健康な成人の約20%に生理的アニソコリアが存在しており、実は「異常なし」と判断すべきケースが患者全体の5人に1人に上ります。
関連)https://note.com/magic_sorrel5329/n/n5bb925c17450

アニソコリアとは、左右の瞳孔径に差がある状態を指す医学用語です。 英語の"anisocoria"に由来し、臨床現場では略して「アニソコ」と呼ばれることも多いです。 正常な成人でも、瞳孔径の左右差が0.5〜1mm程度以内であれば生理的範囲内とみなされますが、差が1mmを超える場合は病的な原因を疑う必要があります。
関連)https://www.kango-roo.com/word/4830
瞳孔の大きさは、交感神経(散瞳)と副交感神経(縮瞳)のバランスで制御されています。 この神経回路のどこかに障害が生じると、左右の径に差が出ます。つまり、アニソコリアは「どちらの神経が傷ついているか」を示す重要な神経学的サインです。
関連)https://blog.goo.ne.jp/medical-dictionary/e/66fc1d3d48e14552b1a94be8502c5e35
瞳孔不同の評価では、「縮瞳側が異常か、散瞳側が異常か」を最初に判断することが原則です。 暗所で左右差が拡大すれば散瞳障害(交感神経障害)、明所で差が拡大すれば縮瞳障害(副交感神経障害)と考えます。この判断ステップが鑑別の起点になります。
関連)https://www.med.gifu-u.ac.jp/neurology/column/observation/20181219.html
参考:瞳孔不同の基本的な定義と分類について詳しく解説されています。
アニソコリアの原因は、大きく「生理的アニソコリア」と「病的アニソコリア」に分けられます。 生理的アニソコリアは健常人の約20%にみられ、左右差は通常1mm以下です。 光反応は正常で、明所・暗所でも差の比率に変化はほとんどありません。これは体質のようなもので、治療は不要です。
病的アニソコリアの主な原因は次の通りです。
関連)https://www.okayama.med.or.jp/activity/kaiho_lineup/files/mamechishiki/1583_mamechishiki.pdf
関連)https://www.med.gifu-u.ac.jp/neurology/column/observation/20181219.html
関連)https://www.allaboutvision.com/ja/joutai/doukouhudou/
関連)https://www.allaboutvision.com/ja/joutai/doukouhudou/
意外なのは、薬剤性アニソコリアです。 緑内障の治療で片眼だけに点眼薬を使用した患者が、入院後や他科受診時に「瞳孔不同あり→緊急性を疑う」と誤判断されるケースが報告されています。問診で「どの目薬をいつから使っているか」を必ず確認することが重要です。
関連)https://www.allaboutvision.com/ja/joutai/doukouhudou/
参考:外科的・内科的動眼神経麻痺の鑑別と散瞳メカニズムについて詳しく解説されています。
岐阜大学医学部附属病院神経内科:外科的or内科的動眼神経麻痺と散瞳メカニズム
最も警戒すべきは、意識障害を伴うアニソコリアです。 これは脳浮腫により動眼神経が圧迫されているサインであり、テント切痕ヘルニア(脳ヘルニア)の代表的な所見です。対光反射が消失または遅延している場合はさらに危険度が増します。
関連)https://blog.goo.ne.jp/medical-dictionary/e/66fc1d3d48e14552b1a94be8502c5e35
緊急性が高いパターンを押さえておきましょう。
| 所見 | 疑われる疾患 | 緊急度 |
|---|---|---|
| アニソコリア+意識障害 | 脳ヘルニア・脳出血 | 🔴 最緊急 |
| アニソコリア+突然の激しい頭痛 | くも膜下出血・脳動脈瘤破裂 | 🔴 最緊急 |
| アニソコリア+複視・眼瞼下垂 | 動眼神経麻痺(動脈瘤圧迫) | 🟠 準緊急 |
| アニソコリア+眼瞼下垂+顔面発汗低下 | ホルネル症候群 | 🟡 要精査 |
| アニソコリア+光反応正常・症状なし | 生理的アニソコリア | 🟢 経過観察 |
脳動脈瘤が動眼神経を圧迫する場合、眼瞼下垂や複視よりも先に散瞳が出現することがあります。 副交感神経線維は動眼神経の外側(表層)を走るため、外部からの圧迫に特に弱いからです。逆に、糖尿病による内科的動眼神経麻痺では副交感神経が温存されることが多く、散瞳を伴わないことが鑑別の一助になります。
関連)https://www.med.gifu-u.ac.jp/neurology/column/observation/20181219.html
参考:MSDマニュアル プロフェッショナル版に、瞳孔不同の鑑別と評価の詳細が掲載されています。
1. 問診:いつから気づいたか、眼科的既往(点眼薬の使用含む)、頭痛・外傷の有無
関連)https://www.allaboutvision.com/ja/joutai/doukouhudou/
2. 意識レベルの確認:GCSまたはJCSで評価。意識障害があれば即座に緊急対応へ
3. 瞳孔径の計測:ペンライトと瞳孔計(pupilometer)を使い、明所・暗所それぞれで左右差を計測
関連)https://www.kango-roo.com/word/4830
4. 対光反射の確認:直接反射と間接反射の両方をチェック
5. 眼球運動の確認:複視・眼瞼下垂・眼球偏位の有無
関連)https://kuwana-sc.com/brain/2296/
6. バイタルサイン・全身症状の確認:頭痛・嘔気・頸部硬直など
暗所で左右差が大きくなる場合、縮瞳が障害されていることを意味します。 つまり交感神経障害(ホルネル症候群)を疑う流れです。一方、明所で左右差が拡大するなら副交感神経障害(動眼神経麻痺)を考えます。この「どちらが広がるか」の確認だけで鑑別の方向性が絞れます。
関連)https://www.med.gifu-u.ac.jp/neurology/column/observation/20181219.html
瞳孔計(pupilometer)を使えば0.1mm単位での計測が可能です。 目視だけでは1mm以下の差を正確に評価しにくく、特に薄暗い病室では誤差が生じやすいため、客観的な数値化が望ましいです。
関連)https://www.kango-roo.com/word/4830
アニソコリアの評価において、しばしば見落とされるのが「偽アニソコリア」です。これは瞳孔径自体に差はなく、眼瞼下垂や眼球陥凹(眼窩内病変)によって見かけ上左右の瞳孔が異なって見える状態です。医療現場で実際に混乱を招くことがあります。
注意すべき鑑別疾患は以下の通りです。
関連)https://www.allaboutvision.com/ja/joutai/doukouhudou/
見かけ上の瞳孔差に惑わされないためには、「光反応の有無と速度」が最重要指標です。 反応が正常ならば、急いで神経学的緊急事態として扱う必要はほとんどありません。逆に反応消失・遅延があれば、速やかに画像検索(頭部CT・MRI・MRA)を依頼することが重要です。
関連)https://www.med.gifu-u.ac.jp/neurology/column/observation/20181219.html
偽アニソコリアを確認する実践的な方法として、眼瞼を指で持ち上げて瞳孔径を再評価するという簡単な操作が有効です。眼瞼下垂に起因する見かけ上の非対称であれば、持ち上げることで均等に見えることが確認できます。これは一つの手技だけで鑑別が一歩進む、即使える知識です。
参考:エイディ瞳孔やホルネル症候群など多様な瞳孔不同の原因を詳しく解説しています。
All About Vision(日本語版):瞳孔不同の原因と鑑別
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