日本でペントキシフィリンとして承認されていた薬剤は、再評価の結果、事実上「すでに国内で販売終了」となっており、現在は個人輸入や海外製品でのみ入手できる状況です。

ペントキシフィリンの代表的な商品名はトレンタール(Trental)です。 ヘキスト・マリオン・ルセル株式会社(現サノフィ系)が開発し、日本では「トレンタール錠」として販売されていました。 沢井製薬のジェネリック「テクロン」なども存在していましたが、1999年9月に厚生労働省が行った脳循環代謝改善薬の再評価により、有効性が認められないとして各社製品が相次いで販売中止となりました。
関連)https://www.mhlw.go.jp/www1/houdou/1109/h0914-1_15.html
国内ではすでに入手困難です。一方、米国ではFDAが1984年8月に承認した後も現在まで使用が続いており、後発品(ジェネリック)も多数流通しています。 海外での商品名としては「Trental」「Pentoxil」などが知られており、CAS番号は6493-05-6で識別されます。
関連)https://pharmaoffer.com/ja/api-excipient-supplier/other-hematological-agents/pentoxifylline/fda
医療従事者が本薬を処方・調剤する場面は日本国内ではほぼ存在しません。ただし、海外渡航患者の持参薬確認や、輸入薬の照会対応、文献読解など、業務上この薬剤名に遭遇するケースは十分あります。情報として正確に把握しておくことが重要です。
| 販売名 | メーカー(当時) | 地域 | 現在の状況 |
|---|---|---|---|
| トレンタール錠 | ヘキスト・マリオン・ルセル | 日本 | 販売中止(1999年再評価後) |
| テクロン | 沢井製薬 | 日本 | 販売中止 |
| Trental 400mg | サノフィ系/各社 | 米国・欧州・アジア | 現役販売中 💊 |
| Pentoxil | 各ジェネリックメーカー | 米国 | 現役販売中 |
ペントキシフィリンはキサンチン誘導体に分類される薬剤です。 同じキサンチン系薬剤(テオフィリンなど)との大きな違いは、血管拡張作用に加えて血液の流動性(レオロジー)を直接改善する点にあります。
関連)https://www.kegg.jp/entry/dr_ja:D00501
具体的には次の3つの経路で作用します。
関連)https://egnlab.com/ja/medications/Pentoxifylline
関連)https://jp.drdoping.com/blog/trental-pentoxifylline-tablets-ampoules/
関連)https://jp.drdoping.com/blog/trental-pentoxifylline-tablets-ampoules/
つまり血流改善が主な目的です。単純な血管拡張薬とは作用点が異なるということですね。この多面的な作用が、後述するさまざまな疾患への応用研究につながっています。環境でいえば「細い川の流れを良くするために、川幅を広げるだけでなく、水自体のドロドロを解消する」イメージです。
また、ペントキシフィリンはTNF-α(腫瘍壊死因子アルファ)などの炎症性サイトカインを抑制する免疫調節作用も持ちます。 この作用が、炎症性疾患や自己免疫疾患への応用を模索する研究者の注目を集めています。
関連)https://egnlab.com/ja/medications/Pentoxifylline
日本での承認適応は「脳循環改善・末梢循環障害」でしたが、海外での主な適応は末梢動脈疾患(PAD)に伴う間欠性跛行です。 間欠性跛行とは、歩行中に下肢の痛みやしびれが出て休息すると改善する状態で、PADの典型症状です。
これは意外ですね。日本では脳の薬として使われたのに、海外では「脚の血流の薬」として承認されているのです。
さらに近年、以下のような分野でも活発な研究が行われています。
関連)https://www.cochrane.org/ja/evidence/CD007677_pentoxifylline-women-endometriosis
関連)https://product.kitazato.co.jp/ja/products/sperm/pentoxifylline/
関連)https://www.touseki-ikai.or.jp/htm/05_publish/dld_doc_public/no_32-1.pdf
コクランレビュー:子宮内膜症女性に対するペントキシフィリンの有効性と安全性(日本語版)
子宮内膜症・ARTへの応用は既存の婦人科薬と全く異なるアプローチです。これは使えそうです。
本剤の副作用は主に消化管症状と中枢神経症状に分かれます。 一般的に忍容性は良好とされていますが、以下の点を把握しておく必要があります。
関連)https://www.meetaugust.ai/ja/medications/pentoxifylline-oral-route
主な副作用(頻度順)
関連)https://cloud-pharmacy.com/product/trental/
注意が必要なのは薬物相互作用です。
| 相互作用薬 | リスク | 対応 |
|---|---|---|
| 抗凝固薬(ワルファリン) | 出血リスク増大 | PT-INRの慎重なモニタリング |
| 抗血小板薬 | 出血リスク増大 | 併用時は慎重投与 |
| 降圧薬 | 降圧効果増強 | 血圧モニタリング強化 |
| テオフィリン | テオフィリン血中濃度上昇 | 血中濃度測定が条件 |
出血リスクが条件です。抗凝固療法中の患者に使用する際は特に慎重な判断が求められます。
また、腎機能障害患者では代謝産物が蓄積しやすいため、用量調節を検討する必要があります。透析患者への使用は研究段階であり、根拠に基づいた判断が必要です。
関連)https://www.touseki-ikai.or.jp/htm/05_publish/dld_doc_public/no_32-1.pdf
厚生労働省:脳循環代謝改善薬ペントキシフィリンに係る再評価結果について(1999年)
上記の厚労省資料は、日本国内での販売中止に至った再評価の背景と、当時承認されていた商品名・会社名を確認する際の参考になります。
国内販売がない薬剤であっても、医療従事者が対応を求められる場面は確実に存在します。これが現場での現実です。
具体的には次のような場面です。
関連)https://product.kitazato.co.jp/ja/products/sperm/pentoxifylline/
持参薬照会を1件正確に処理できるだけで、患者安全に直結します。「国内未販売だから知らなくていい」という判断が、実は大きな情報格差につながるのです。
医薬品データベース(KEGG DRUGなど)でCAS番号6493-05-6または「Pentoxifylline」で検索すれば、英語名・商品名・構造情報をすぐに確認できます。 まずデータベースを開くことが、現場での最速の対応です。
関連)https://www.kegg.jp/entry/dr_ja:D00501
KEGG DRUG:ペントキシフィリンのデータベースページ(一般名・商品名・適応・相互作用情報を一覧で確認可能)
また、北里コーポレーションが販売する生殖補助医療用製品「Pentoxifylline」(REF: 94215)は、精子無力症・TESE/PESA後の精子処理用として国内でも流通しており、生殖専門施設では実際に使用されている製品です。 脳循環薬としての歴史と、生殖医療ツールとしての現在という両面を理解しておくと、患者照会や他職種連携の際に正確な情報提供ができます。
関連)https://product.kitazato.co.jp/ja/products/sperm/pentoxifylline/
北里コーポレーション:Pentoxifylline(精子調整用メディウム)製品ページ
強ミヤリサン 錠 330錠 [指定医薬部外品]