アカツツガムシに刺された場合、5~14日間の潜伏期間を経て特徴的な症状が現れます。初期症状として最も重要なのは38~40℃の高熱で、これが病気の始まりを示すサインとなります。
参考)https://id-info.jihs.go.jp/diseases/ta/Scrub-Typhus/010/tsutsugamushi.html
発熱と同時に以下の症状が見られます。
これらの初期症状は風邪様症状に酷似しているため、野外活動歴を聴取することが診断上極めて重要です。
参考)https://ubie.app/byoki_qa/clinical-questions/m61l7wa1m
特徴的な皮膚症状として、発熱から2~5日後に粟粒大から小豆大の赤い発疹が全身に現れます。同時に、ツツガムシの刺し口近傍の所属リンパ節や全身のリンパ節が腫脹することが約半数の患者で観察されます。
参考)https://www.eiken.yamagata.yamagata.jp/pdf/tsutsu-pamh-2013.pdf
つつが虫病の診断において刺し口の発見は決定的な意味を持ちます。刺し口は発症時期によって外観が変化するため、時間経過を考慮した観察が必要です。
参考)https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta0173amp;dataType=1amp;pageNo=1
刺し口の典型的な変化過程。
完成された刺し口は直径約1cm前後で、黒褐色の痂皮に被われた潰瘍として確認されます。発見のポイントとして、皮膚の柔らかい隠れた部位に多く出現することが挙げられます。
参考)https://www.radionikkei.jp/kansenshotoday/__a__/kansenshotoday_pdf/kansenshotoday-170927.pdf
見落としやすい部位。
全身をくまなく探索することで刺し口を発見できる可能性が高まります。刺し口が確認されれば、臨床症状と合わせてほぼ確実な診断が可能となります。
つつが虫病患者では特徴的な血液検査異常が認められ、診断と重症度評価に重要な情報を提供します。
主要な検査異常。
腎機能への影響も重要で、尿蛋白陽性や腎上皮細胞、硝子様円柱の出現が多く認められます。これらの所見は病気の進行度を示す指標となり、治療方針決定に重要な役割を果たします。
重症例では**播種性血管内凝固症候群(DIC)**の発症リスクが高まり、凝固系検査での異常値が生命予後を左右する重要な指標となります。
つつが虫病の治療は早期診断と迅速な投薬開始が最も重要で、確定診断を待たずに臨床症状と刺し口から疑診断がついた段階で治療を開始します。
参考)https://mymc.jp/clinicblog/254452/
第一選択薬:テトラサイクリン系抗菌薬
参考)https://kobe-kishida-clinic.com/infectious/infectious-disease/tsutsugamushi-disease/
治療効果は劇的で、投与開始後24~48時間以内に解熱が認められることが多く、2019年の多施設共同研究では95%以上の患者が48時間以内に解熱したと報告されています。
代替薬:クロラムフェニコール
テトラサイクリン系抗菌薬にアレルギーがある場合や8歳未満の小児では、クロラムフェニコールが使用されます。
治療期間は7~14日間が標準的で、β-ラクタム系抗菌薬は無効のため使用を避ける必要があります。
つつが虫病の治療が遅れると、生命に関わる重篤な合併症を引き起こす可能性があります。特に注目すべきは**播種性血管内凝固症候群(DIC)**の発症で、血管内に無数の血栓が形成され、細い血管が詰まることで血流障害が生じます。
参考)https://fumakilla.jp/foryourlife/202/
重篤な合併症の進行パターン。
医療従事者が注意すべき独自の視点として、急性感染性電撃性紫斑病の合併が挙げられます。この病態は従来の教科書には詳述されていないことが多いものの、実際の臨床現場では重要な合併症として認識されています。
また、最近の研究で明らかになった興味深い知見として、土壌への接触も感染経路となり得ることが指摘されています。従来は山林や草地への立ち入りが主な感染リスクとされていましたが、園芸作業中の土壌接触でも感染する可能性があり、都市部での発症例も報告されています。
重症化予防のための早期発見ポイント。
これらの徴候を認めた場合は、直ちに集中治療管理が必要となり、多臓器不全への進展を防ぐための積極的な支持療法が求められます。