけて症状が悪化しやすい傾向があります。
参考)足白癬・爪白癬 (あしはくせん・つめはくせん)とは
足白癬は症状の現れ方によって3つの病型に分類されます:
参考)『白癬』の原因・症状・治療法【症例画像】
足白癬の特徴的な症状には、かゆみ、皮むけ、水疱形成、白色の皮膚変化などがあり、患者の自覚症状が明確なことが多いとされています。
参考)水虫(足白癬、爪白癬)について
爪白癬は白癬菌が爪に感染した状態で、足白癬患者の約50%が併発するとされる疾患です。爪白癬の最大の特徴は、爪に神経がないため痛みやかゆみを伴わないことが多く、症状が進行しても見逃されやすい点にあります。
参考)爪白癬(爪の水虫) - ひまわり皮フ科
爪白癬の典型的な症状には以下があります:
参考)「白癬・爪白癬」とあなたの症状との関連性をAIで無料チェック
爪白癬は変色の範囲や変形の仕方により4つのタイプに分類され、その中でも遠位側縁爪甲下爪真菌症が最も多く、足白癬から爪への感染拡大として発症するケースが一般的です。感染した爪内には大量の白癬菌が存在し、家族内感染の原因となりやすいことも重要な特徴の一つです。
足白癬の確定診断には、白癬菌の存在を直接確認する顕微鏡検査(KOH検鏡法)が必須です。診断の推奨度は最高レベル(推奨度1)とされており、臨床症状のみでの診断は避けるべきとされています。
参考)水虫の診断方法
診断手順は以下の通りです。
検査結果は受診当日に判明し、白癬菌が確認された場合に足白癬と確定診断されます。必要に応じて培養検査も実施されますが、結果判明まで数週間を要します。鑑別診断では、掌蹠膿疱症、接触皮膚炎、汗疱などの類似疾患との区別が重要となります。
参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/contentpage.aspx?diseaseid=501
爪白癬の診断は、爪の症状のある部分を爪切りや医療器具で削り取り、顕微鏡検査で白癬菌の存在を確認することで行われます。検査による痛みはほとんどなく、結果は当日中に判明します。
参考)爪水虫ってどんな病気?
診断プロセスの詳細。
爪白癬の鑑別診断では、以下の疾患との区別が重要です。
正確な診断には必ず真菌学的検査が必要であり、臨床症状のみでの診断は推奨されていません。
足白癬と爪白癬では、感染部位の違いにより治療方法が大きく異なります。足白癬では外用薬が中心となる一方、爪白癬では内服薬が第一選択となることが重要なポイントです。
参考)爪白癬にどのような薬が使用されますか?
足白癬の治療。
外用抗真菌薬による治療が基本となり、適切に治療すれば90%の治癒率が期待できます。主要な外用薬には以下があります:
治療期間は最低3ヶ月間の継続が必要で、症状消失後も再発防止のため治療継続が推奨されます。
参考)水虫が広がる前に、早めの治療を~足白癬・爪白癬の治療について…
爪白癬の治療。
内服薬が第一選択となり、以下の薬剤が使用されます:
内服薬の治療期間は最低3ヶ月で、完全治癒率は40〜60%です。外用薬(エフィナコナゾール、ルリコナゾール)も使用可能ですが、治療期間が1年以上かかり、完全治癒率は20%未満とされています。
足白癬と爪白癬は、白癬菌による感染症という共通点を持ちながら、症状の現れ方、診断方法、治療選択において明確な違いがあります。医療従事者にとって、これらの違いを理解し、適切な診断と治療方針を決定することは患者の予後改善に直結する重要な知識といえます。特に爪白癬は見逃されやすく、家族内感染の原因となりやすいため、足白癬患者では爪の状態も必ず確認し、早期発見・早期治療につなげることが求められます。
参考)爪水虫の治し方は?