エンパグリフロジンの副作用と安全な服用のための注意点

2型糖尿病治療薬エンパグリフロジンの副作用について、頻度の高いものから重篤なものまで詳しく解説します。感染症、脱水、ケトアシドーシスなどのリスクを理解し、安全に服用するためのポイントとは?

エンパグリフロジンの副作用

エンパグリフロジンの主な副作用
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頻尿・多尿による脱水症状

SGLT2阻害薬の作用機序により、尿量が増加し脱水のリスクが高まります

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尿路・性器感染症

糖分の排泄により感染リスクが上昇、重篤な合併症につながる可能性があります

⚠️
ケトアシドーシス

稀ですが命に関わる重篤な副作用として注意が必要です

エンパグリフロジンによる感染症のリスクと対策

エンパグリフロジンは尿中にブドウ糖を排泄する作用により、尿路感染症や性器感染症のリスクが高まります。国内臨床試験では副作用発現率が単独療法で15.4%、併用療法で15.5%と報告されており、最も多く見られる副作用は尿路感染、性器感染、頻尿、口渇でした。
参考)くすりのしおり : 患者向け情報

 

具体的な感染症として以下が報告されています。
🔹 尿路感染症膀胱炎腎盂腎炎(0.1%未満)
参考)エンパグリフロジン(ジャディアンスⓇ)の副作用を教えてくださ…

 

🔹 性器感染症:外陰部腟カンジダ症、亀頭包皮炎、陰部そう痒症
参考)https://www.bij-kusuri.jp/products/files/jad_t10_if.pdf

 

🔹 重篤な感染症:敗血症(0.1%)、フルニエ壊疽(0.1%未満)
感染症の予防には、陰部を清潔に保つことが重要です。発熱、排尿時の痛み、陰部の腫れや痛みなどの症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診する必要があります。
参考)エンパグリフロジン(ジャディアンス) href="https://kobe-kishida-clinic.com/metabolism/metabolism-medicine/empagliflozin/" target="_blank">https://kobe-kishida-clinic.com/metabolism/metabolism-medicine/empagliflozin/amp;#8211; 代謝疾…

 

エンパグリフロジンの脱水症状と頻度

SGLT2阻害薬の作用機序により、エンパグリフロジンは尿量を増加させ、脱水のリスクを高めます。臨床試験では脱水の頻度は0.3%と報告されています。
脱水の主な症状には以下があります。
🔸 初期症状:口渇、多尿、頻尿、血圧低下
参考)https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=2491

 

🔸 進行時の症状:めまい、ふらつき、倦怠感
🔸 重篤な合併症:脳梗塞を含む血栓・塞栓症
特に高齢者、血糖コントロールが極めて不良の患者、利尿剤併用患者では脱水を起こしやすいため注意が必要です。夏場や運動時など汗をかきやすい状況では特に水分補給を心がけることが重要です。

エンパグリフロジンとケトアシドーシスの関連性

エンパグリフロジンの重篤な副作用として、血糖正常性ケトアシドーシス(euDKA)が報告されています。これは血糖値が正常であるにもかかわらず、ケトン体の蓄積により酸性に傾く状態で、頻度は不明ですが非常にまれな副作用です。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/yakushi/139/11/139_19-00120/_pdf

 

ケトアシドーシスの発症リスクは以下の状況で高まります。
🔺 過度の糖質制限:1食あたりごはん100g程度未満の極端な制限
参考)SGLT2阻害薬

 

🔺 感染症や発熱時:インスリン需要が増加する状況
参考)https://bij-kusuri.jp/products/files/jad_t_guide.pdf

 

🔺 手術前後:インスリンが中断される状況
参考)https://sagamihara.hosp.go.jp/sinryouka/pdf/kyuuyaku_sglt2.pdf

 

症状として吐き気、嘔吐、腹痛、意識障害などが現れ、早期発見・早期治療が重要です。糖質制限を行う患者では特に注意深い観察が必要とされています。

エンパグリフロジンの低血糖リスクと頻度

エンパグリフロジン単剤使用時の低血糖リスクは比較的低いとされていますが、他の糖尿病薬との併用時には注意が必要です。臨床試験では低血糖の頻度は1.8%と報告されています。
低血糖のリスクが高まる状況。
併用薬の影響:インスリンやSU剤との併用
食事の変化:不規則な食事や食事量の減少
運動量の増加:通常以上の身体活動
低血糖症状(ふらつき、冷や汗、手指の震えなど)が現れた場合は、速やかにブドウ糖や砂糖を含む飲料水を摂取することが重要です。併用薬がある場合は、医師と相談の上で用量調整を検討する必要があります。
参考)糖尿病治療薬「ジャディアンス錠10mg・25mg(エンパグリ…

 

エンパグリフロジンによるフルニエ壊疽の実態と対策

フルニエ壊疽は会陰部の壊死性筋膜炎であり、エンパグリフロジンを含むSGLT2阻害薬服用中の重篤な副作用として注目されています。頻度は0.1%未満と極めて稀ですが、生命に関わる重篤な感染症です。
参考)SGLT2阻害薬内服中にフルニエ壊疽への進行が危惧された外陰…

 

2018年8月、米食品医薬品局(FDA)がSGLT2阻害薬服用患者のフルニエ壊疽リスク増加について安全性情報を発出しました。日本でも同様の症例が報告されており、エンパグリフロジンで1例の報告があります。
参考)SGLT2阻害薬(ダパグリフロジン)を服用中にフルニエ壊疽を…

 

フルニエ壊疽の症状と対策。
🚨 初期症状:会陰部の発赤、腫脹、疼痛
🚨 進行時の症状:皮膚の壊死、高熱、全身状態の悪化
🚨 対策:陰部の清潔保持、異常時の迅速な受診
54歳男性の症例では、エンパグリフロジン内服中に陰囊部の疼痛・腫脹から重度軟部組織感染症に進行した事例が報告されており、速やかなドレナージと抗菌薬治療により救命されました。