ジヒドロコデインとコデインは、どちらもモルヒネから誘導された麻薬性鎮咳薬で、現在の日本の臨床現場において広く使用されています。これらの薬剤は中枢性鎮咳薬として分類され、延髄にある咳中枢に直接作用することで咳反射を抑制します。
参考)https://www.phamnote.com/2019/04/blog-post_29.html
両薬剤の最も重要な違いは、鎮咳効果の力価にあります。ジヒドロコデインはコデインの約2倍(1.4~2倍)の力価を有しており、より少ない用量で同等の鎮咳効果を発揮します。
参考)https://hokuto.app/post/z1sbPA46CuXWwoMSV5Io
両薬剤の作用機序は質的にはモルヒネに準じており、主としてμオピオイド受容体(MOR)に結合して効果を発現します。σ受容体およびκ受容体に対する親和性も有していますが、μ受容体への結合が主たる作用機序となっています。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00057806.pdf
コデインの作用機序:
参考)https://eharaclinic.com/topics/post/1042
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3996141/
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC1368572/
ジヒドロコデインの作用機序:
臨床における鎮咳効果の比較では、以下のような特徴があります。
力価の違い:
参考)https://www.jspm.ne.jp/files/guideline/respira_2016/02_08.pdf
標準的な用法用量:
| 薬剤名 | 1回用量 | 1日用量 | 服用回数 |
|---|---|---|---|
| コデインリン酸塩 | 20mg | 60mg | 3回 |
| ジヒドロコデインリン酸塩 | 10mg | 30mg | 3回 |
この用量設定により、臨床用量では両薬剤の鎮咳効果は同等になるよう調整されています。ただし、ジヒドロコデインの方が服用量が少なくて済むため、患者のコンプライアンス向上に寄与する可能性があります。
効果の持続時間と発現:
参考)https://pharmacist.m3.com/column/special_feature/6595
両薬剤の副作用プロファイルは類似していますが、用量依存性の違いがあります。
共通する主要副作用:
参考)https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00057008
重大な副作用:
参考)https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc2795amp;dataType=1amp;pageNo=1
副作用頻度の比較:
添付文書上では両薬剤とも具体的な副作用発現頻度の記載はありませんが、ジヒドロコデインは使用量が半分であることから、用量依存性の副作用については理論的には軽減される可能性があります。
両薬剤は「濫用などの恐れのある医薬品」に指定されており、長期使用による依存性が重要な臨床上の問題となっています。
依存性のメカニズム:
臨床的な注意点:
リスク軽減策:
2017年の厚生労働省通知により、コデイン類の小児における使用に関して重要な制限が設けられました。
使用制限の内容:
制限の背景:
日本での現状:
日本人では欧米と比較して遺伝学的に呼吸抑制のリスクが低いと推定されているため、直ちに使用禁止とはならなかったものの、予防的観点から制限が設けられています。
医療従事者として、これらの制限を遵守し、特に小児や若年者への処方時には十分な注意が必要です。また、保護者への適切な説明と同意取得も重要な責務となります。
両薬剤の使い分けにおいては、患者の年齢、基礎疾患、併用薬、過去の薬物治療歴を総合的に評価し、最適な選択を行うことが求められます。特に高齢者や呼吸器疾患を有する患者では、開始用量を低めに設定し、慎重な観察のもとで治療を進めることが重要です。