モンテルカストは、ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)に分類される薬剤で、気管支喘息やアレルギー性鼻炎の治療に広く使用されています。主に以下の疾患に対して効果を発揮します。
気管支喘息においては、気道の炎症を抑制し、気管支平滑筋の収縮を緩和することで症状改善に寄与します。特に就寝前の服用により、夜間・早朝の喘息症状コントロールに有効とされています。
アレルギー性鼻炎に対しては、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状を軽減する効果があります。季節性アレルギー性鼻炎の臨床試験では、プラセボと比較して鼻症状スコアの有意な改善が確認されています。
モンテルカストの製剤には以下のような種類があり、年齢や症状に応じて使い分けられています。
臨床試験データによると、気管支喘息患者を対象とした国内第III相試験では、モンテルカスト10mg群の最終全般改善度の有効率は58.5%(83/142例)であり、比較対照薬のプランルカスト水和物450mg群の46.0%(63/137例)に対する非劣性が検証されています。
また、季節性アレルギー性鼻炎患者における臨床試験では、モンテルカスト5mgおよび10mg投与群で鼻症状スコアがプラセボ群と比較して有意に改善したことが報告されています。
モンテルカスト服用時に注意すべき重大な副作用には以下のようなものがあります。これらの副作用は頻度不明とされていますが、発現した場合には早急な対応が必要です。
これらの重篤な副作用の初期症状としては、皮膚症状(発疹、紅斑、水疱など)や全身症状(発熱、倦怠感)、肝機能検査値の異常(AST、ALT、γ-GTP上昇など)が現れることがあります。
また、モンテルカスト製剤との因果関係は明確ではないものの、精神神経系の症状として、うつ病、自殺念慮、自殺および攻撃的行動などが報告されていることにも注意が必要です。処方の際には患者の精神状態を十分に観察し、異常が認められた場合には適切な処置を行うことが重要です。
さらに、ロイコトリエン拮抗剤使用時にChurg-Strauss症候群様の血管炎を生じたとの報告があり、これらの症状はおおむね経口ステロイド剤の減量・中止時に生じています。モンテルカスト使用時には、特に好酸球数の推移やしびれ、四肢脱力、発熱、関節痛、肺浸潤影などの血管炎症状に注意が必要です。
モンテルカスト服用中に比較的頻度の高い副作用としては、以下のようなものが報告されています。これらの副作用の頻度は、錠剤、チュアブル錠剤、細粒剤での国内臨床試験の結果を合わせて算出されており、0.1~5%未満とされています。
【過敏症関連】
【精神神経系】
【消化器系】
【肝臓】
【その他】
臨床試験のデータによると、気管支喘息患者を対象とした試験での副作用発現率は11.0%(20/182例)であり、主な副作用は胸やけ3例(1.6%)、眼瞼浮腫、胃痛、胃不快感、食欲不振、嘔気、下痢が各2例(1.1%)でした。
また、季節性アレルギー性鼻炎患者における試験では、副作用発現率は5mg群で4.7%(15/318例)、10mg群で4.2%(13/310例)であり、5mg群では1%以上発現した副作用はなく、10mg群では口渇4例(1.3%)、頭痛、傾眠が各3例(1.0%)でした。
臨床検査値異常の副作用発現率は、5mg群で1.9%(6/318例)、10mg群で5.8%(18/310例)であり、主な異常値としては10mg群で尿潜血陽性、尿中蛋白陽性が各4例(1.3%)、血中ビリルビン増加、血中トリグリセリド増加が各3例(1.0%)でした。
モンテルカストの有効性は、複数の国内外の臨床試験によって検証されています。ここでは、気管支喘息とアレルギー性鼻炎それぞれの適応症における臨床試験データを詳しく見ていきましょう。
【気管支喘息における有効性】
国内第III相二重盲検比較試験のデータによると、気管支喘息患者に対するモンテルカストフィルムコーティング錠10mg群の最終全般改善度の有効率は58.5%(83/142例)でした。これは比較対照薬であるプランルカスト水和物450mg群の46.0%(63/137例)に対して非劣性が検証された結果です(非劣性マージンΔ=10%)。
この結果から、モンテルカストは既存のロイコトリエン拮抗薬と同等以上の効果を持ち、気管支喘息の症状コントロールに有効であることが示されています。特に夜間や早朝の喘息症状に対する改善効果が認められており、就寝前の服用が推奨されています。
【アレルギー性鼻炎における有効性】
季節性アレルギー性鼻炎患者における第II相至適用量設定試験(約900例)では、総合鼻症状点数(日中鼻症状点数と夜間鼻症状点数の平均)のベースラインからの変化量に関して、モンテルカストフィルムコーティング錠5mg群で-0.47点、10mg群で-0.47点という結果が得られました。これはプラセボ群(-0.37点)と比較して有意に改善したことを示しています。
また、第III相二重盲検比較試験(1,375例)では、モンテルカスト5mgおよび10mg群の総合鼻症状点数の変化量(-0.19点)が、プランルカスト水和物450mg群(-0.20点)に対して非劣性であることが検証されました(非劣性マージンΔ=0.085点)。
これらの結果から、モンテルカストはアレルギー性鼻炎の症状改善においても既存治療と同等の効果を持ち、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状緩和に有効であることが確認されています。
実臨床では、患者の症状の重症度や併存疾患、服薬コンプライアンスなどを考慮して、モンテルカストの処方を検討することが重要です。効果が認められない場合には、漫然と長期にわたり投与しないように注意する必要があります。
モンテルカストは慢性疾患である気管支喘息やアレルギー性鼻炎の治療に用いられるため、比較的長期にわたって服用されることが多い薬剤です。長期使用に際しては、以下のような注意点を考慮する必要があります。
【長期使用時の注意点】
モンテルカスト使用中は、定期的に肝機能検査を行うことが推奨されます。肝機能異常やAST、ALT、γ-GTPの上昇などが副作用として報告されているため、特に長期使用時には注意が必要です。
長期使用中に、うつ病、自殺念慮、攻撃的行動などの精神神経系症状が現れる可能性があります。患者の精神状態を定期的に観察し、異常が認められた場合には投与中止や減量を検討します。
ロイコトリエン拮抗剤使用時に、Churg-Strauss症候群様の血管炎が報告されています。特に経口ステロイド剤の減量・中止時に発現リスクが高まるため、好酸球数の増加や血管炎症状(しびれ、四肢脱力、発熱、関節痛など)に注目することが重要です。
モンテルカスト投与により効果が認められない場合には、漫然と長期投与を継続せず、治療方針の見直しを検討します。
【薬物相互作用】
モンテルカストは主に薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP)2C8/2C9および3A4で代謝されるため、これらの酵素に影響を与える薬剤との併用には注意が必要です。
以下のような薬剤との相互作用が考えられます。
実際の臨床では、他剤との飲み合わせによって下痢、吐き気、胸やけ、頭痛などの症状が出現する可能性があるとされています。患者には現在服用中の薬剤(処方薬・市販薬を問わず)をすべて医師や薬剤師に伝えるよう指導することが重要です。
長期治療においては、患者の症状改善状況と副作用の発現状況を総合的に評価し、リスク・ベネフィットバランスを定期的に見直すことで、より安全で効果的な治療継続が可能となります。