麻疹(はしか)の症状と治療方法の基礎知識

麻疹(はしか)は非常に感染力の強いウイルス感染症で、特徴的な症状や合併症のリスクがあります。この記事では麻疹の症状から診断、治療法、予防法までを詳しく解説します。あなたは麻疹の予防接種を適切に受けていますか?

麻疹(はしか)の症状と治療方法

麻疹(はしか)の症状と治療方法の基礎知識
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強力な感染力

麻疹は空気感染する非常に感染力の強いウイルス感染症で、免疫がない人が接触するとほぼ確実に感染します

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特徴的な症状

発熱、カタル症状の後、コプリック斑が現れ、特徴的な発疹が全身に広がります

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対症療法中心の治療

特効薬はなく、症状を緩和する対症療法と合併症への対応が治療の中心です

麻疹(はしか)の初期症状と進行過程

麻疹(はしか)は麻疹ウイルスによって引き起こされる感染症で、特に感染力が非常に強いことで知られています。空気感染、飛沫感染、接触感染によって広がり、免疫を持たない人がウイルスに接触するとほぼ確実に感染します。麻疹の進行は以下の明確な段階を経て進みます。

 

潜伏期間
ウイルス感染から発症までの潜伏期間は約10~12日間(範囲は5~21日)です。この期間中は症状が現れず、感染に気づくことはできません。海外で感染した場合でも、帰国後に発症することがほとんどです。

 

カタル期(前駆期)
麻疹の最初の症状は一般的な風邪のような症状です。

 

  • 38℃前後の発熱
  • 咳や鼻水、喉の痛み
  • 結膜の充血(結膜炎
  • 全身の倦怠感

これらの症状は2~4日間続き、この時点では通常の風邪との区別が困難です。カタル期には感染力が最も強く、知らないうちに周囲に感染を広げてしまう時期でもあります。

 

移行期
カタル症状が始まって3日目頃になると、一時的に熱が37℃程度に下がります。しかし、この時期に口の中の頬粘膜に麻疹特有の「コプリック斑」という灰白色の小さな斑点が現れることが特徴的です。コプリック斑は麻疹の診断において重要なサインとなります。

 

発疹期
一時的に熱が下がった後、再び39℃以上の高熱が出現します。この「二峰性発熱」は麻疹の特徴的なパターンです。高熱と同時に赤い発疹が現れ始め、通常は耳の後ろや首、おでこから始まって、顔面、上肢、胸部へと急速に広がります。2日程度で全身に広がり、当初は赤く平坦な発疹ですが、徐々に周囲と融合して不整形の斑状になっていきます。

 

発疹期は麻疹の「本番」とも言える時期で、高熱、咳、鼻汁、眼脂、発疹、全身倦怠感といった症状が4~5日間続きます。インフルエンザでは発熱期間が5日程度なのに対し、麻疹では1週間以上続くことがあり、患者にとって非常に辛い期間となります。

 

回復期
全身に広がった発疹は暗赤紫色となり、徐々に消失していきます。発疹は出現した順番に退色し、色素沈着を残しながら徐々に消えていきます。熱も下がり始め、他の症状も徐々に改善していきますが、咳はやや長く続くことがあります。合併症がなければ、発症から約10日で回復に向かいます。

 

重要なのは、麻疹の感染期間は発疹が出る5日前から発疹出現後4日間とされており、特に症状が出現する前から感染力を持っていることです。これが公衆衛生上の課題となっています。

 

麻疹(はしか)の特徴的な発疹と診断方法

麻疹(はしか)の診断において、特徴的な発疹の出現パターンは重要な手がかりとなります。医療従事者が麻疹を疑い、適切に診断するための知識について詳しく見ていきましょう。

 

麻疹特有の発疹の特徴
麻疹の発疹には以下のような特徴があります。

  • 最初は耳の後ろ、首、顔面から出現し、その後体幹、四肢へと広がる
  • 発疹は赤色で、初めは扁平ですが徐々に盛り上がってくる
  • 出現後2~3日で融合し、不規則な形の斑に変化する
  • 暗赤紫色に変化した後、出現した順番に退色していく
  • 退色後も一時的に色素沈着を残す

麻疹の発疹は風疹と異なり、発熱が一旦下がった後に再び高熱と共に出現することが特徴的です。風疹では初めの発熱と同時に発疹が出るケースが多く、この点で両者を区別することができます。

 

コプリック斑の確認
麻疹診断の決め手となるのが、口腔内の頬粘膜に現れる「コプリック斑」です。これは周囲に赤みを帯びた灰白色の小さな斑点で、発疹が出現する1~2日前に現れ、その後2~3日で消失します。コプリック斑は麻疹に特異的なサインで、これを確認できれば診断の確実性が高まります。

 

コプリック斑の観察方法。

  1. 明るい照明の下で患者の口腔内を観察
  2. 特に頬粘膜(臼歯対向部)を中心に確認
  3. 白色~灰白色の小さな点状の斑点を探す
  4. 周囲に発赤を伴っていることが特徴

麻疹の検査診断
臨床的な症状だけでは確定診断が難しい場合、以下の検査を行います。

  1. 抗体検査
    • IgM抗体検査:発疹出現後4日~4週間以内に陽性となり、急性感染を示す
    • IgG抗体検査:ペア血清で急性期と回復期の抗体価の有意な上昇を確認
  2. PCR検査
    • 咽頭拭い液、血液、尿の検体を用いる
    • 感度が高く、1日で結果が判明する
    • 保健所を通じて地方衛生研究所に検査を依頼する必要がある
  3. ウイルス分離
    • 麻疹ウイルスの分離・同定により確定診断
    • 遺伝子型の特定により、国内由来か海外由来かの判別も可能