尿酸排泄促進薬の種類一覧と効果比較

本記事では尿酸排泄促進薬の種類や特徴、効果について詳しく解説しています。高尿酸血症治療において、これらの薬剤がどのように選択されるべきか、最新情報をもとに考察します。あなたの患者さんに最適な薬剤はどれでしょうか?

尿酸排泄促進薬の種類一覧と効果

尿酸排泄促進薬の基本情報
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作用機序

尿酸の腎臓からの排泄を促進し、血中尿酸値を低下させる

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主な種類

ベンズブロマロン(ユリノーム)、プロベネシド(ベネシッド)、ドチヌラド(ユリス)の3種類が主に使用

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特徴と注意点

尿酸産生抑制薬と比較して肝毒性などの副作用に注意が必要

尿酸排泄促進薬とは?その作用機序と特徴

尿酸排泄促進薬は高尿酸血症治療薬の一種で、腎臓での尿酸の再吸収を抑制し、尿中への尿酸排泄を促進することによって血中の尿酸値を低下させる薬剤です。

 

高尿酸血症は大きく「尿酸産生過剰型」と「尿酸排泄低下型」の二つのタイプに分類されます。日本人の高尿酸血症患者の約60%は尿酸排泄低下型に該当し、特にメタボリックシンドロームや腎臓病・心不全患者さんに多いとされています。

 

尿酸排泄促進薬は主に以下のような作用機序で効果を発揮します。

  • 腎臓の近位尿細管で作用する
  • 尿酸の再吸収を担う尿酸トランスポーター(特にURAT1)を阻害する
  • 尿中への尿酸排泄を増加させる
  • 血中尿酸値を低下させる

尿酸排泄促進薬の主な特徴は以下の通りです。

  • 排泄低下型の高尿酸血症患者に特に有効
  • 比較的速やかに尿酸値を低下させる効果がある
  • 腎機能が低下している患者では効果が減弱する可能性がある
  • 尿路結石形成のリスクを増加させる可能性がある

現在、日本で使用可能な尿酸排泄促進薬は、従来のベンズブロマロンやプロベネシドに加え、2020年に新たに発売された選択的尿酸再吸収阻害薬(SURI)であるドチヌラドがあります。

 

尿酸排泄促進薬の種類と特性比較

尿酸排泄促進薬には主に3種類があり、それぞれ特徴が異なります。ここでは各薬剤の特性を詳しく比較します。

 

1. ベンズブロマロン(商品名:ユリノーム)
ベンズブロマロンは1978年から使用されている歴史ある尿酸排泄促進薬です。URAT1を阻害することで尿酸の再吸収を抑制し、排泄を促進します。

 

  • 用量:25mg〜100mg/日、1日1〜2回服用
  • 特徴:強力な尿酸排泄促進作用を持ち、eGFR 30以上のCKD(慢性腎臓病)患者でも十分な効果を発揮する
  • 副作用:重篤な肝毒性が報告されており、導入後少なくとも半年間は肝機能の慎重なフォローが必要
  • 使用状況:肝毒性の懸念から世界的には使用が制限されている

2. プロベネシド(商品名:ベネシッド)
プロベネシドは最も古い高尿酸血症治療薬の一つで、元々ペニシリンの効果を高めるために使用されていた薬剤です。

 

  • 用量:250mg〜500mg/日、1日2回服用
  • 特徴:尿酸降下作用は他の薬剤と比較して十分ではない
  • 副作用:消化器症状、皮疹などが報告されている
  • 使用状況:ユリノームの登場後は処方例がほとんど見られなくなった

3. ドチヌラド(商品名:ユリス)
ドチヌラドは2020年に日本で発売された最新の選択的尿酸再吸収阻害薬(SURI)です。

 

  • 用量:2mg/日、1日1回服用
  • 特徴:腎臓の近位尿細管の管腔側の尿酸再吸収トランスポーターSLC22A12/URAT1を選択的かつ強力に阻害する
  • 副作用:既存薬と比較して重篤な副作用の報告は少ない
  • 使用状況:新薬として注目されており、処方が増加している

これらの薬剤の効果と特性を表にまとめると以下のようになります。

薬剤名 商品名 発売年 用量 効果の強さ 主な副作用 特記事項
ベンズブロマロン ユリノーム 1978年 25-100mg/日 強い 肝毒性 腎機能低下患者にも効果あり
プロベネシド ベネシッド 最古 250-500mg/日 弱い 消化器症状 現在はほとんど処方されない
ドチヌラド ユリス 2020年 2mg/日 強い 報告少ない 最新の選択的阻害薬

尿酸排泄促進薬の副作用と注意点

尿酸排泄促進薬を使用する際には、以下の副作用や注意点に留意する必要があります。

 

