スルファサラジン(SASP)は、従来から炎症性腸疾患や関節リウマチの治療薬として使用されてきましたが、近年がん治療における新たな可能性が注目されています。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%A9%E3%82%BE%E3%82%B9%E3%83%AB%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%94%E3%83%AA%E3%82%B8%E3%83%B3
主要な作用メカニズム。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/100/10/100_2910/_pdf
参考)https://www.kll.keio.ac.jp/ktm2021/pdf/exhibition/07medicine/5-3_otsuki-yuji.pdf
がん治療においては、特にxCTサブユニットの阻害作用が重要視されています。xCTはがん幹細胞のレドックス状態を安定化させる役割を担っており、これを阻害することでがん細胞の酸化ストレス耐性を低下させることができます。
オキシフェドリンは本来狭心症治療薬として開発された薬物ですが、がん治療における新たな役割が発見されています。
オキシフェドリンの特徴的作用。
参考)https://research-er.jp/projects/view/1153938
研究により、オキシフェドリンがALDH阻害を通じてがん細胞のデトックス機能を抑制し、スルファサラジンによる酸化ストレスへの脆弱性を高めることが明らかになっています。この併用効果により、単独では治療抵抗性を示すがん細胞も感作されることが確認されています。
フェロトーシス誘導による抗腫瘍効果。
この併用療法は「腫瘍特異的フェロトーシス誘導療法」と命名され、正常細胞への影響を最小限に抑えながらがん細胞を選択的に攻撃する画期的な治療法として期待されています。
マウスモデルでの驚異的効果。
肺がんマウスモデルにおいて、スルファサラジンとオキシフェドリンの併用により腫瘍がほとんど大きくならないという驚異的な結果が得られています。この効果は研究者らが「非常に自信を持っている」と述べるほど顕著なものです。
参考)https://www.med.keio.ac.jp/features/2021/3/8-78503/index.html
現在、この革新的な併用療法の臨床応用に向けて、複数の医療機関で臨床試験が進行中です。
進行中の臨床試験概要:
参考)https://jrct.mhlw.go.jp/latest-detail/jRCT2031230531
用量設定とスケジュール:
臨床試験では、dose-escalation partで忍容性を確認後、推奨用量を決定してdose-expansion partに移行する設計となっています。
スルファサラジンの既知の副作用。
オキシフェドリンの安全性。
従来の狭心症治療での使用経験により、比較的良好な安全性プロファイルが確認されています。静脈内投与では1回1-2管を1日1-2回緩徐注射する用法が確立されています。
参考)http://www.fpmaj-saihyoka.com/cgi-bin/efficacy/efficacy.cgi?action=detail_viewamp;seq_no=2505
併用時の注意点。
臨床試験では、28日以内に再投与できない有害事象が発生した場合の中止基準も明確に設定されており、患者安全を最優先とした試験設計となっています。
ドラッグリポジショニングの革新。
この併用療法は「ネオドラッグリポジショニング」と呼ばれる新しいアプローチを代表しています。既存薬の組み合わせにより、従来のドラッグリポジショニングの課題である低収益性を克服し、配合剤として特許化することで収益性も確保されています。
期待される臨床的意義。
研究開発の今後。
肺がん以外のがん種でも高い抗腫瘍効果が認められており、適応拡大が期待されています。また、化学療法や放射線療法との併用により、さらなる治療効果の向上が期待されています。
慶應義塾大学医学部の研究チームを中心とした取り組みにより、この革新的な治療法の早期実用化に向けた研究が精力的に進められています。