スルファサラジン オキシフェドリン併用療法がん治療

スルファサラジンとオキシフェドリンの併用療法によるがん治療の新たな可能性について解説します。がん幹細胞を標的とした革新的なアプローチはどのような効果を示すのでしょうか?

スルファサラジン オキシフェドリン併用療法

スルファサラジン・オキシフェドリン併用療法の概要
💊
フェロトーシス誘導療法

がん幹細胞の治療抵抗性に着目した新しい治療アプローチ

xCT・ALDH阻害

スルファサラジンによるxCT阻害とオキシフェドリンによるALDH阻害

🎯
臨床試験進行中

多施設共同第Ia/Ib相臨床試験で安全性・有効性を評価中

スルファサラジンの薬理作用機序

スルファサラジン(SASP)は、従来から炎症性腸疾患や関節リウマチの治療薬として使用されてきましたが、近年がん治療における新たな可能性が注目されています。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%A9%E3%82%BE%E3%82%B9%E3%83%AB%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%94%E3%83%AA%E3%82%B8%E3%83%B3

 

主要な作用メカニズム

がん治療においては、特にxCTサブユニットの阻害作用が重要視されています。xCTはがん幹細胞のレドックス状態を安定化させる役割を担っており、これを阻害することでがん細胞の酸化ストレス耐性を低下させることができます。

オキシフェドリンのスルファサラジン感作効果

オキシフェドリンは本来狭心症治療薬として開発された薬物ですが、がん治療における新たな役割が発見されています。
オキシフェドリンの特徴的作用

  • 💊 アルデヒド脱水素酵素(ALDH)の共有結合性阻害剤として機能

    参考)https://research-er.jp/projects/view/1153938

     

  • ⚡ スルファサラジン耐性がん細胞に対する感作効果を発揮
  • 🔄 アルデヒド代謝阻害により酸化ストレスを増強

研究により、オキシフェドリンがALDH阻害を通じてがん細胞のデトックス機能を抑制し、スルファサラジンによる酸化ストレスへの脆弱性を高めることが明らかになっています。この併用効果により、単独では治療抵抗性を示すがん細胞も感作されることが確認されています。

スルファサラジン オキシフェドリン併用の分子機序

フェロトーシス誘導による抗腫瘍効果

  • 🔬 xCTとALDHの同時阻害によるシナジスティック効果
  • ⚡ 過酸化脂質の蓄積促進とグルタチオン枯渇
  • 🎯 がん幹細胞特異的なフェロトーシス誘導

この併用療法は「腫瘍特異的フェロトーシス誘導療法」と命名され、正常細胞への影響を最小限に抑えながらがん細胞を選択的に攻撃する画期的な治療法として期待されています。
マウスモデルでの驚異的効果
肺がんマウスモデルにおいて、スルファサラジンとオキシフェドリンの併用により腫瘍がほとんど大きくならないという驚異的な結果が得られています。この効果は研究者らが「非常に自信を持っている」と述べるほど顕著なものです。
参考)https://www.med.keio.ac.jp/features/2021/3/8-78503/index.html

 

スルファサラジン オキシフェドリン臨床試験の現状

現在、この革新的な併用療法の臨床応用に向けて、複数の医療機関で臨床試験が進行中です。

 

進行中の臨床試験概要
参考)https://jrct.mhlw.go.jp/latest-detail/jRCT2031230531

 

  • 🏥 多施設共同第Ia/Ib相臨床試験
  • 👥 切除不能・再発固形がん患者が対象
  • 📊 安全性・忍容性並びに有効性を探索的に評価
  • 🎯 ECOG Performance Status 0-1の患者が適応

用量設定とスケジュール

  • スルファサラジン:6-8g/日(4回分割投与)
  • オキシフェドリン:24-48mg/日(4回分割投与)
  • 4週間を1サイクルとして継続投与

臨床試験では、dose-escalation partで忍容性を確認後、推奨用量を決定してdose-expansion partに移行する設計となっています。

 

スルファサラジン オキシフェドリン安全性プロファイル

スルファサラジンの既知の副作用

  • 🟡 消化器症状(悪心、嘔吐、下痢)
  • 🔴 血液学的異常(白血球減少、血小板減少)
  • 🟠 肝機能異常
  • 🟢 皮疹、光線過敏症

オキシフェドリンの安全性
従来の狭心症治療での使用経験により、比較的良好な安全性プロファイルが確認されています。静脈内投与では1回1-2管を1日1-2回緩徐注射する用法が確立されています。
参考)http://www.fpmaj-saihyoka.com/cgi-bin/efficacy/efficacy.cgi?action=detail_viewamp;seq_no=2505

 

併用時の注意点

  • 📋 定期的な血液検査によるモニタリングが必要
  • 🔍 肝腎機能の継続的な評価
  • ⚠️ Grade 4の非血液毒性出現時は治療中止

臨床試験では、28日以内に再投与できない有害事象が発生した場合の中止基準も明確に設定されており、患者安全を最優先とした試験設計となっています。

スルファサラジン オキシフェドリン治療の将来展望

ドラッグリポジショニングの革新
この併用療法は「ネオドラッグリポジショニング」と呼ばれる新しいアプローチを代表しています。既存薬の組み合わせにより、従来のドラッグリポジショニングの課題である低収益性を克服し、配合剤として特許化することで収益性も確保されています。
期待される臨床的意義

  • 💰 低コストでの治療選択肢の提供
  • 🌍 多種類のがん種への適応拡大の可能性
  • 🔬 がん幹細胞を標的とした新しい治療戦略の確立
  • ⚡ 既存治療との併用による相乗効果

研究開発の今後
肺がん以外のがん種でも高い抗腫瘍効果が認められており、適応拡大が期待されています。また、化学療法や放射線療法との併用により、さらなる治療効果の向上が期待されています。
慶應義塾大学医学部の研究チームを中心とした取り組みにより、この革新的な治療法の早期実用化に向けた研究が精力的に進められています。