1. 肝機能障害のリスク
特にベンズブロマロン(ユリノーム)では、重篤な肝毒性が報告されています。このため、ベンズブロマロンの使用開始後は定期的な肝機能検査が必須です。添付文書上も導入後少なくとも半年間は肝機能の慎重なフォローが必要とされています。

 

肝機能障害の兆候としては以下のものがあります。

  • 肝機能検査値(AST、ALT、γ-GTPなど)の上昇
  • 倦怠感、食欲不振
  • 黄疸(皮膚や白目の黄染)
  • 嘔気・嘔吐

肝機能障害の既往がある患者や肝機能低下が認められる患者では使用を避けるべきでしょう。

 

2. 尿路結石のリスク増加
尿酸排泄促進薬は尿中への尿酸排泄を増加させるため、尿路結石のリスクを高める可能性があります。特に尿路結石の既往がある患者、脱水状態の患者、酸性尿の患者では注意が必要です。

 

尿路結石のリスクを軽減するためには以下の対策が重要です。

  • 十分な水分摂取(2L/日以上)の指導
  • 尿アルカリ化薬(クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム配合剤など)の併用検討
  • 尿pH測定による尿のモニタリング

3. 薬物相互作用
尿酸排泄促進薬は他の薬剤との相互作用に注意が必要です。特に以下の薬剤との併用には注意が必要です。

  • サリチル酸系薬剤(アスピリンなど):尿酸排泄促進薬の効果を減弱させる可能性
  • チアジド系利尿薬:高尿酸血症を悪化させる可能性
  • ループ利尿薬:高尿酸血症を悪化させる可能性
  • 他の尿酸降下薬:相加的な効果や副作用の増強に注意

4. 腎機能低下患者での使用
尿酸排泄促進薬は腎機能に依存した効果を示すため、重度の腎機能低下患者では効果が減弱する可能性があります。ただし、ベンズブロマロンは腎機能低下患者でも比較的効果が維持される特徴があります。

 

eGFR 30 mL/min/1.73 m²未満の重度腎機能低下患者では、尿酸産生抑制薬(フェブキソスタットなど)の使用が優先される場合が多いです。

 

5. 痛風発作の誘発リスク
尿酸降下療法開始時には、血中尿酸濃度の急激な変動により痛風発作が誘発されることがあります。これを予防するために、尿酸排泄促進薬の導入初期には低用量から開始し、徐々に増量することが推奨されます。また、NSAIDsコルヒチンなどの抗炎症薬の予防投与を検討することも重要です。

 

尿酸排泄促進薬の適切な選択基準

尿酸排泄促進薬を選択する際には、患者の病態や背景疾患を総合的に考慮することが重要です。以下に重要な選択基準を紹介します。

 

1. 高尿酸血症の病型による選択
高尿酸血症は主に「尿酸産生過剰型」「尿酸排泄低下型」「混合型」の3つに分類されます。

 

  • 尿酸排泄低下型:全高尿酸血症患者の約60%を占め、メタボリックシンドロームや腎臓病・心不全患者に多い
  • 尿酸産生過剰型プリン体代謝異常などが原因で、尿酸の産生が過剰となるタイプ
  • 混合型:両方の要素を持つタイプ

理論的には、尿酸排泄低下型や混合型の患者に尿酸排泄促進薬が適しています。しかし実臨床では、病型のみで薬剤を選択するのではなく、患者の背景疾患も考慮することが重要です。実際に、排泄低下型の患者でも尿酸産生抑制薬が有効であるという報告もあります。

 

2. 患者背景による選択

  • 肝機能障害:ベンズブロマロンは肝毒性のリスクがあるため、肝機能障害がある患者では避けるべき。ドチヌラドは比較的肝機能への影響が少ないと考えられている。
  • 腎機能障害
  • 軽度〜中等度腎機能障害:ベンズブロマロンが効果を維持できる
  • 重度腎機能障害(eGFR 30未満):尿酸産生抑制薬(フェブリクなど)が優先される
  • 尿路結石:尿路結石の既往がある患者では、尿中尿酸排泄増加による結石リスクに注意が必要。使用する場合は水分摂取と尿アルカリ化薬の併用を検討。
  • 高齢者:肝機能や腎機能が低下している場合が多く、副作用リスクの少ない薬剤を選択し、低用量から開始することが望ましい。

3. 薬物相互作用に基づく選択

  • サリチル酸系薬剤(低用量アスピリンなど)使用患者:尿酸排泄促進薬の効果が減弱する可能性があり、尿酸産生抑制薬が優先されることが多い。
  • 利尿薬使用患者:利尿薬による高尿酸血症では、尿酸排泄低下が関与しているため、理論的には尿酸排泄促進薬が有効だが、腎機能などを考慮して選択する。
  • NSAIDs定期使用患者:腎機能への影響や消化管障害のリスクを考慮して選択する。

