セントジョーンズワート ハーブティーの効果と医療従事者への注意点

セントジョーンズワートのハーブティーに含まれる有効成分ヒペリシンとヒペリフォリンの抗うつ作用から、薬物相互作用まで医療従事者が知るべき重要な情報をまとめました。患者への適切な指導のため理解しておくべき知識とは?

セントジョーンズワート ハーブティー医療従事者向け基礎知識

セントジョーンズワートの基本情報
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学名と別名

Hypericum perforatumセイヨウオトギリソウとして知られる多年草

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主要成分

ヒペリシン、ヒペリフォリン、フラボノイドが抗うつ作用に関与

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医療注意点

多数の薬物との相互作用があり処方薬確認が必須

セントジョーンズワート ハーブティーの薬理学的特性

セントジョーンズワート(Hypericum perforatum)は、古代ギリシャ時代から使用されてきた西洋オトギリソウ科の多年草です。このハーブティーの主要な薬理活性成分は、ナフトジアンスロン類のヒペリシン(hypericin)とフロログルシノール誘導体のヒペリフォリン(hyperforin)、そしてフラボノイド類です。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2782080/

 

ヒペリフォリンは神経伝達物質の再取り込み阻害作用を示し、特にセロトニン、ドパミン、ノルアドレナリンの細胞外濃度を増加させます。この機序により、軽度から中等度のうつ状態に対する改善効果が期待されています。臨床研究では、23の無作為化比較試験において総数2,745名を対象とした検証が行われ、大部分の試験でプラセボに対する有意な効果が確認されています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC1885130/

 

一方で、セントジョーンズワートは薬物代謝酵素シトクロムP450 3A4を誘導することが知られており、併用薬物の血中濃度を25~50%低下させる可能性があります。そのため医療従事者にとって、患者の服薬状況を詳細に確認することが重要となります。

セントジョーンズワート ハーブティーの抗うつ効果と作用機序

セントジョーンズワートハーブティーの抗うつ効果は、複数の神経伝達物質系への多面的な作用によって発現します。主要成分であるヒペリシンは、脳内のセロトニン濃度を高める作用があり、これによって気分の改善や不安の軽減がもたらされます。
参考)https://comlabollc.co.jp/blog/2023/02/28/%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%83%88%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%81%86%E3%81%A4%E7%97%85/

 

ドイツの臨床現場では、患者が「イライラする、ストレスを感じる、体がだるい、やる気が起きない」などの軽度うつ症状を示した際に、セントジョーンズワートが処方されることが多いとされています。アメリカでは「サンシャインサプリメント」として販売実績No.1を誇り、季節性情緒障害(SAD)や軽度から中度のうつ病治療に広く使用されています。
参考)https://shizen.thebase.in/items/318200

 

フルオキセチンとの比較試験では、セントジョーンズワートは同等の抗うつ効果を示しながら、特に不安症状を伴う抑うつ患者において、SSRIよりも高い安全性と耐容性を示すことが報告されています。さらに、メラトニン分泌を高める作用により、不眠の解消にも効果的です。

セントジョーンズワート ハーブティーと薬物相互作用の臨床的意義

セントジョーンズワートハーブティーの最も重要な医療上の問題は、多数の処方薬との相互作用です。特に以下の薬物との併用時には重篤な影響が懸念されます:
参考)https://www.ochiaiherb.com/SHOP/stjohns30.html

 

重要な相互作用薬物

  • 抗HIV薬(効果減弱により治療失敗のリスク)
  • 血液凝固防止薬(出血リスクの変動)
  • 強心薬(不整脈や心不全のリスク)
  • 免疫抑制薬(移植拒絶反応のリスク)
  • 経口避妊薬(避妊効果の低下)
  • 抗てんかん薬(発作コントロール悪化)

これらの相互作用は、セントジョーンズワートがCYP3A4を誘導することで、併用薬物の代謝が促進され血中濃度が低下することに起因します。臨床的には、患者がセントジョーンズワートを摂取していることを申告しない場合も多いため、定期的な服薬歴の確認が必要です。

セントジョーンズワート ハーブティーの安全性プロファイルと副作用

セントジョーンズワートハーブティーは一般的に良好な安全性プロファイルを示しますが、いくつかの副作用が報告されています。主な副作用として以下が挙げられます:
参考)https://www.kusurinomadoguchi.com/column/articles/st-johns-wort-pickup/

 

軽度の副作用 🔸

  • 不眠、不安感
  • 口渇、めまい
  • 消化器症状(胃腸不快感)
  • 疲労感、頭痛

重要な副作用 ⚠️

  • 日光過敏症(長期使用時)
  • 口腔乾燥、便秘
  • 双極性障害患者での躁状態誘発

特に日光過敏症は、ヒペリシンの光感作作用によって引き起こされ、まれに長期間の使用や大量摂取で発現する可能性があります。そのため、患者には目安量を守った摂取と、強い日光への曝露を避けるよう指導することが重要です。
妊娠中の使用については、厚生労働省により先天異常の可能性が示唆されているため使用を避けるべきとされています。授乳中も乳児の腹痛や傾眠傾向を引き起こす可能性があるため禁忌とされています。

セントジョーンズワート ハーブティーの独自効果:神経痛と更年期症状への応用

セントジョーンズワートハーブティーには、抗うつ効果以外にも注目すべき独自の治療効果があります。抗炎症作用と神経鎮静作用により、神経痛や筋肉痛の軽減に効果を示すことが知られています。
参考)https://www.medicalherb.or.jp/archives/162419

 

更年期症状への効果 🌸
セントジョーンズワートは更年期障害の治療において特筆すべき効果を示します。ホルモンバランスを整える作用により、更年期の抑うつや疲労感、不眠などの改善に有効です。さらに、中年女性の性的感覚を高める作用も示唆されており、更年期女性のQOL向上に寄与する可能性があります。
月経前症候群(PMS)への応用 💭
PMS症状の軽減においても効果が確認されており、無作為化二重盲検試験では症状の期間と重症度の両方を軽減することが報告されています。神経系の回復作用とホルモン調整作用の相乗効果により、PMSのイライラや精神不安定の改善に有効です。
外用応用の可能性 🩹
ハーブティーとしての内服以外に、セントジョーンズワートは外用としても活用されます。チンキ剤や浸出油として、切り傷、すり傷、やけど、筋違い、捻挫などの手当てに用いられており、創傷治癒促進効果が報告されています。
これらの多面的な効果により、セントジョーンズワートは単なる抗うつハーブを超えた包括的な治療選択肢として位置づけられています。ただし、これらの効果を期待する際も、前述の薬物相互作用や副作用への十分な注意が必要です。

 

日本メディカルハーブ協会によるセントジョンズワートの詳細な臨床データと安全性情報
MSDマニュアルによるセントジョーンズワートの薬物相互作用と副作用の詳細解説