軟膏スチブロン(現:ジフルプレドナート軟膏0.05%「イワキ」)は、副腎皮質ステロイド外用剤として皮膚疾患の治療に広く使用されています。医療従事者として適切な処方と患者指導を行うためには、添付文書に記載された副作用情報を正確に理解することが不可欠です。
本剤の副作用発現頻度については、使用成績調査等の副作用発現頻度が明確となる調査が実施されていないため、多くの副作用は「頻度不明」として分類されています。しかし、これは副作用がないということではなく、慎重な観察と適切な患者指導が求められることを意味します。
軟膏スチブロンで最も注意すべき重大な副作用は、眼瞼皮膚への使用に際して発現する眼圧亢進と緑内障です。特に眼瞼部への長期使用や大量使用時には、ステロイドが眼球内に浸透し、眼圧上昇を引き起こす可能性があります。
また、大量又は長期にわたる広範囲の使用、密封法(ODT)により、後嚢白内障や緑内障等が現れるおそれがあります。これらの眼科的合併症は、一度発現すると回復が困難な場合が多いため、眼瞼部への使用時は特に慎重な経過観察が必要です。
医療従事者は、眼瞼部への処方時には使用期間と使用量を厳格に管理し、患者に対して異常を感じた場合の速やかな受診を指導する必要があります。また、定期的な眼科受診の必要性についても説明することが重要です。
軟膏スチブロンの使用により、皮膚の免疫機能が抑制されることで、様々な感染症が発現する可能性があります。具体的には、細菌感染症(毛嚢炎、伝染性膿痂疹等)、皮膚の真菌症(カンジダ症、白癬等)、ウイルス感染症などが報告されています。
特に密封法(ODT)を行った場合には、これらの感染症がより起こりやすくなります。これは、密封により皮膚の湿度と温度が上昇し、病原微生物の増殖に適した環境が形成されるためです。
感染症が疑われる症状が現れた場合には、適切な抗真菌剤や抗菌剤等を併用し、症状が速やかに改善しない場合には使用を中止することが添付文書に明記されています。医療従事者は、患者に対して感染症の初期症状について教育し、早期発見・早期対応の重要性を伝える必要があります。
軟膏スチブロンの長期連用により、特徴的なステロイド皮膚症状が現れることがあります。これには毛細血管拡張、皮膚萎縮、紫斑といった「ステロイド皮膚」と呼ばれる症状群が含まれます。
また、痤瘡様発疹、色素脱失、軟毛の濃色化等も報告されています。これらの症状は、ステロイドの長期使用により皮膚の構造や機能に変化が生じることで発現します。特に皮膚萎縮は、一度発現すると完全な回復が困難な場合があるため、予防が最も重要です。
国内臨床試験では、副作用発現頻度は3.60%で、主な副作用は毛嚢炎・せつが1.75%、ざ瘡様発疹が0.97%でした。これらの症状が現れた場合には、徐々にその使用を差し控え、副腎皮質ステロイドを含有しない薬剤に切り替えることが推奨されています。
軟膏スチブロンの使用により、紅斑及び接触皮膚炎等の過敏症反応が現れることがあります。これらの症状は、薬剤に対するアレルギー反応として発現し、症状が現れた場合には直ちに使用を中止する必要があります。
添付文書では、本剤の成分に対して過敏症の既往歴のある患者への使用は禁忌とされています。また、細菌、真菌、ウイルス皮膚感染症がある場合も、感染症を悪化させるおそれがあるため禁忌です。
その他の禁忌事項として、鼓膜に穿孔のある湿疹性外耳道炎(穿孔部位の治癒の遅延及び感染のおそれ)、潰瘍(ベーチェット病は除く)、第2度深在性以上の熱傷・凍傷(皮膚の再生が抑制され、治癒が遅延するおそれ)が挙げられています。
医療従事者は、軟膏スチブロンを処方する際に、患者の年齢、性別、皮膚の状態、使用部位等を総合的に評価する必要があります。特に妊婦又は妊娠の可能性のある女性に対しては、大量または長期にわたる広範囲の使用を避ける必要があります。
小児への使用においては、大量・長期使用または密封法により発育障害のおそれがあるため、特に注意が必要です。おむつの使用は密封法と同様の効果があるため、乳幼児への処方時には保護者への十分な説明が不可欠です。
患者指導においては、適切な使用量(FTU:フィンガーチップユニット)の説明、清潔な手での塗布、擦り込まずに優しく伸ばす方法、化粧下やひげそり後の使用禁止等について具体的に説明する必要があります。
また、症状改善後はできるだけ速やかに使用を中止すること、症状の改善がみられない場合又は症状の悪化をみる場合は使用を中止することについても患者に伝える必要があります。定期的な診察により、副作用の早期発見と適切な対応を行うことが、安全で効果的な治療につながります。