システマティックレビューとは、明確に作られたクエスチョンに対し、系統的で明示的な方法を用いて適切な研究を同定、選択、評価を行なうことで作成するレビューです。従来のナラティブレビューが「偉い先生の御意見」として主観的であったのに対し、システマティックレビューは客観的な基準に基づいて実施されます。
参考)https://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/kid/clinicaljournalclub8.html
📌 システマティックレビューの主な特徴
システマティックレビューでは、ランダム化比較試験(RCT)などの質の高い複数の臨床研究を、複数の専門家や研究者が一定の基準と一定の方法に基づいてとりまとめます。このプロセスにおいて重要なのは、「都合の悪い」エビデンスも含めて評価することで、バイアスの排除を図ることです。
参考)https://www.jspt.or.jp/ebpt_glossary/systematic-review.html
メタアナリシスとは、特定の臨床上の疑問に答えるために、収集した効果指標の値を統計学的に統合する解析手法です。過去に行われた複数の臨床試験の結果を統計学の手法を用いて統合し、全体としてどのような傾向が見られるかを解析する研究方法と定義されています。
🔬 メタアナリシスの統計的特徴
従来のfixed effect modelが研究間の差に偶然誤差を仮定していたのに対し、近年では各研究間の異質性をモデル化したrandom effect modelやBayesian modelが中心となってきています。さらに、3種以上の薬剤を比較するネットワーク・メタアナリシスなどの新しい統計手法も登場し、医学分野で数多くの報告がなされています。
参考)https://www.showa-kokyuki.com/medical_treatment/75/
両者の関係を理解する上で重要なのは、「メタアナリシスはシステマティックレビューの一部分である」という点です。広義には、システマティックレビューもメタアナリシスと同義であるが、狭義には、システマティックレビューの一部、すなわち個々の論文の結果を統合するための統計的方法がメタアナリシスです。
参考)https://waidai-csc.jp/updata/2018/11/EZRmeta.pdf
📋 研究方法の比較表
項目 | ナラティブレビュー | システマティックレビュー | メタアナリシス |
---|---|---|---|
主観性・客観性 | 主観的 | 客観的 | 客観的 |
文献検索方法 | 記載なし | 系統的・明示的 | 系統的・明示的 |
評価方法 | 質的 | 質的または量的 | 量的(必須) |
統計手法 | なし | あり・なし | 必ずあり |
再現性 | 低い | 高い | 高い |
システマティックレビューの中には、メタアナリシスを含むものもあれば含まないものもあります。例えば、Brugada症候群患者に対するカテーテルアブレーションの研究では、数値の統計学的な統合は行われていないため、タイトルはシステマティックレビューのみとなっています。
参考)https://sunrise-lab.net/overseas-reports/h_kawakami/%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%9E%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%83%93%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%81%A8%E3%83%A1%E3%82%BF%E3%82%A2%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%82%B7%E3%82%B9/
システマティックレビューにおいて特に重要なのは、定性的評価の段階です。研究や除外された研究の数、対象者の特性と人数、比較と介入の方法、バイアスリスクの評価などを記述し、深い理解を与えるために定性的にまとめることが求められます。
🔍 定性的評価の主要項目
特に無作為化比較試験のメタアナリシスを行う場合、含まれた一次研究にバイアスがあるかどうかのリスク評価を行う必要があります。この評価により、定量的統合が適切かどうかを判断し、メタアナリシス実施の妥当性を検討します。
参考)https://www.jahbs.info/journal/pdf/vol38_1/vol38_1_5.pdf
システマティックレビューとメタアナリシスの歴史は、1904年にPearsonが腸チフスに対するワクチンの既存データを再検討し、統合を試みたことに始まるとされています。しかし、臨床試験の評価にメタアナリシスが急速に広まる契機となったのは、1985年のYusufらによる心筋梗塞後のβブロッカーの長期投与に関するメタアナリシスです。
📈 発展の歴史的変遷
コクラン共同計画の設立により、システマティックレビューの標準化が進み、現在では質の高いエビデンス統合の代表的な手法として確立されています。また、PRISMA声明(Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses)により、報告の質の向上が図られています。
参考)http://www.jstage.jst.go.jp/article/johokanri/54/5/54_5_254/_article/-char/ja/
近年では、ベイズ統計学の枠組みの下でのBayesian modelが注目されており、事前信念(prior belief)を分析に組み込むことが可能になっています。これにより、より柔軟で包括的な統合解析が実現されています。
参考)https://jp.edanz.com/blog/bayesian-analysis