スマイラフ(一般名:ペフィシチニブ)は、2019年7月に日本で発売された国産初のJAK阻害薬です。この薬剤の最大の特徴は、JAK1、JAK2、JAK3、TYK2の全てのJAKファミリーを阻害する点にあります。
参考)https://saito-seikei.jp/blog/post-5398/
スマイラフの主な特徴をまとめると以下のようになります。
参考)https://sorn.jp/column/2031
この非選択的な作用機序により、関節リウマチの炎症カスケードをより広範囲に抑制することが期待されています。特に、JAK3の阻害により、リンパ球の活性化をより効果的に抑制できる可能性があります。
オルミエント(一般名:バリシチニブ)は、2017年9月に発売された2番目のJAK阻害薬で、JAK1とJAK2を選択的に阻害する特徴を持ちます。
参考)https://www.jseikei.com/Januskinase-inhibitor/
オルミエントの基本的な特性は以下の通りです。
参考)http://www.hirataclinic-saitama.or.jp/kawaraban_51.pdf
オルミエントは選択的なJAK阻害により、より標的を絞った治療効果を発揮します。また、関節リウマチ以外の適応症にも承認されており、幅広い自己免疫疾患治療に使用されています。
参考)https://chuo.kcho.jp/app/wp-content/uploads/2022/08/0c25bf1ab69ea2925efe959d791f5286.pdf
両薬剤の副作用プロファイルには重要な違いがあります。JAK阻害薬共通の副作用に加えて、各薬剤特有の注意点があります。
スマイラフの副作用。
オルミエントの副作用。
特筆すべき点として、スマイラフではJAK1、2、3、TYK2を阻害するため、リンパ球や好中球の減少がより顕著に現れることがあります。一方、オルミエントでは血栓症のリスクが特に注意すべき副作用として挙げられています。
両薬剤の臨床効果に関する比較データを詳しく見ていきましょう。
スマイラフの国際共同第2相試験では、150mgでエンブレルと比較してACR70の臨床成績が同等またはやや低い値を示しました。100mgではプラセボとは差があるものの、エンブレルの半分程度の効果でした。これにより、150mgで開始し、効果を確認後に100mgに減量するという使用方法が推奨されています。
オルミエントについては、生物学的製剤であるヒュミラ(アダリムマブ)との直接比較試験が実施されており、同等の効果を示すエビデンスが蓄積されています。
参考)https://passmed.co.jp/di/archives/890
効果の特徴。
臨床現場では、患者の状態や併用薬、腎機能などを考慮して薬剤選択が行われます。
医療従事者が臨床現場でスマイラフとオルミエントを使い分ける際の実践的な指針について詳述します。
腎機能による使い分け。
腎機能障害患者においては、スマイラフが第一選択となることが多くなっています。スマイラフは主に肝代謝のため、腎機能低下患者でも用量調整の必要がありません。一方、オルミエントは腎排泄型のため、eGFR 30-60の中等度腎機能障害では減量が必要で、高度腎機能障害では使用できません。
高齢者では腎機能の予備力が低く、脱水などで容易に腎機能が悪化するため、スマイラフの方が安全性の観点から優位性があります。
肝機能による使い分け。
肝機能障害患者では、オルミエントの方が使いやすい場合があります。スマイラフは肝代謝のため、中等度肝機能低下では50mgへの減量、重度では使用禁止となります。オルミエントでは肝機能による明確な使用制限は設定されていません。
併用薬との相互作用。
スマイラフは「併用薬の問題が少ない」という特徴があります。一方、オルミエントではプロベネシドとの併用注意があります。多剤併用が必要な患者では、薬物相互作用を考慮した選択が重要となります。
患者のライフスタイル。
両薬剤とも1日1回投与のため服薬アドヒアランスは良好ですが、スマイラフは食後服用、オルミエントは食事に関係なく服用可能という違いがあります。患者の生活パターンに合わせた選択も考慮すべき点です。
用量調整の柔軟性。
スマイラフでは150mg、100mg、50mgの3段階調整が可能です。オルミエントは4mgと2mgの2段階調整となります。より細かな用量調整を必要とする患者では、スマイラフの方が有利な場合があります。