転移があっても、外科切除をあきらめると患者の予後が2倍以上悪くなる可能性があります。

膵・消化管神経内分泌腫瘍(GEP-NEN)診療ガイドライン2026年第3版は、2019年の第2版から6年半ぶりの大改訂です。
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従来の第2版までは「外科治療」「内科治療」「集学的治療」という治療モダリティ別の構成でした。しかし第3版では、膵臓・食道・胃・十二指腸・小腸・虫垂・結腸・直腸・全身療法・遺伝性という原発巣別の構成に根本から見直されています。
なぜこの変更が重要なのか?臓器ごとに適切な術式・内視鏡治療の適応が異なるためです。たとえば直腸NETと膵NETでは、同じG1グレードであっても手術適応のサイズ基準がまったく異なります。これが原則です。
臨床現場では「NETだからすべて同じ対応」という誤解が生じやすいですね。この改訂はその誤解を体系的に解消するための構造変更と言えます。
金原出版:膵・消化管NEN診療ガイドライン2026年第3版 CQ/BQ一覧(各章の臨床疑問と推奨文をまとめて確認できます)
GEP-NENの悪性度分類は2019年のWHO分類(消化器)改訂で大きく変わりました。特に注意が必要なのが、NET G3という概念の登場です。
関連)https://www.ncc.go.jp/jp/rcc/about/neuroendocrine_tumor_2/index.html
Ki-67指数が20%超かつ高分化型の腫瘍がNET G3に分類されます。一方、同じKi-67 >20%でも低分化型はNEC(神経内分泌がん)G3となります。見た目の数値は同じでも、治療方針は全く異なります。意外ですね。
具体的には以下の通りです。
| 分類 | 分化度 | Ki-67指数 | 核分裂像(/10HPF) | 主な治療戦略 |
|---|---|---|---|---|
| NET G1 | 高分化型 | <3% | <2 | 経過観察・手術・SSA |
| NET G2 | 高分化型 | 3〜20% | 2〜20 | 手術・エベロリムス・PRRT |
| NET G3 | 高分化型 | >20% | >20 | 手術・薬物療法(NEC準拠は不可) |
| NEC G3 | 低分化型 | >20% | >20 | プラチナ系化学療法(1st line) |
NET G3をNECと誤診してプラチナ系化学療法を選択すると、有効な治療機会を失います。病理医との連携が条件です。
生検検体のみでの判断には限界があり、ガイドラインでは肝転移巣の追加生検(CQ3・CQ4)を検討することも推奨しています。
国立がん研究センター:膵・消化管神経内分泌腫瘍 解説ページ(WHO分類の詳細・TNM分類・機能性NET一覧を医療者向けに解説)
放射性核種標識ペプチド療法(PRRT)は、2021年8月に日本で保険承認されました。それまでは欧米に渡航しないと受けられない治療でした。これは使えそうです。
関連)https://www.ncc.go.jp/jp/rcc/about/neuroendocrine_tumor_2/index.html
PRRTはソマトスタチン受容体(SSTR)に高親和性のペプチドに放射性同位元素を結合させ、全身投与する治療です。欧州の臨床試験(NETTER-1)では、中腸原発NETに対する有効性が確認されています。
治療前に必ず必要なのが、ソマトスタチン受容体シンチグラフィー(SRS)またはSSTR-PETによる受容体発現の確認です。
🔑 適応評価のフロー(要点)。
SRS検査前のSSA休薬を怠ると、受容体がブロックされて偽陰性となり、PRRT適応を見落とす可能性があります。休薬期間の確認は必須です。
「転移があれば手術は無意味」という判断は、NETにおいては正しくありません。これが読者の多くが持ちやすい誤解です。
膵NETにおいてガイドラインは、遠隔転移(特に肝転移)を伴う場合でも外科的切除を「検討する」と明記しています(CQ5)。さらに、完全切除が困難な症例でも減量切除による機能性症状の緩和や予後延長が期待できるとされています(CQ6)。
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ただし、適応判断は慎重に行う必要があります。
🏥 転移例への外科対応の考え方。
ガイドライン第3版では「NEN患者の集約化(CQ1)」も推奨されています。専門施設での多職種チーム医療(MDT)が治療アウトカムの改善に寄与するという根拠に基づきます。つまり、地域の一般病院では難しい判断を含む症例は、専門センターへの紹介が推奨される、ということですね。
膵・消化管NET全体の約5〜10%は、多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1)やフォン・ヒッペル・リンドウ病(VHL)などの遺伝性腫瘍症候群を背景に発症します。
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見逃しが特に多いのがMEN1です。MEN1の発症頻度はおよそ3万人に1人と推定されていますが、膵・消化管NETを発症する割合は50〜70%と高く、見逃すと副甲状腺・下垂体病変の早期治療機会を失います。
関連)https://www.ncc.go.jp/jp/rcc/about/neuroendocrine_tumor_2/index.html
以下の状況ではMEN1を積極的に疑う必要があります。
VHL病に伴う膵NETは比較的おとなしい経過をたどることが多いです。しかしガイドラインでは、最大腫瘍径2cm以上かつ腫瘍ダブリングタイムが500日以下を目安に切除を検討するよう推奨しています。
関連)https://www.ncc.go.jp/jp/rcc/about/neuroendocrine_tumor_2/index.html
遺伝性疾患の確定診断が得られた場合には、血縁者への遺伝学的スクリーニングにも踏み込む必要があります。患者本人だけでなく、その家族全体を視野に入れた診療が原則です。
国立がん研究センター 希少がんセンター:MEN1・VHL合併NETの特徴と遺伝性腫瘍症候群のスクリーニングに関する解説(医療従事者向け最新情報)
関連)https://www.ncc.go.jp/jp/rcc/about/neuroendocrine_tumor_2/index.html
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