4. 服薬コンプライアンスとコスト

  • 服薬回数
  • ドチヌラド:1日1回服用で済み、コンプライアンスが良好
  • ベンズブロマロン:1日2回服用が必要な場合あり
  • 薬価
  • ベンズブロマロン:比較的安価
  • ドチヌラド:新薬であり薬価が高い

患者の経済状況や服薬コンプライアンスを考慮して、適切な薬剤を選択することが重要です。

 

病型のみで使い分けするのではなく、患者さんの背景疾患なども加味して、慎重に薬剤を選ぶことが推奨されています。最終的には患者さん一人ひとりの状態を総合的に評価し、最適な薬剤を選択することが大切です。

 

尿酸排泄促進薬の最新研究と今後の展望

尿酸排泄促進薬の分野では、新たな薬剤の開発や既存薬の新たな知見など、研究が進んでいます。ここでは最新の研究動向と今後の展望について紹介します。

 

1. 選択的尿酸再吸収阻害薬(SURI)の進化
ドチヌラドは2020年に日本で発売された選択的尿酸再吸収阻害薬(SURI)です。従来の尿酸排泄促進薬と比較して、URAT1に対する選択性が高く、強力な作用を持つことが特徴です。

 

  • 既存の尿酸排泄促進薬に比して腎臓の近位尿細管の管腔側の尿酸再吸収トランスポーターSLC22A12/URAT1を選択的かつ強力に阻害する
  • 少量で効果的な尿酸値低下作用を発揮する
  • 肝毒性などの重篤な副作用リスクが低い可能性がある

現在、さらに選択性の高いSURIの開発が世界中で進められており、より効果的で副作用の少ない治療選択肢となることが期待されています。

 

2. 尿酸トランスポーター研究の進展
尿酸の排泄・再吸収に関わるトランスポーターの研究が近年急速に進んでいます。URAT1だけでなく、GLUT9(SLC2A9)、ABCG2、OAT1/3など、様々なトランスポーターが尿酸の体内動態に関与していることが明らかになってきました。

 

これらのトランスポーターをターゲットとした新しい治療薬の開発が期待されています。特に遺伝子多型による尿酸トランスポーターの機能変化と高尿酸血症との関連が注目されており、将来的には遺伝子型に基づいた個別化医療が可能になるかもしれません。

 

3. 併用療法の有効性検証
尿酸産生抑制薬と尿酸排泄促進薬の併用療法に関する研究も進んでいます。異なる作用機序を持つ薬剤を併用することで、より効果的に尿酸値を低下させることができるという報告があります。

 

最近では、フェブキソスタット(尿酸産生抑制薬)とドチヌラド(尿酸排泄促進薬)の併用が難治性高尿酸血症に効果的であるという報告も出てきていますが、安全性や長期予後に関するエビデンスはまだ限られており、今後さらなる検証が必要です。

 

4. 心血管疾患予防への期待
高尿酸血症は心血管疾患のリスク因子であることが知られていますが、尿酸降下療法によって心血管疾患のリスクが低減するかどうかは議論の余地があります。

 

最近の研究では、尿酸排泄促進薬が腎保護効果や血管内皮機能改善効果を持つ可能性が示唆されています。特にドチヌラドなどの新しいSURIが、尿酸値の低下だけでなく、心血管疾患の予防にも寄与する可能性が検討されています。

 

5. 長期安全性データの蓄積
新しい尿酸排泄促進薬、特にドチヌラドなどのSURIの長期安全性に関するデータはまだ限られています。今後、実臨床での使用経験と長期フォローアップデータの蓄積により、これらの薬剤の真の安全性プロファイルが明らかになることが期待されます。

 

特に肝機能障害や腎機能障害などの重篤な副作用のリスク評価や、様々な合併症を持つ患者での安全性評価が重要です。

 

6. 治療ガイドラインの更新
新しい薬剤の登場や研究の進展に伴い、痛風・高尿酸血症の治療ガイドラインも更新されることが予想されます。特に尿酸排泄促進薬の位置づけや使い分けに関する推奨事項が、新たなエビデンスに基づいて見直される可能性があります。

 

医療従事者は、最新のガイドラインや研究成果に常に注目し、エビデンスに基づいた最適な治療を提供することが求められます。

 

日本痛風・核酸代謝学会「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版」- 最新の治療推奨
以上、尿酸排泄促進薬の種類、特徴、副作用、選択基準、最新の研究動向について解説しました。高尿酸血症の治療においては、患者さんの病態や背景疾患を十分に理解し、適切な薬剤を選択することが重要です。また、定期的な検査によるモニタリングと、患者さんへの適切な指導も治療成功の鍵となります。