アレルギー性結膜炎の症状が長期間持続する理由は複数存在します。最も重要なのは、原因物質(アレルゲン)の特定不足です。
スギ花粉以外にも、ヒノキ、イネ科植物、ブタクサなど複数の花粉に反応している可能性があります。患者が自覚していない時期にも症状が出現している場合、異なる花粉への反応を疑う必要があります。
ハウスダスト、ダニ、カビ、ペットの毛やフケなど、室内環境に存在する通年性アレルゲンへの暴露が続いている場合、症状の改善は困難です。特に現代の住宅は気密性が高く、ダニやカビが繁殖しやすい環境になっています。
複数のアレルゲンに同時に反応している場合、一つの原因物質を除去しても症状が完全には改善されません。血清中の抗原特異的IgE抗体検査により、どの抗原に反応しているかを正確に把握することが重要です。
日本眼科学会による診断指針に関する詳細情報
https://www.nichigan.or.jp/public/disease/name.html?pdid=13
アレルギー性結膜炎の治療効果が不十分な場合、以下の併存疾患を疑う必要があります。
涙液の減少や質的変化により、アレルゲンの洗い流しが不十分になります。パソコン作業の増加、エアコンの使用、コンタクトレンズの装用などが原因となります。ドライアイとアレルギー性結膜炎の両方を同時に治療する必要があります。
ドライアイの特徴的症状。
アトピー性皮膚炎患者では、目の周囲の皮膚炎が花粉などの抗原により悪化し、強いかゆみから目をこする行為が症状を悪化させます。アトピー性眼瞼炎、春季カタル、円錐角膜などの重篤な合併症を引き起こす可能性があります。
コンタクトレンズの装用により涙の循環が悪化し、花粉が目の中に残りやすくなります。適切なレンズケアが行われていない場合、レンズに花粉や汚れが付着し、症状が持続します。
従来の治療法で効果が得られない場合、治療薬の選択や使用方法に問題がある可能性があります。
抗アレルギー点眼薬は副作用が少ないため第一選択となりますが、多くの患者は「症状がある時だけ点眼する」という間違った使用方法をとっています。かゆみの発生頻度を抑制するには、症状の有無にかかわらず継続的に点眼し、結膜中の薬物濃度を維持することが必要です。
主要な抗アレルギー点眼薬。
重症例や他の治療で効果が不十分な場合、ステロイド点眼薬の使用を検討します。しかし、眼圧上昇、眼感染症のリスクがあるため、定期的な眼科医の診察が必要です。
2024年5月に発売されたアレジオン®眼瞼クリーム0.5%は、世界初の1日1回目のまわりに塗布するクリームタイプの治療剤です。目のまわりに塗ることで成分が目の中まで浸透し、24時間効果が持続します。
東名古屋病院による新治療薬の解説
https://higashinagoya.hosp.go.jp/files/000234128.pdf
薬物治療と並行して、環境改善と生活習慣の見直しが症状改善に重要な役割を果たします。
ハウスダスト対策として、以下の具体的な方法が効果的です。
季節性アレルギーでは、以下の対策が重要です。
アレルギー体質の改善には食事内容も影響します。
推奨食品。
制限すべき食品。
従来の医学文献では十分に取り上げられていない重要な観点として、患者の心理的要因と治療継続性があります。
アレルギー性結膜炎では、「かゆみ」という主観的症状が中心となるため、患者自身が改善を実感しにくい場合があります。Facial Imaging Scale(FISA)などの客観的評価ツールの活用により、症状の変化を可視化することが治療継続のモチベーション維持に重要です。
季節性アレルギーでは、花粉飛散量の少ない時期に症状が軽減するため、患者が自己判断で治療を中断することがあります。しかし、予防的治療の継続により、次シーズンの症状軽減効果が期待できるため、患者教育が重要です。
アレルギー性結膜炎は、仕事や学習の生産性低下、睡眠障害、社会活動の制限など、患者のQOLに大きな影響を与えます。医療従事者は症状そのものの治療だけでなく、患者の生活全体への影響を考慮した包括的なアプローチが必要です。
完全な症状消失を期待する患者に対して、現実的な治療目標の設定と、長期的な管理の必要性について十分な説明を行うことが重要です。特に重症例では、症状のコントロールを目標とし、患者との信頼関係を築きながら治療を継続することが求められます。
慶應義塾大学病院によるアレルギー性結膜炎の包括的説明
https://kompas.hosp.keio.ac.jp/disease/000192/
アレルギー性結膜炎の治療においては、単一の原因や治療法に固執せず、患者一人ひとりの病態と生活環境を総合的に評価し、多面的なアプローチを取ることが症状改善の鍵となります。医療従事者として、最新の治療選択肢を理解し、患者の生活の質向上を目指した治療計画を立案することが重要です。