タウリン散98%「大正」は、肝・循環機能改善剤として分類される医療用医薬品で、特に高ビリルビン血症(閉塞性黄疸を除く)における肝機能の改善に優れた効果を発揮します。
肝機能改善のメカニズムとして、タウリンは以下の作用を示します。
国内二重盲検比較試験では、血清ビリルビン5mg/dL以上の急性肝炎患者に対してタウリン3g/日を6週間投与した結果、肝機能改善度は「改善」以上が75.4%(49/65例)、「軽度改善」以上が100%(65/65例)という優秀な成績を示しました。
タウリンの心筋に対する作用は、うっ血性心不全の治療において重要な役割を果たしています。特に強心利尿剤だけでは効果不十分な場合の併用療法として位置づけられています。
心不全治療における効果メカニズム。
臨床試験では、うっ血性心不全患者に対してタウリン3g/日を6週間投与した結果、全般改善度において「中等度改善」以上が26.7%(12/45例)、「軽度改善」以上が73.3%(33/45例)という有効性が確認されています。
2019年2月に新たに承認されたMELAS症候群における脳卒中様発作の抑制は、タウリン散の画期的な適応拡大として注目されています。
MELAS(Mitochondrial myopathy, Encephalopathy, Lactic acidosis And Stroke-like episodes)症候群は、ミトコンドリアDNAの変異により引き起こされる希少疾患で、脳卒中様発作(SE:Stroke-like Episodes)が主要な症状です。
MELAS症候群の臨床的特徴。
タウリンがMELAS症候群に効果を示すメカニズムは、tRNAへのタウリン修飾を補うことにあります。ミトコンドリアtRNAの変異により、正常なタウリン修飾が行われなくなった部分を、大量のタウリン投与により補完する治療法です。
臨床試験では、MELAS症候群患者10例を対象に、体重別の用量(3g~12g/日)を52週間投与した結果、投与開始9週以降52週までの44週間で脳卒中様発作回数が0回であった症例の割合は60%(6/10例)という優れた成績を示しました。
タウリン散の副作用は比較的軽微で、主に消化器系の症状が中心となります。
一般的な副作用(頻度不明)。
MELAS症候群治療時の副作用。
臨床試験において10例中6例13件の副作用が認められ、主なものは口内炎2件でした。
特に注意すべき点として、13歳以下の小児における有効性及び安全性は確立されていないことが挙げられます。新生児及び2歳未満の乳児においては体表面積あたりのGFRが低いため、排泄されずに血中濃度が上昇するおそれがあります。
タウリン散の投与量は、適応症と患者の体重により細かく設定されています。
肝機能改善・うっ血性心不全の場合。
MELAS症候群における脳卒中様発作抑制の場合。
体重別の詳細な投与量設定が必要です。
体重 | 1回量 |
---|---|
15kg未満 | 1g |
15kg以上25kg未満 | 2g |
25kg以上40kg未満 | 3g |
40kg以上 | 4g |
1日3回食後経口投与が基本となります。
医療現場での実践的なポイント。
MELAS症候群の場合、対象となる変異型(A3243G、T3271C、G3244A、T3258C、T3291C)の確認が必要で、臨床試験に組み入れられた変異型はA3243G(9例)及びT3271C(1例)であることを理解しておく必要があります。
タウリン散は比較的安全性の高い薬剤ですが、適切な投与量の遵守と定期的なモニタリングにより、より安全で効果的な治療が実現できます。特にMELAS症候群のような希少疾患への適用では、専門的な知識と経験が重要となるため、関連する医療機関との連携も考慮すべきでしょう。
KEGG医薬品データベース - タウリン散98%「大正」の詳細な薬理作用と臨床データ
PMDA - タウリン散98%「大正」医薬品リスク管理計画書