フェブリクで脱毛が起きても、実は休薬不要なケースが7割以上あります。
フェブリク(フェブキソスタット)は非プリン型の選択的キサンチンオキシダーゼ阻害薬で、高尿酸血症・痛風治療の第一選択薬のひとつです。 添付文書の副作用一覧では、皮膚系として「発疹(1%未満)・皮膚そう痒症(1%未満)・紅斑(1%未満)・蕁麻疹(頻度不明)・脱毛(頻度不明)」が列挙されています。carenet+1
「頻度不明」というカテゴリは、承認後の自発報告などから得られた情報を反映するものです。つまり発現数の分母が把握できないため、臨床試験で確率が計算されたわけではありません。この点は患者への説明時に正確に伝えることが重要です。
重大な副作用として認識すべきは、肝機能障害と過敏症症候群(全身性皮疹・発疹を伴う)の2つです。 脱毛は重篤な副作用には分類されていませんが、患者のQOLに直結するため見落とさないよう注意が必要です。
参考)フェブリク(フェブキソスタット)の効果や副作用、痛風への注意…
また「その他の副作用」として、脱毛と同列に「味覚障害・女性化乳房・末梢神経障害」なども報告されています。 これらはまとめて「次回受診時に医師へ伝える副作用」と位置づけられています。
参考)フェブキソスタット (フェブキソスタット) 第一三共エスファ…
参考:フェブリクの添付文書(副作用の分類・頻度を確認できます)
フェブリク錠の効能・副作用 | CareNet医療用医薬品検索
薬剤性脱毛は発生メカニズムにより、大きく成長期脱毛と休止期脱毛の2種類に分けられます。 成長期脱毛は抗がん剤のように毛母細胞の細胞分裂を直接阻害するもので、休止期脱毛は代謝的ストレスや栄養・ホルモン変化によって毛周期が休止期に移行するものです。
参考)http://jascc.jp/wp/wp-content/uploads/2021/07/53b69cc1c331a2e17481627604503d8c.pdf
フェブリクによる脱毛は機序が公式に確立されていませんが、報告例の傾向から「休止期脱毛」に近いパターンと考えられています。休止期脱毛は服薬開始から2〜4か月後に脱毛が顕在化し、原因除去後3〜6か月かけて回復することが多いです。
重要な点です。フェブキソスタットは尿酸産生を抑える過程で、プリン代謝全体に影響します。一部の研究では、キサンチンオキシダーゼ阻害により細胞の酸化還元バランスが変化し、毛包への間接的影響が示唆されています。
ただし現時点では「直接の証明」ではなく、あくまで推察の段階です。機序が不明な副作用は患者への説明が難しいですが、「まれに生じる可能性があること」と「多くの場合、可逆性であること」の2点を丁寧に伝えることがポイントです。
| 脱毛の種類 | 発現時期 | 特徴 | 代表的な原因薬 |
|---|---|---|---|
| 成長期脱毛 | 服薬後1〜3週 | 急激な大量脱毛、可逆性あり | 抗がん剤(パクリタキセルなど) |
| 休止期脱毛 | 服薬後2〜4か月 | びまん性・全頭性、徐々に進行 | 抗凝固薬・降圧薬・フェブリクなど |
参考:薬剤性脱毛症の分類・機序(皮膚科専門医向けの詳細解説)
薬剤性脱毛症の原因と検査方法 | 皮膚科専門サイト
ここが臨床でもっとも重要なステップです。フェブリク服用中の患者が「髪が抜ける」と訴えた場合、原因をフェブリクだと即断するのは危険です。
高尿酸血症・痛風患者は代謝疾患との合併が多く、甲状腺機能低下症も同一患者で起きやすいことが知られています。 甲状腺機能低下症では、甲状腺ホルモンの不足によって毛母細胞の活動が低下し、びまん性脱毛が起こります。 TSH上昇・FT4低下を確認するだけで鑑別できるため、採血1本で判断できます。oogaki.or+1
一方、男性の高尿酸血症患者ではAGA(男性型脱毛症)との合併も多いです。AGAは20代で約10%、30代で約20%、40代で約30%の男性に認められ、年齢とともに発症率が上がります。 DHT(ジヒドロテストステロン)が引き金となるため、部位が前頭部〜頭頂部に集中する点でびまん性の薬剤性脱毛と区別できます。
参考)https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/AGA_GL2017.pdf
鑑別のフローをまとめると、次の順序が効率的です。
これが基本のフローです。甲状腺機能異常による脱毛であれば、フェブリクを継続しながら甲状腺疾患の治療を行うことが患者にとって最善の選択肢になります。
参考:甲状腺機能と脱毛の関係(内分泌性脱毛の概要)
内分泌異常に伴う脱毛症とは? | AGAクリニック
脱毛に目を向けると同時に、見落とせない副作用があります。それが心血管死のリスクです。
CARES試験(心血管疾患を有する痛風患者を対象とした大規模RCT)では、フェブキソスタット群の心血管死発現割合が4.3%、アロプリノール群が3.2%(ハザード比1.34、p=0.03)と報告されました。 この結果を受け、2019年2月にFDAは添付文書の改訂を指示しています。mhlw+1
厳しいところですね。ただし日本人の組み入れがわずか3%未満だったCARES試験の結果を、そのまま日本人患者に外挿できるかどうかは慎重に評価する必要があります。 一方でFAST試験(欧州の6,128例のRCT)では、死亡アウトカムにおけるアロプリノールとの非劣性が確認されています。medicalonline+1
現在の日本の添付文書では「心血管疾患を有する患者への投与時は、増悪・新たな発現に注意すること」という注意喚起が記載されています。 脱毛を訴えた患者への対応と同時に、心血管リスク因子(既往歴・高血圧・脂質異常症)の有無も再確認する習慣をつけると、トータルなリスク管理につながります。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000542415.pdf
参考:フェブキソスタットの心血管リスクに関する厚労省の安全対策文書
フェブキソスタットの安全対策について(厚生労働省PDF)
患者から「フェブリクで髪が抜けた」と言われたとき、医療従事者が最も困るのは「やめるべきか、続けるべきか」の判断です。これが原則です:原因が特定できる前に安易な休薬・中止は推奨されない。
フェブリクを中止すると尿酸値が急上昇し、痛風発作が誘発されるリスクがあります。尿酸値が急に変動すると関節腔内の尿酸塩結晶が動き、発作のきっかけになることが知られています。 特に開始・中止直後の3か月間は痛風発作が起きやすい「不安定期」です。
患者説明のステップとして、次の流れが実践的です。
患者への言葉の選び方も大切です。「髪が抜けるのは薬のせいかもしれません」という曖昧な説明は不安を増幅させます。「いくつかの原因を調べて、最も適切な対処法を一緒に考えましょう」というアプローチが信頼につながります。
また、脱毛が薬剤性と確定した場合でも、多くのケースは休薬または代替薬への変更後3〜6か月で改善することが多いという情報は、患者の精神的不安を和らげるうえで非常に重要です。
代替薬としては同じ尿酸生成抑制薬のトピロキソスタット(商品名:トピロリック、ウリアデック)があります。フェブキソスタットとは化学構造が異なるため、フェブリクで皮膚症状が出た患者でも使用できる場合があります。ただし変更後も皮膚症状の経過を観察し、改善が見られない場合は尿酸排泄促進薬(ベンズブロマロンなど)への変更も視野に入ります。
参考:フェブリクの禁忌・注意事項・副作用への対応まとめ
フェブリクの注意事項・禁忌 | うちから内科クリニック